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釣りロマン求めました!  作者: うにまぐろ
春のトラウト編
1/10

出会いと一目惚れ

 春暖の候……と言いたいところだけど、肌に突き刺さる北海道の春風はそんなものを許さない。10日前まで東京に居た自分は、ここの風景や雰囲気が外国のように見える。


「葉月!ご飯できたー!」と下からおばあちゃんの目覚ましコール。

「わかったー!今いく!」と自分も返事を返す。


 布団から出てまず思ったのが、道民は暖房着けすぎ!

 築60年古家の階段、歩くたび軋む。


「おはよ、おばあちゃん」

「おはよ、さ、いっぺなり食え」

「うん」


 茶の間のちゃぶ台に置かれた朝食はご飯、大根の菜の味噌汁、秋刀魚のかば焼き、ホウレンソウのおひたし。ヘルシー過ぎる!健康なのもいいけど、明日から女子高生の自分に対して、もう少しこってりしたものが欲しい。


「もう1週間で入学式だけど大丈夫か?」

「大丈夫って何が?」

「いろいろさ。勉強もそうだし、友達だって……」

「うっ……どうにかなるでしょ」


 東京では成績が悪すぎて通える公立が無いのと、コミュ障?の自分には友達が一人もいない。生涯ニートに成ろうかと考えたが、生真面目な両親はそれを許さなかった。「葉月、見知らぬ地で人生やり直せ」とのことで親元を離れ、おばあちゃん家で高校生活を送ることに……。


「ずずずずず……おっ!今日の出汁昆布だね」

「一日中家にいないで、とりあえず散歩ぐらいすれ。あんたの頭の上にいる猿も退屈だろ?」

「そーかなぁ、こいつ(名前決めてない)トイレの時しか動かないんだよねぇ」


 スローロリスという猿で毒を持ってるらしく、お兄ちゃんが「護身用だ」とのことで買ってきた。正直そんなのが頭上にいるのは迷惑。


「ほれ、そんな君にはホウレンソウを食べさせてあげる」と摘んだ箸を上へ。

 もっそりと手で掴みねっとり食す。「……げふっごほ……!」ホウレンソウを吐き出し、何故かガッツポーズを決めている。

「あはははは!可愛い、可愛い!」

「あんたいつかバチ当たるよ……」


 その後、おばあちゃんに家から叩き出されて散歩。

 雪かきなどで生じた雪山がいまだに残る。桜は無縁だね。

 にしても感覚が道民に近付いてきたなぁ。だって寝れない夜とか無意識的にヴ○ウギ専務見てるんだもん。

 そうこう考えながら河原の歩道を進むと…… 


「うー寒い。この時期に釣りなんて信じられないわ」気になって釣り人に目を追っている自分がいる。かなり若い男性だ。


 竿を何度か繰り返し投げている、岸、深み、流れに合わせたり合わせなかったり試しながら。釣れないかと思ったその瞬間!折れそうなくらいに竿が弧を描き……振動する!


「よしゃ!来た来た来た来た!」男性は竿を斜めに倒し、糸を素早く巻き取る。

「おおぉ!」自分も声を上げる。


 夢中で見てたら、あることに気が付いた。頭上にいた猿が居なくなっている。どこ行った?


「良いサイズのニジマスだ。塩焼きにもし……っておおおい!何だこの猿!」

「え!」


 猿は釣り糸にぶら下がった魚にしがみついていた!


「すすすみません!これ、自分のペットなんです!」猿を力づくで離し頭に乗せる。生臭い。

「……この猿毒持ちなんだから、しっかり管理しないと……」

「すみません!」と頭を下げる。知ってたんだスローロリスを……

「いや、今後気を付ければいいさ」

「はい……」


 顔を上げたその時、彼と目が合い、初めて顔を見て自分は確信した。

 何故かこの人に、一目惚れしたんだと……


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