05.官民共同
限られた資源の奪い合いは時に武力衝突にまで発展する。それは人類の生活スタイルが、一つの都市の中で完結してしまう程、追いつめられた――あるいは発展した――状況においても起こり得る事態だ。
その為、都市防衛軍は存在する。つまり、防衛軍と名の付いた奪う為の力だ。
塔京南門にてRT-43、すなわち43式多脚汎用戦闘車が出撃の準備を行っていた。それはいつも見慣れた光景、だが今回はサルベージャーの報告を受けて行う火力支援活動では無く、彼らと供に行う防衛出撃だ。
六脚の装甲脚部に支えられた二腕と一尾の車体、右腕の二十ミリ電磁加速砲と、左腕の超高熱フレキシブルソード、それに両肩にはレーザーCIWS、尾部は柔軟なパワーアームを装備する。
それを支援し、支援されるのは民間人にして武力集団、人工心肺と強化外骨格により、猛毒の大地から隠された遺産を回収する獰猛な発掘隊だ。すなわち『サルベージャー』
そのフルフェイスの中身は果たして男か女か、大剣、斧、槍、銃、武器や信条に統一性など無い個人事業主達の共通の思想は″奪い、持ち帰ること″彼らのHUDに表示されるそれが、″FRIEND”でないならば、それ等全ては確保すべき資源だ。
一台と四名、いささか心もとないそれは、しかし、都市の中枢AIが導き出した最適人数だ。防衛であり、戦力評価試験、官民共同事業だがハイリスクハイリターン、召喚主達よ感謝する。そして、この大地は我らが平定する。
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メロウ共和国、特殊魔法戦士団、迷宮攻略を主眼に置き、有用な迷宮産装備を優先して与えられる名誉と羨望の部隊、その中から選ばれた四百名が迷宮の城門を見下ろす丘に布陣していた。
錆びない軽量金属の鎧に、魔伝率の高い長剣、透明の円形盾を展開する小手を標準装備する。
遠方を監視する道具″遠見鏡″を覗き込んだ兵士が報告を行う。
「迷宮開門、迷宮開門、内部より少数の未確認生物出現!!小型四、大型一!」
それを聴いた他の兵士が、自分と敵対者の戦力比を占う道具、失った片目の代りに移植した″予見の眼球″でそれを見る。
「戦力評価、小型は赤!、大型は……黒!!、かなりの強敵と思われます!!」
それを聴いた総隊長が判断を下す。
「敵は強大な魔獣、もしくはゴーレムと思われる!各員突出せず、遠距離から攻撃せよ、構成連撃、第一番、魔法飽和投射にて殲滅する!」
部隊は広がり、半円上の包囲網を作る。
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門の外の世界、それは見慣れた黒死の大地では無く、疎らだが生きた植物や動物が存在する大地、そしてHUDに移る大量の″RESOURCE″と″――FOR ENEMY″の文字、それは闘争の始まりを意味する。
大剣を持ったサルベージャー、が通信装置に呼びかける。
「此方″犬崎″早速だが火力支援を要請する。あぁ、いつもの様に首から下はなるべく残すようにしてくれ、回収の手間が増えないようにな」
<RT-43、六十五号車、ヨウセイ、ジュダク、アンシン、シテクダサイ、狙撃の腕ハ、セイカイイチ、です>
「此方″猫街″だ。私も行かせてもらうぞ、早い者勝ちだからな」
柄の両側に刃の付いた珍しいハルバードを獲物とするサルベージャー、その巨大な武器に似合わぬ踊るような戦い方が特徴だ。
「俺の射線に入るなよ、弾が無駄になるからな」
サルベージャーは銃を好まない。貴重な資源を回収不能な彼方まで飛ばしてしまうからだ。だが、もともと政府軍に所属していた彼は、あまり気にしていないようだ。
「名前?あぁ″鷹羽″だ」
「はーい。僕の番ですね、名前は″熊丘″、得物は槍、正確な刺突がアピールポイントです。ってね」
槍は一般的な獲物だ。だが倒した敵の首を槍の先端に刺し、意気揚々、高々と掲げて凱旋する彼の行動が何かの儀式なのか否か、だれも知らない。
多脚汎用戦闘車の右腕、正確に目標を貫く二十ミリ電磁加速砲が起動する。分間二十発の速度で、地獄への片道切符を発行する。
最初の敵が電磁加速砲の弾丸に倒れるころ、敵団右翼では、ハルバードが舞い、左翼では櫛団子が生産される。中央部はそれぞれ二つの銃口から放たれる弾丸が飛び交っている。
「おいおい、仲良く分け合おうぜ、こんなに居るんだからよ」
そして、至る所で水平ギロチンが執行された。