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釣りロマン求めました!  作者: うにまぐろ
春のトラウト編
9/10

朝マズメ③

「家族と釣りしたこと無いのか?」

「うん……」


だって引きこもってたんだもん。


「わかった、それじゃ良く見てくれ。まず、竿を持っている手の人差し指で糸を摘まみ、ベイルを外す。このとき糸は竿先から20~30cm出しておく」


同じ動作をする。案外難しい。


「竿のしなり、遠心力を利用し、タイミング良く人差し指を外して投げる」


ひゅんとキョウシロウ君の竿から風の切る音が鳴る。次にガチャンとベイルと呼ばれる部分素早く戻す。


「で、着水したらベイルを戻してすぐ巻く。すぐに巻かないと石や水草に根掛かりするから気をつけて」

「わかった……」

「あと、基本は上流から下流に巻くことだね」


まさか釣りをすることになるなんて……しかも案外手順覚えるの難しい……

にしてもドキドキする。だってルアーとかなくしたら怒られそう……まぁでも投げてみるか……もうどうにでもなれ!

竿先から糸を少し垂らし、人差し指で摘まんで、ベイルを外して……投げる!

けっこう飛んだなぁ。

ルアーは川の深みより少し奥へ着水。


「へぇー良いところに飛んだね」

「そ、そう?」キョウシロウ君に褒められた。

「おっと、早く巻かないと根掛かりするぞ」

「そうだった!」

「巻くときのコツは、ルアーの重みを感じることと底にルアーを着かさないこと」


このくらいの速さかな?ルアーの振動が竿先から手元まで伝わってくる。

ちょっと重くなった。魚影が掛かってるのが見えたが、引き上げると水草だった……


「釣りは上手くは行かないよ。とにかく手数を増やすことだ」

「うん……」


あれから10回投げたがアタリは無し。


「場所変えるか……」

「うん……」


釣りって案外地味でつまらない。キョウシロウ君の趣味を理解できなくて少し悲しい……


「ここなら大丈夫だろ」


旧国道の橋の下。川の中央には柱が建ててあり、それにより流れが緩やかになっている。


「柱の根元当たりに目掛けて投げてみて」


投げる。そして5回目……


「……っ!!!」

「来た!バレるから竿寝かせて!」

「あわわわわ!」


初めての感触。竿や糸越しに感じる生命の反応。ていうか案外魚って引き強いんだ……それにしてもスリルがある。

抵抗する魚、水飛沫の中からバシャンバシャンと跳ねる。1回……2回……3回と……


「跳ねた、ニジマスだ!タモですくうか、35くらいあるぞ!」


近くまで寄せて、キョウシロウ君が網でキャッチ。


「初めてにしてはでかいなぁこれ37cmかぁ。ま、釣りは運がものを言うけどな」と動きに無駄なく丁寧に針を外して魚をリリースする。

「ハァードキドキしたー」

「それだよ武内さん。このスリル、俺が釣りに夢中になる理由。いつバレてもおかしくないし、天気、月齢なんかで釣れる日や時間を読む。そして仕掛けやルアー選び、頑張って粘ってようやく魚と出会いが果たせる」

「へぇー……」なんかカッコいい……

「川や海の広さ、そして魚の数だけ釣りは楽しめる!って……ワリィな人の趣味に付き合わせて……」

「そ、そんなこと無いよ!楽しかった」


そうだ!


「あの……緒方君?」

「なんだ?」

「れれれ連絡先教えてください!」

「……うん……」


通信アプリのIDの書いたメモが渡された。


「じゃ自分もう行くから。月曜日学校でねキョウシロウ君!」あっ!下の名前で読んじゃった。

「お、おう……」


恥ずかしさのあまり、自分は顔を合わせずに消え失せる……


× × ×


キョウシロウ君か……女子に初めて呼ばれた……

今晩オカズにしよ……


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