異世界に召喚されたのでチートで悪の大魔王を目指した!(※なお、肩書は必ずしも実態を保障するものではありません)
今日もまた、重い足取りで終電間際の駅の階段を上る。
一体今日で何連勤しただろうか……。
入社三年目にして地獄を見ている俺だが、最初からこうだったわけじゃない。
人より特別劣るところもないが、特別優れるところがあるわけでもない俺。だからこそ人より頑張ることしかないと思い、真面目に頑張ってそこそこの大学から無事にそこそこの企業へと就職。当時は、これで人生安泰だと信じていたものだ。
ところが、業績が好調なのに合わせて仕事が増える中、まず、先輩の女性社員が寿退社。これからは女の時代だとかよく言ってて、会社からも将来の幹部候補と目されてたらしいのに、旦那の稼ぎが良いからとあっさり専業主婦の道に進むことにしたらしい。その後、急なことに上層部やらその先輩と友人たちの間で色々ともめたらしいが、俺としては、仕事が増える中で仕事のかなり出来た優秀な人材が一人居なくなるという結果が残っただけ。
しかも、新卒採用でうちの部長が欲しいと言った学生を蹴った人事部がねじ込んできた学生が、内定後に他の超一流企業に行くからって内定断ったそうな。うちの部長や課長は、だからあいつはハイスペックすぎてウチに来るわけないって言ったんだ! とか怒り狂ってたらしいけど、他にも内定蹴られたのがいくつがあったとかで、人事異動なんかも含めて増員されるはずが、新人を一人だけ配属での寿退社での欠員補充しかなされず。
で、中途採用でもなんでもして至急増員するからとか人事に言われてはや三か月ほど。朝から晩まで働き詰めな生活も、俺には真面目なことしかアピールポイントがないから必死にこなしてきた。
それがいけなかったのだろう。
階段の最上段に足を掛けたところで遠のく意識。
ヤバいと思って必死に手を伸ばすが、何も掴むことなく、無情にも体が落下していく。
――ああ、ここで終わるのか……。
「てなことがあってここに至るんですけど……あの、お嬢さん、ここはどこです?」
「えっとその……私、悪魔語は習ったことがなくて、何をおっしゃっていたのかさっぱりで……」
目が覚めると、怪しげな魔法陣っぽい模様の描かれた森の中のちょっとした空間。
そして、こちらを呆然と見る十代半ばくらいの金髪の少女が一人。土に汚れていても、中々の美少女っぷりだ。
見覚えのない景色に、病院でも駅でもなく訳の分からない場所であったこともあって、とにかく近くに居た少女を頼った俺。日本語は通じてるみたいなのに、話が通じてないみたいなのはどうしてなのか。
「あの、どこの国の方か存じませんが、初対面で悪魔呼ばわりはないかなぁって思うんですが?」
「え!? でも、悪魔さんですよね? だってこの召喚術、『無限の魔力を持つ、考え得る限りの悪行をなして世界を滅ぼしかけた人の形をした悪魔』を呼び出す禁術だって書いてますし」
「召喚術? 魔力? あなた、頭は大丈夫です? もしかして、自分は魔法使いだとか訳の分からない妄想にはまってるんです? 中二病なんです?」
「むっ、わたしとて王家の端くれ! 嗜みとして、魔法くらいは使えます! ――入門レベルですけど……」
最後の方が小さくてよく聞こえなかったが、立ち上がって俺と反対を向いたお嬢さんは、右手を前に突き出す。
そのままぶつぶつ唱える始めると――
「うわっ!?」
「ふふーん!」
手のひらサイズの小さな火の玉がお嬢さんの右手から飛び出し、その先にあった木の皮に焦げ跡を残して消える。
「どうですどうです!? さあ、前言を撤回して――」
「えっと、確かこうして、詠唱は――って、ほわっ!?」
「きゃぁ!?」
お嬢さんのマネをして同じ詠唱をしてみれば、立ち上る巨大な火柱。そして、見上げるような巨木を何本も消し炭にしてあっという間に消失。
後にはただ、焦げたようなにおいだけが残る。
「マジかよ……」
「え? あれ、私と同じ詠唱で、どう見てもあり得ない威力で……いやちょっと、あんなの宮廷魔術師でも魔力を絞り尽くして死ぬレベルですよ!? 大丈夫なんですか?」
「いや、別におかしいとかは何も」
「や、やっぱり無限の魔力を持つ悪魔! この本は本物だった!」
急に錯乱しだしたお嬢さんを見ながら、思わぬ事態に笑いが漏れる。
そうか。何の取り柄もなかったと思ってたのに、常人じゃありえない魔力か。やっと、人に誇れる強みを手に入れたのかぁ……。
「って、いい加減に落ち着け!」
「あいたっ!?」
チョップ一撃で落ち着かせ、何とか会話が出来る状態にして尋問開始だ。
「で、よりにもよって、なんで悪魔召喚なんかに手を出したんだ?」
「その……実は――」
言い澱んだり途中で泣き出したりしながら語られた内容をまとめると、彼女は亡国の王女。王族最後の生き残りらしい。
戦争に負け、家族親族は戦死か処刑。友好国だった隣国に逃げ込めば受け入れを拒否され、再起のためにと持ち出した宝物庫の中身も、護衛や侍女たちが逃げ去っていくときに少しずつ持ち逃げされ、たった一人に。
「それで、最後に唯一残った小汚い禁術書に手を出したのか」
「はい……お願いします悪魔様! こんな理不尽だらけのどうしようもない世界を滅ぼしてください! どうか、どうか……!」
頭を下げて泣き出した元お姫様を見ながら思う。
彼女がどう思おうと、それだけで世界が滅ぼすに足るのかは判断できるわけがない。
ただ、俺は今まで、生きるために真面目に真面目に生きてきた。
他にどうしようもなかったから、自分を押さえて頑張ってきた。
でも、自分を押さえなくても良い強大な力を手に入れたのだ。
「お嬢さん、名前は?」
「あ、その、シャーリーです、悪魔様」
「では、シャーリー。違う、間違っているぞ」
「え? え?」
「俺は悪魔ではない。すべてを壊し、そのすべてを手に入れる男! 悪の大魔王様だ!」
「悪の、大魔王……」
そうだ。
もう、周りに振り回されて自分を押さえるのはもうたくさんだ!
異世界だろうと何だろうと、思うままに生きてやる!
「だが、俺には自分自身しかないからな。世界を滅ぼしたいと言うなら、ついて来るがいい。部下一号として、特等席で世界の終わりを見せてやろう」
「は、はい!」
って言っても、まずは先立つ物が必要な訳である。
どうするかって? 決まってる。奪うべし!
「と思って近くの領主の館を襲撃したわけだけど、何にもねぇな……」
正直、俺一人でどこまで出来るか半信半疑だったのだが、本当に簡単に攻め落とせてしまった。
殺しが楽しいとかはなかったけど、この悪いことしてるって背徳感溢れる快感にちょっと気持ちよくはなったりした。
まあ、それ以上もそれ以下もなかったことが気にならなくもないけど、今はそれどころではない。
「久しぶりにまともなものは食べられましたけど、どうしますか、大魔王様? 城下も含めて略奪しつくしますか?」
「略奪……まあ、やるんだけど……」
ここに来るまでに農村部や城下町も見て来たけど、誰もが発育悪くてやせ細ってた。搾り尽くしたところで、どれだけ獲れるものか。
……搾り尽くす? いや、そんなのは賢いやり方ではないじゃないか。
「ふっふっふ……略奪はするが、搾り尽くしはしない。そんな、二流のやり方はな」
「……は?」
「一度に奪い尽くせばそこまでだ。程よく富ませ、次も略奪できるように最低限を残して残りを奪い尽くす! 何度でも奪う! そう、持続可能な略奪のために!」
「おぉ……難しい話はよく分かりませんが、何だかすごそうです、大魔王様!」
そうと決まれば、早速実行である。
城を乗っ取り、この大魔王様が新たな支配者であると布告を出した。
前の領主の家臣たちも、人々を管理させるために抱え込んだ。家族を押さえ、まじめにやってる限りは最低限の衣食住を保障して、な。逆らえば、結末は分かりきったことだが。
で、そこから二年。すぐに水があふれるとか言い訳しだすから異常な出力らしい俺の魔法で川の形ごと変えてしまい、賊どもが俺の財産である村々へとちょくちょく出没するので警戒に特化した網を張って出没を知り俺の魔法で片っ端から水際で焼き尽くし、それなりに安定して略奪できるようになってきた。
まあ、初期には俺の略奪品を横領しようなんて不届きな奴もいたから家族ごと吊るしたけど、今となっては従順になったものである。
「で、やっと落ち着いて来たって頃に、『大魔王討伐軍』ね」
「はい。実態は、近隣諸侯が集まった程度らしいって言ってましたけど」
そう言うのは、俺の側近枠に収まったシャーリー元王女である。
読み書きは出来ても末っ子の彼女は王位継承を予定されておらず、習い事は文化方面に偏っていて他は分からないとは言われたけど、相対的に一番信頼できる彼女以外をこの位置に置く気はなかった。
「ふふふ、来たか。勝つだけなら俺一人でも良いかもしれないが、流石に手が欲しいな。領内から兵を集めるぞ!」
大魔王が自らの私利私欲のために、善良な人々を死地に追いやる。負ければ俺自身とシャーリーくらいは逃げられるだろうし、他人の命をチップにやるだけやってみるか。
くぅっ! 最っ高に悪党してるな!
とある日の自称大魔王支配下の農村。
そこでは、二人の農民たちが昼休憩を取っていた。
「いんやぁしかし、ほんに大魔王様々じゃのう」
「ほんまじゃ。川は溢れんくなったし、賊も全部襲ってくる前に倒して下さる。前の領主さまは、誰かが襲われるまで動いて下さらんかったのとは大違いじゃ。明日のおまんまの心配をせんでもええのは、ほんまにありがたいことじゃ」
「城に勤めとるうちの子が言うとったが、大魔王様は、まじめに働いてる限りは嫁や子供の生活の全部を面倒見てくれ取るんじゃと。お蔭で賄賂を取らんでも生活できるようになった言うとったわ」
「しかも、不正には厳罰であたるいうて、役人も悪党も静かになりおったからのう。万々歳じゃ!」
二人が大声で笑いあっていると、そこにあぜ道の向こうから別の男が大慌てで走ってきた。
「なんじゃ必死な顔して走って。なんぞ大事件でも起きたか?」
「大事件じゃ! 周辺の領主どもが、大魔王様を討伐する言うて攻めてきおる! 城では大魔王様が募兵を行っておるぞ!」
その言葉を聞き、笑いあっていた二人も慌てて立ち上がった。
「それは大事件じゃ!」
「前みたいに戻るのは御免じゃ! わしらも城へ向かうぞ! 家族のためにも、戦うんじゃ!」
「で、なんで募集人数の十倍も集まったの?」
「さあ?」
選抜して定員通りにしか雇わなかったけどさ。なんで悪の大魔王の軍勢の兵隊募集で、倍率十倍超えるのか。これが分からない。
やらかしたら吊るされるのは見せしめでやったし、甘い汁をすするとかの理由はないだろうしなぁ。
まあ、足りないよりは良いし、今日の閲兵式をさっさと終わらせてさっさと戦争に行こう。
「さて、諸君。私から多くを伝える気はない」
所詮は駒だ。主戦力は俺一人であって、捨て駒どもに多くを伝える必要はないしな。
「諸君らの嫁、子供。それが居ない者は親兄弟。それらは私が預かる。諸君らが職務に励む間は面倒を見るので、安心すると良い」
「おお、大魔王様が残していく家族の生活を保障してくれるのか」
「これは気張らんとな。不正のお嫌いな大魔王様のためにも、まじめにやらんといかんぞ」
ふふふ、何を言ってるかは分からんが、良い感じにざわついてやがる。
そりゃそうだ、この稀代の暴君が、家族を人質に取るって言ったんだからな! あえて遠回しに言うあたりが悪党っぽくね?
選抜基準に、家族がいることって入れたのも、このためだからな。
人質とか、悪党の初歩の初歩でしょ。
「さあ、行くぞ!」
「「「大いなる魔術の王、我らが大魔王様万歳! 万歳! 万歳!」」」
おお、兵士たちが俺を讃える言葉を!
なんだかそれっぽいぞ!
で、戦争だが、特筆するほどのことはなかった。
基礎の基礎の呪文ですら常識外れの戦略級の威力を持ち、しかもどれだけぶっ放しても魔力切れの心配なし。
俺が乱れ撃って、兵士たちに見張りだの追撃だのを任せれば、あっという間に勝利が決まる。
すると、略奪圏が増えて最初の町を参考にシステムを組み、安月給に当然のように不満を持つやつがやっぱり懲りずに不正をするので家族ごと吊るして見せしめにし、安定してきたころに別の連中が俺の強さを知って、より強力な連合で襲ってくる。
それを繰り返すこと十年。
「「「「「我らが人類の支配者たる大魔王様、おはようございます」」」」」
「うむ」
およそ俺の呼び出された文明圏で『世界』と称される範囲のすべては、今や俺の略奪圏である。
管理者どもの全部について人質を管理しきれないので各地域の幹部クラスの家族だけを対象にし、拠点も最初の地から全域ににらみが効く交通の便の良いところに移転した。
その中で最低限の衣食住以外のすべてを奪い取って俺のところに運び、そして俺に献上されるべき財貨に手を出す賊どもを俺の目の届かないところでも迅速に殲滅するシステムを作るのは本当に苦労した。
特に、不正対策に監査担当の組織を作らねばならないのがもったいなすぎる。本当に無駄な金だが、作らなければそれ以上の金が闇に消えるのだ。積極的に横領せずとも、略奪を適当にやる奴もいるし。見せしめで吊るしても、目が届かなくなると油断しやがるんだよなぁ。
で、定期不定期に監査が入り、俺が激励って名目で抜き打ち監査をする体制にすることに。
そんな苦労を経て最近やっと、俺が陣頭に立たずとも自動的に金が俺のところに集まるようになってきた。
領域が広すぎて使いきれない金で倉庫が爆発しそうになり、悪党らしく人々から巻き上げた金を全く何の意味もない箱物につぎ込んでやろうと豪華な大宮殿の建設を命じた時に、俺は最終のデザイン認可以外をしなくても仕事が進んだときには感動すら覚えたね。
で、時間が出来て、最初にシャーリーに問うた訳だ。「今まで側近としてついてきて、『世界』のすべてを壊して手に入れた。何か褒美はいらないのか?」と。で、答えが「王家の娘として、大魔王様以外に親兄弟に顔向けできる家がすべて滅び去りました。なので結婚してください」ときた。
まあ、かなりの美人に育った彼女を結婚することに特に問題がなかった上に、結婚式とか浪費の大チャンスでもあったので、即承認。式の余興で大規模なマスゲームを見た時は、ちょくちょくニュースを見ていた日本人として、圧政を強いてるのだと、自らの悪党ぶりに感動すらしたものだ。
それらが終わり、また時間と金が出来てしまった。
何か悪党らしい使い方がないかなぁ、と考えていた時のことである。
「そうだ。各地の美女を徴発して、ハーレムつくろう」
妻が居るのに酒池肉林のハーレム生活!
浮気的にも強制連行的にも酷いし、維持費は莫大。最高の悪党感だ! 後世で暴君として叩かれまくること間違いなし!
「で、女どもの集まり具合はどうだ?」
朝議の席で聞けば、集まったおっさんどもが複雑な顔をする。
お、これはついに来たか!?
「実はその件で、各地で暴動が起きてまして……」
「お、ついにか! お題目は何だ? 女どもを返せ? 自由を返せ? それとも大きく、打倒、大魔王か?」
俺が前のめりに聞けば、なぜか漏れる笑い声。
いやいや、大事なとこよ、ここ。
「大魔王様は冗談がお上手であられる」
「いや本当に、そんなバカバカしい」
あれ、無理矢理に女を集めさせてるんだぞ? その家族たちや地域の人たちが抵抗するもんじゃないの?
何か空気がおかしいのに戸惑っていると、暴動について報告して来たおっさんが笑いをこらえながら言った。
「役人だろうと町人だろうと農民だろうと立場を問わず、税さえ払えば誰もが明日を心配しなくても良い生活を与え、決して不正を許さず、戦争においては絶対不敗の臣民の守護者。そして世界のすべてを壊し、戦乱を終結させた絶対の統治者。そんな大魔王様の後宮に入れるチャンスですぞ? 選考に漏れたものが、自分の方がふさわしいはずと騒ぎ、その親族なども一緒になって公正な選考がなされたのかと立ち上がり、選考に通った方が落ちたくせに往生際が悪いとまた立ち上がって大騒ぎなのです」
「我らが大いなる魔術の王たる魔王様に逆らおうなど、考えもしませんし、考えたところで何人がついて来るでしょう?」なんて冗談めかして言う連中に、目の前が真っ暗になる。
「いやいや、誰だそれは? 俺は、略奪して、その金を私利私欲で使い込んで……。実際に大宮殿を何十年もかけて作らせてるだろ!?」
「ああ、最近大魔王様のお蔭で生活が守られ農閑期にヒマになった農民どもが、たまに田舎から参りに来ておりますアレですか? 大魔王様が最初に統治なされた領地は『始まりの地』としてすでに聖地のような扱いをされ、今までは忙しかった農閑期に時間が出来た農民たちがまず始まりの地を訪れ、そこから生々しい大魔法の傷跡残る戦場後を参って大魔王様の強さを目にしながら首都を目指し、最後に首都で建設中の大宮殿の威容を見て自分たちの守護者の偉大さを確認する巡礼旅が三年程前から始まり、一生に一度はしてみたいと人気が出始めておりますぞ。私も長期休暇さえ取れれば、一度はやってみたいですがなぁ」
おかしい。おかしすぎる。
どれだけ頑張っても最低限必要なものしか手元に残らなくて、俺が独占してるんだぞ? それで不満がないとか、こいつら訳が分からねぇ!
「シャ、シャーリー。ほら、俺たちこんな立派じゃないよな? 最初の契約からしてそうだもんな?」
「あ、はい。よく分からないですけど、最初におっしゃってたように全部滅ぼして、全部を手にお入れになりましたね。後は、『持続可能な略奪』でしたっけ?」
「そう、そうだよ!」
妻となっても変わらず筆頭部下としてここに居るシャーリーに話をふれば、ナイスアシスト!
そうだよ、持続可能なインテリ系の略奪をやってるんだよ!
「おお、これが名君の政治哲学か」
「なるほど、権力を持つ者として、自分の行動に常々疑問を持つことで自らを律しているのか」
おい!? なんでそうなるの!?
やばい、これは悪党らしくするのは、方向転換しかない。
……あれ? でも、方向転換ってどうやるの?
俺の思ってたのは全部否定されて……ああ、くそ! 学校で暴君のやり方を教えてくれなかったから! これだから日本の教育システムはクソなんだ! 微分積分とかやってる暇があったら、こういうもっと実用的なことを教えろってんだ!
えっと、えっと、悪党……悪党……。
「うぅ……」
「大魔王様!? どうなされましたか!?」
おっさんども、お前らのせいだよぉ……。
「うぅ……おれ、まおーだもん……おーぼーだもん……うぅ……」
「まさか、名君扱いされたことで泣き出してしまうほどに自らを徹底的に律しておられるのか!?」
「誰か! 記録を取る紙を寄越せ! ここまでの徹底した行動は、大魔王様の言行録として遠く未来まで名君の心構えとして残さねば!」
どうしてこうなったのか……うぅ……。