入学式①
4月1日今日は入学式。
玄関先のクラス表、自分の名前を探す。
「……あれ?無い……」
「……あれ?無い……」
自分と同じ境遇の人とセリフがハモったようだ。勇気を出して声をかけてみよう。
「……ははは……えーーーと、お名前は?」
「あっ……鎌田ちえみ。君は?」
「武内葉月です」
鎌田さんか……スレンダーで綺麗な髪……
ここはもうひと踏ん張り!
「探すの、きょ……協力しませんか?」
「いいねそれ」
二人でお互いの名前を探り合う。
1年2組……
……4伊藤美紀 5枝野雪 6鎌田ちえみ 7武内葉月
「あった!」
「あった!」
「……ははははは……」
「同じクラスなんだし、そんな畏まらないで私のことはちえみでいいから」
「じゃあ!自分のことも葉月で!」
「うん、葉月」
やった!初めての友達だ!
胸を躍らせながら校内に足を入れたその時!
「なにしてるの?足止めてないで教室行くわよ」
「……えっああ、待って、ちえみ!」
間違いない。先日釣りをしていた彼だ。ブレザーを纏い、靴箱を探しながら新しい上履きを手に取っている。こここ、これは、もしかして!
「おおーい葉月!……もしかして!」
「えっなに!?」
「そこにいる彼に一目惚れしたでしょ!」
ちえみが指差す先は……釣りをしてた彼だった。
「ちちちt違うから!」
「顔真っ赤、分かりやすすぎ。ここは葉月の学校生活をバラ色にするために一肌脱ぎますか!」
「もう!」
でもいいな、こういう会話。
教室へ歩を進める。
この時自分たちは、この先に地獄が存在すると予期してなかった。