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予告編

ティーザー効果

作者: 若松ユウ

A「百年史編纂課のアラフォー課長」

――かつて、理系の大学院で博士号をとった秀才は、

「椎茸の石突は雨傘の柄に該当するから、逆だと思わないか?」

「掃除の邪魔なので、足上げてください」

――いまや、窓際部署の名ばかり課長だった。

「知は力なり、というベーコン格言は、コンピュータとインターネットの普及と発展により、薄っぺらな過去の遺物となりつつある」

「スマホと関数電卓を間違えて持ってくる人間が、言えたことかしら?」

――マイペースで閑職を苦にしないのは、

「数字の動きをつぶさに観察していれば、株で儲けた利子で生活できる」

「結婚できない理由が分かったわ」

――もとより、あくせく稼ぐ必要が無いから。

「料理は科学だよ。良質な材料を、適切な手順で加工できれば、美食にありつくことができる」

「自炊用にフラスコを買うのは、どうかしらね」

――常識外れの課長と平凡な清掃員が織りなす、抱腹絶倒のコメディー、

「付き合う彼女にゴールドカードを預けて限度額と番号を教えると、決まって、ぎりぎりまで引き出して居なくなるんだ」

「性格と女運の悪さは、青髭以上ね」

――近日公開!

  *

B「“その子”の秘密」

――そう遠くない未来。胎児形成段階で、生殖器官の発生を抑圧した無性別人間が、無許可で製造されていた。

「ロット番号イーディー二〇一九、起動せよ!」

「イーディー二〇一九、起動しました」

――徹底した職業訓練を施したのち、それらは、画期的な人工知能を搭載したロボットと偽って販売されていた。

「これ一台で、家事や育児のストレスからサヨナラできます!」

「いまなら、なんと十五パーセントオフでご提供いたします!」

――そのうち一台が、母親のいない少年のもとへ、誕生日プレゼントとしてやってきた。

「じゃあ、君の名前は『その子』にしよう!」

「私が『その子』?」

――物同然に扱う大人たちと違い、一人の人格者として敬う少年に、やがて「その子」は、自我に目覚める。

「ケッ。とんだ不良品を買わされたものだな」

「パパ、やめて! 『その子』に乱暴しないで!」

――はたして、少年と「その子」の運命やいかに!

  *

C「学校出てから十余年」

――①ミツバ商事に勤める、野口と樋口。

野口「大学時代のダチで、伊藤って奴がいるんだ。ちょいと誘ってみる」

樋口「じゃあ私は、岩倉ちゃんに声を掛けてみるわ。高校が同じなの」

――②ミツヤ企画に勤める、伊藤と夏目。

伊藤「そこは一つ、頼むよ。俺たち、同期だろう?」

夏目「しつこいな。分かったよ」

――③ミツワ開発に勤める、岩倉と板垣。

板垣「誰からの電話だったんですか、先輩?」

岩倉「樋口ちゃんよ。カラオケに誘われたんだけど、あんたも来る?」

――三社六人による、笑いとペーソスに満ちた小市民劇。ついにドラマ化決定!

  *

D「ハーバリウムのような世界で」

――大陸島から離れ、外来種の侵攻を免れてきた小さな海洋島があった。

「オハヨ! アサヨ! オキヨ!」

「おはよう、ハヤオキドリ。今朝も良い天気だね」

――そこへ、一人の青年が漂着した。彼の名は、サヴァン。

「チチチチチ、ピユピユピー」

「適応放散で、他に類を見ない進化を遂げてきたらしいな。これは、興味深い」

――船医であった彼の目には、周囲は新鮮な研究対象に映った。

「ナ~、ゴ~」

「コラ、イタズラヤマネコ。治してやるから、ジッとしろ」

――しかし、島には招かれざる客の影が忍び寄っていた。

「ジーコー、ジーコッコッコ」

「おかしい。昨日までは、こんな足跡、存在しなかった」

――青年は、ガラスの生態系を守り抜けるのか。乞うご期待!

  *

E「次元が違うという話」

――二次元と三次元とのあいだには、常人には理解できない壁があるように、三次元とそれ以上の高次元とのあいだにも、到底わかり得ない隔たりがある。

「久々に目を覚ましたが、ここは、どこだい?」

「さぁな。でも、われわれが眠っているあいだに、タイヨーケーにチキューという惑星が出来たようだ」

「チキュー? どんな星なんだ?」

「三次元世界で、一つの脳しか持たない生き物が暮らす星らしい」

「ほぉ、面白そうな星じゃないか。フムフム……」

「……何をする気だ?」

――意味深な沈黙がさす答えとは? 続きは、映画館で!

  *

F「血液型社会」

――エー、ビー、オー、エービー。自分の血液型によって、今朝の占いで一喜一憂する人は少なくないだろう。ところが、

「ウチは、オー型しか採用してないんだ。エービー型は、他を当たってくれ」

「コチラの物件は、エー型の方しかご入居できないんです。少し高くなりますけど、ビー型さんでしたら、コチラのお部屋に……」

――もしも、血液型で区別されるようになったら、どうだろうか?

「エービー型だって言ってるけど、ホントはビー型なんじゃないのか?」

「これだから、オー型は仕事が大雑把で困るよ。エー型に任せるんだった」

――こうなるかもしれない。しかし、いがみ合う複対立構造は、とある少女の存在によって、大きく変わっていく。

「先生。娘の血液型は、何型なんですか?」

「非常に珍しいのですが、彼女は、エー、ビー、オー、エービー、いずれにも該当しません」

――型にはまらない型やぶりの少女が、不毛な区分を型なしにしていく痛快劇。衝撃の結末を、お見逃しなく!

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