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不気味な快感
皆さんはこんな経験をした事は無いだろうか。海とか、空一面の星とかを見ている時、振り返ったらそこに普段見る景色が広がっている実感がなくなるような体験を。そしていざ振り返ってみて、さっきまで見ていた景色が広がっている安心感を。
私はこう言う感覚に美術館の絵を見ている時や、小説を読んでいる時にもなる。見ているものの中に吸い込まれて、自分がここに存在している感じがなくなる。
そして私は最近、この感覚を盆栽の手入れをしている時にも感じる。
盆栽を下から覗いた時、手に浮かぶ血管のような枝の動きに、日の光を受けて光る新緑の空に、時の波を物語る幹に。自分が存在する実感を、無くしてみてはいかがだろうか。