朝マズメ②
× × ×
朝焼けが輝き川の流れ、水飛沫がより一層美しく見える。雪解け水は冷たく身を引き締め、新鮮な気持ちに……防水パンツからもそれは伝わってくる。
にしてもあの子可愛かったな……武内葉月さんだっけ……
そうこう考えながら、ルアーをキャストする。
「しまった!」
コントロールを乱し、木の枝のさらに奥まで飛んで行く。
「きゃああ!」と女性の悲鳴。
「すみません!大丈夫ですか!?」
「ななな何か服に引っ掛かってます!」
木々を掻き分け声のもとへ、すると……
「武内さん……?」
「お……緒方君……」
× × ×
「武内さん……?」
「お……緒方君……」
偶然(必然)の出会い。
「おはよう……」
「ああ……おはよう……休日、朝早く散歩か?」とキョウシロウ君が気まずそうに言う。
「うん……」
「……」
「……」
ヤバい……気まずい……
そうだ!
「じ……自分もつつ釣りしてみたいなぁ~」
「えっ……」
勇気を振り絞る。
……不自然だよね。ていうかそんなに驚かないでよ。
「ちょっと待ってて」とキョウシロウ君は岸から上がり竿ケースを背負い込む。
「あ……あの……」マジでやるの?
「予備に短いルアーロッドがあるんだ。初心者は餌でやった方が良いけど、これしかない我慢してくれ」
「は、はい……」マジでやるんだ。
竿に糸を通し、ルアーを結ぶ。手際のよさから、手慣れているのがよくわかる。
「一応まだ虫が少ない季節だから、ルアーはこれで……」スプーン状の形に金と赤が五対五の割合で配色され、黒いバーマークが散りばめられている。
「これで釣れるの?」
「一応良く釣れる。俺基準だが」
俺基準って……
「なんか、信用してねー感じだな」
「そ、そんなこと無いよ!」
「いいか?釣りってのは基本やマニュアルみたいなのはある。だけどそれだけじゃ釣れないんだ。色々な仕掛け、ルアー、毛針なんかを魚の気持ちになって試行錯誤してチョイスしてくんだ。」
「へぇー」
キョウシロウ君こんな嬉しそうな顔するんだ。それだけ釣りが好きなのかな?クラスで見たときはぶっきらぼうなイメージだったけど、こういう一面が見れてちょっと嬉しい。
そして竿を渡され……
「緒方君……」
「なんだ?」
「これってどう使うの?」
使い方が分からない……