放たれた・・死?
【放たれた・・死?】
ユニオン設立メンバーが、ゴルドの定食屋に集合している。
「第二回ユニオン会議ーぃ! 皆拍手ぅ」
パチパチパチ・・
「待ちなさい!」
理由も聞かされず、関係者全員招集された揚句に前回と同じノリである。
「ん? 何だヴァイス? トイレなら先に済ませておいて・・」
くわーん
「誰がトイレの話をするか!」
注文を届けに来て空になったトレーを、ゴルドから引っ手繰ると投げつける。
「い、痛いぞ? それに違うのかヴァイス?」
「当たり前でしょうが! 何でこの間やったばかりなのに、もう行うなんておかしいでしょうが!」
「ちょっと緊急事態が発生してな」
ヴァイスの荒ぶる姿に、気にした様子も無く本当の理由を述べる。
「・・はぁーっ、それなら最初からそう言いなさい」
「へぇーい。じゃあ拍手からやりなお・・」
「要らないでしょうが!」
いい加減にしろと、冷たい視線を送ってくる。
「兄妹の冒険者が絡まれた」
「・・へっ!?」
唐突に始まった話に、素で驚きを返してしまう。
「まあ冒険者なら誰しもある事なんだが、今回は装備に目を付けられた」
「つまりランクと装備の質があってないって事かしら?」
「その通り」
「商業ギルドのグリューナさんも、予想されていた事ですよね?」
ヴァイスが確認すると、ロートも思わず口を挟んでくる。
「絡むだけなら特に問題は無いのだけれども、装備を強奪されそうになった」
「ちょっ、それ犯罪じゃない!?」
「幾ら冒険者と言えども行き過ぎた行為で、冒険者ギルドも動いた」
「一応装備を渡す時は、この危険を考えて貸与にしてあるのですよね?」
「貸与と言っても町の外や、ギルドの目の届かない所でやられたらどうにもならないわ」
グルノとシルヴィも話に参加してくる。
「こちらとしてはタダでくれてやるつもりも無いので、集まってもらった訳だ」
「どうするつもりかしら?」
「正直どうにもならんな」
「どうしてですか?」
「証拠がないからだよ」
「装備にユニオンのマークか何か入れたらどうですか?」
「うーん、消されたら何にも言えなくなるじゃないかしら?」
「なっ!? そんなぁ・・」
貸与とはいえ、他の町で捌かれれば全く分からない。
マークを消されて身に付けられたとしても、こちらの物であると言う証明にはならない。
「冒険者ギルドも、町の衛兵にも聞いたが、犯罪行為には断固対応はすると言っていたが、現行犯でも無い限り捕まえる事は難しい様だ」
「最悪は死人に口と言う事になるのですね」
予想はしていた事であるが、実際に自分たちに火の粉が降りかかってきてしまった。
「じゃあどうしろって言うのよ!」
「正直なところ、注意を促すしかないと言うのが本音だ」
皆は分かっている、注意をしてもトラブルは好んで向こうからやってくるのだ。
「今こそクランを作ったらどうかしら?」
シルヴィが仲間を守ると言えばクランよねと言ってくる。
「クラン? ふむ、一人では無いと言う事をアピールする訳か」
「じゃあクランとユニオンの差別化は?」
既にあるユニオンとかぶる事になるとヴァイスが冷静に意見を言う。
「むぅ・・」
「それならユニオンの情報を、少しオープンにしたらどうか?」
店の手伝いをしながら、こちらの会話に耳を傾けていたゴルドがアイデアを出す。
「どう言う事ですか?」
ユニオンの存在を秘密をしているのに、わざわざ広める意味が分からないブラウ。
「ユニオンの建前の目的は、植林事業の拡大だ」
「そうだったわね」
「拡大のための有益な肥料に、とある薬草が必要だとしよう」
「なる程、その薬草の事を教えるのはユニオンのメンバーだけであると。
そのために薬草採取をまじめに取り組んでいる冒険者を探している・・と?」
「消されるかもしれないけど、ユニオンの一員である証明としてマークもありね」
「まぁそんな感じだ」
ゴルドとヴァイスは、条件付きのオープンについて検討する。
大体皆の意見が出尽くすと、シュバルツが纏めを行う。
「犯罪に巻き込まれる事は、仕方がない事では済まされないが、クランであれユニオンであれ、冒険者であれば起こりえる事ではある」
「ええ、その通りね」
「ユニオンの事を積極的に宣伝するのではなく、装備や命を守るためにユニオンからの装備貸与の条件を教えるのはやむを得ないとしよう」
「今まで通りユニオンの存在は秘密で、身を守るために与える情報を準備しておくと言う事ですね」
「それで様子を見ようと思う」
全員の顔を見回し、了承が得られたと確証する。
次の瞬間 − シュバルツの視界が暗転する。
「(おや? 会議で発言する・・、酒には口を付けていなかった・・は・ず)」
そう思いつつ、意識を手放す。
意識を失ったシュバルツの体は、ゆっくりと倒れて行く。
「何やっているのよ、大事な会議の前に酒を飲む事ないでしょう」
呆れた物言いのヴァイスに、全員に笑いが起こる。
しかしその笑いにシュバルツが応える事は無い。
「・・ねぇ、何時までそうしているつもり?」
「シュバルツさん・・?」
「・・シュバルツ様?」
少しふまじめなシュバルツとはいえ、流石に会議前に酒を口にしているはずがない。
「ちょっ・・」
「いかん!」
全員が茫然とする中で、ゴルドがいち早く動く。
「シュバルツ!」
慌てて全員がシュバルツの元へと駆け寄っていく。
シュバルツが目を覚ますと、真っ白な世界に居た。
「ここは・・?」
「お久しぶりですね、Mr.シュバルツ」
死んだあとに来た世界である。
「久しぶりです、管理人殿」
しばらく沈黙があって、先に女性管理者から声がかかる。
「貴方は随分と慕われている様ね」
「ずっと見ていたのか?」
「新しい技術を世界に持ち込んだ手前、当然でしょう?」
「ここに俺が居ると言う事は・・死んだのか?」
「話し合ってから決める事になるけどね」
「何を話し合うんだ?」
此処に呼ばれた時点で、何らかの問題が発生したのは間違いない。
「『トレジャーメーカー』についてか?」
「そうね、先ずはそこから始めましょうか」
「先ずは? 色々あるみたいだな・・」
「幾つか小さな原因が重なって、大きな問題になると思うんだけど?」
「確かに・・な」
女性管理人の言葉に、シュバルツは納得する。
「最初に話題に上った『トレジャーメーカー』だけど」
「やはり経済的な影響か?」
管理者は何も言わずに、ニッコリと返す。
「貴方が良心的で、世界の影響を考えながら、新しい技術のあり方を検証してくれた事に感謝するわ」
「それは良かった」
「手に入れたアイテムを次々に流していたら、経済的な問題だけではなく、武器や防具の職人たちの存在意義まで奪っていたわ」
「そう思うよ」
「残念だけど、『トレジャーメーカー』の導入は見送りとなります」
「仕方ないだろうな」
あまりにも能力が優秀すぎる以上、やむを得ない措置だろう。
「そこで貴方の経験から、よりふさわしい技術へのヒントがあればと考えています」
「うーん、トレジャーハンターと言う職業は人気がないから、多少有利に働く能力があっても良いんじゃないか?」
「例えば?」
「地下を探索できる能力は無いみたいだから。魔法でも無理なんだろう?」
「なる程、今まで地下を探索する能力は無かったわ。土魔法でも何かある程度ね」
奇しくもグリューナの上司が思い描いた能力に辿り着く。
「調査に掛けた時間や労力によって、ご褒美があるとやる気が出るかもな」
「それこそ『トレジャーメーカー』みたいにですか?」
「トレジャーハンターと言うのは頑張っても何もないが当然だろうが、能力である以上、有効に使って貰いたいだろう?」
「面白いアイデアですね。次の方に検証してもらうとしましょう」
女性管理者はウンウンと頷いて、新しい能力を纏めている様だ。
「ちなみに名前は何が良いかしら?」
「うん? お宝を作るのではなくて、お宝を探すになるから、『トレジャーサーチ』とか『トレジャーディテクション』と言った所じゃないか?」
「ふむふむ、良いですね」
ふとダンジョンに宝箱が残っているとしたら、と考えて違うアイデアを出す。
「本当にダンジョンのアイテムが残っていた場合、あちこちに散らばっている訳だろう?
一か所に集めてそこまでの通路まで作ってくれると言う能力もありかな」
「先ほどの上位能力と言った所かしら? これはどんな名前になりそう?」
「そうだな・・、お宝を集めるから『トレジャーギャザリング』とか?」
「うん、いいわね。ありがとう」
「どういたしまして」
どうやら次の人物へのバトンは、無事に引き継がれる様だ。
「これで終わりか・・、長かったような短かったような・・」
感慨深そうに目を瞑り、前の世界と今いる世界の出来ごとに思いを馳せる。
「何言ってんのよ? まだ一つ目しか終わってないじゃない」
「・・えっ? 一応次回策まで考えた・・」
「あくまでも『トレジャーメーカー』の話でしょ! 正直これから本題なのよ?」
問題の原因と解決までやれば終わりと誰しも思うのだが、ここからが本番と言う。
「他に問題らしき問題は無かったと思うんだが?」
「でしょうね。自分が直接行っていないんだからね」
「どう言う事だ?」
「『因果応報』の事よ」
『因果応報』は自分が二番目の世界で、簡単に死なない様にする能力だった。
「特に何もなかったと思うのだが?」
「貴方への直接攻撃や介入の他に、貴方が敵と認識した場合に発動したのよ」
「大手商会と有名クランの事か・・」
やはりあれは偶然ではなかったようだ。
「そう。『因果応報』によるもので間違いないわ」
確かにシュバルツもわざわざ敵と言う言葉を使って、『因果応報』の発動を期待していた。
「他には貴方が仲間と思っている人たちにも影響が及んでいるのよ」
「・・ま、まさか」
思い当たる節がある。
「中古屋の姉妹が偶然守られた事、材木商の商売がうまくいっている事、防犯魔法の格安入手、材木商を辱めようとした主都最大手の危機、ユニオンのメンバーに手を出した者の末路・・などなど、貴方の知らない所まで影響力が及んでいる」
「何て事だ!」
シュバルツは『因果応報』の暴走に唖然とする。
自分の敵か味方か、それが無意識であっても、世界からつまみ出されることを意味する。
「お分かりいただけたかしら?
『トレジャーメーカー』は経済的な問題だけど、使わなければそれで済む事なのよ。
『因果応報』は違う。世界のバランスその物を壊してしまう」
「俺を呼びだした理由が分かったよ」
行動や意思とは無関係に、自分が存在するだけで世界に大きな影響を与える。
「貴方に与えた能力は魂に刻まれていて、取り去る事は死ぬ事になると思います」
「やむを得んだろうな」
少なからず縁も出来たあの世界を思えば受け入れらる。
「縁と言っている様に、私の世界に貴方が残した足跡は決して軽い物じゃない」
女性管理者には、シュバルツを心配して見舞う人々が居る。
「そこでこの世界で行っておきたい事を、可能な限り希望に添いたいと考えています」
「うん? どう言う事だ?」
心の中では自分が消える事は決定事項と思っていた。
「やり残したことをする時間を与えると言う事です」
「大見得切って大丈夫なのか?」
「そのくらいの時間なら・・多分」
多分って・・、『因果応報』の最初の説明でもそんなこと言ってたよな。
「とは言え、貴方が何を望むのか、次第でもあるのだけど」
「ふむ、それはそうだ」
結局世界の断りを壊す事を望むなら、本末転倒になってしまう。
「貴方は何を望むのかしら?」
「そうだな・・」
孤児院は、大衆浴場があるし、実芭蕉の苗もある。植林事業もあるから問題ない。
ヴァイスと材木商、ゴルドと定食屋・・、全然問題ないな。
中古屋、シルヴィとロート、グルノとブラウ・・、まあ大丈夫だろう。
ユニオンに所属する冒険者たち・・、ちょっと中途半端かな。
「俺は命を大切にを旨とするユニオンを立ち上げた」
「ええ、知っているわ」
「これからも人々が集まってきて欲しいが、中途半端になって申し訳なく思っている」
「ふむふむ」
「装備は『トレジャーメーカー』を当てにしていた所が大きい。何とか出来ないか?」
「うーん、廉価版『トレジャーメーカー』を授けましょう」
「おいおい、廉価版とはいえいいのか?」
経済的なダメージを心配しているのに大丈夫なのだろうか?
「欲しいアイテムを生み出す事ができます」
「だからヤバくないか?」
「大丈夫ですよ。誰か一人に鍵を預けます。その人が鍵を使って引き出しなり、扉を開けると、ユニオンのメンバーに必要と思う装備が用意されていると言う形です」
「その人ためだけの装備や品質が限定されると?」
「その通りですね。中古屋の姉妹に渡して、中古品を出すようにしてもいいですね」
ほぼほぼオンリーワン装備か、しかも中古・・。問題もかなり軽減されるのだろう。
「どうやって使い方とか説明するんだ?」
「貴方の死後、夢の中などで上手く伝えますよ」
「・・分かった、それで良い。頼むよ」
「勿論です。後はありませんか?」
「いや、特に無いぞ」
「では残りの人生を・・」
再び視界が暗転する。
シュバルツが目を覚ますと、そこには見知った天井があった。
ずっと付き添ってくれていたのだろう、四人の娘たちに揉みくちゃにされる。
騒ぎを聞き付けたヴァイスが、雷を落とすまで続けられた。
「あなたたち、病人に何やってるの!」
「「「「ごめんなさーい」」」」
聞けば定食屋で倒れたのが夕方で、今は翌日の朝。
半日意識を失っていた・・と言うか、ただ寝ていただけの様にも取れる。
「体調はどうかしら?」
「すこぶる問題ないんだが」
「ふむ、あのヤブ医者の言うとおりだったわ」
知り合いの医者らしく、特に病らしい病は見つからないとの事。
皆から集めた話から、精神的な疲労によるものではないかと言われたらしい。
「一応しばらく様子を見るようにって言っていたわ」
「そうか・・、気付かない間に心が疲れていたんだな」
「貴方が精神的疲労? はっ! だったら世の中の人は全員死んでいるわね」
相変わらず冷たい対応であるが、娘たちを連れて一人にしてくれる。
一人残されベッドに横になりながら考える。
「自分がいつまで生きられるか、聞くの忘れていたなぁ・・」
劣化版『トレジャーメーカー』が決まっている以上、本当にあいさつ程度の時間であろう。
もしくは極端に世界へ影響を及ぼす様な事をすれば、直ぐに終了となる。
「正に死ぬための準備の時間と言う訳だ」
誰に自分の死の事を伝えておくべきか・・
皆の許可が出る数日間は静養をした後、ゴルドの元へと向かう。
「少し体がなまっている様だから、散歩に言ってくるよ」
「大丈夫ですか? シュバルツ様」
見張り?として、今一番自由に動けるブラウが声をかけてくる。
「うーん・・じゅあ、中古屋、材木商、定食屋、アパートメントによって戻ってくる。
万が一遅い事があったら、その順で巡って探してくれるかな?」
「分かりました、お気を付けて」
行く先が分かり、戻る時間も大体予想できる。
何かあれば自分が動くと決まっているので、快く送り出してくれる。
カランコロン −
「やあ、ロート。こんにちは」
「シュバルツさん!? 出歩いて大丈夫なんですか?」
「いや何もないの知ってるでだろう? 体が鈍って鈍って。それで散歩中」
ロートはいつもの様に少し困った笑みを返してくる。
材木商ではヴァイスは不在だったので、植林している場所へ行ってみる。
「あら、手伝いに来てくれたの? 悪いわね病み上がりなのに」
「違う違う違う違う」
恐ろしいお誘いに、全力で首と手を振って応える。
「冗談よ、あまり無理をしない様にね」
優しい笑顔で送り出してくれる。
定食屋にはゴルドの姿は無く、アパートメントへと足を向ける。
「どうも」
「ん? もう良いのか?」
「散歩で体を鳴らしている感じ・・かな」
「そうか」
聞けばロートとブラウが交代で、中古屋の店番とアパートメントのフロント係を受け持ってくれている。
ブラウが自分の付き添いをしていたので、今日のところはゴルドが残ってくれたらしい。
「ゴルドさん、ちょっと話しても良いかな?」
「何かな?」
「神様って信じる?」
あまりに唐突な質問に驚きの表情を浮かべるが、一瞬でに元に戻る。
「一応は信じている。会った事は無いがな」
「じゃあ、俺がどうして必ずアイテムを見つけられるか知ってる?」
「知らんな」
「地面の中にアイテムがあるか探知できる能力を持っている」
「ほぉー・・」
おかしい。
違和感を覚える。
自分の事をこんなにべらべらとしゃべる男ではない。
「神様が言うには、その能力は寿命を縮める、・・縮めていたらしい」
ゴルドの目が一瞬見開かれた後、スッと細められる。
「何故、俺に話す?」
「正直いって、夢か幻、嘘なのか本当なのか分からないんでな。万が一を思って誰かに伝えておきたかった」
シュバルツのおしゃべりの理由を知る。
「分かった」
ゴルドは胸の内に仕舞っておく事にする。その時があるまで。
修道院の屋根裏部屋に戻ると、ブラウが安堵した表情を浮かべ一度帰宅する。
「ふぅ、これでいいか。後は今までどおりに過ごすのがベストだろう」
急に生活を変えれば、感の良い娘たちに気付かれるかもしれない。
今まで通りで、管理者の時を待つ事にする。
Bar 堕天使−−
Mephistopheles がカウンターで、二人の客を前にグラスを磨いている。
「それで転送した人間を、もう一度呼びだしたと言う訳か」
話を聞き終えた男性管理者が言葉を発する。
「そうなのよ。こんなに影響が出るとは思いもしなくて吃驚だわ」
肩をすくめると、グラスに口を付ける女性管理者。
「しかし面白い結果が得られたものだな」
「まあ、良い経験ではあったわね」
Mephistopheles が一言発する。
「もう終わりですか?」
「えっ!? どう言う事だ?」
「ん? どう言う意味かしら?」
そして甘い言葉で誘う。
「いえ、本来の目的は何でしたっけ?と思いましてね」
「本来の・・?」
「・・目的?」
二人の管理者はお互いの顔を見合わせて、ハッとした表情になる。
「しまった!」
「ああ!? 何て事を・・」
二人の目的は新しい技術では無い。信仰ポイントの交換である。
ぶっちゃけ世界が壊れるギリギリまでやってもらった方が良い場合もある。
「茶々入れしないで放っておけばよかった・・」
「お前まじめにやり過ぎだ・・」
「今から何とかならないかしら・・」
「散々脅したんだろう? 大人しくしちまうよ」
二人してカウンターに突っ伏してしまう。
「長く生きていれば、それだけ影響も長引きますから」
Mephistopheles が慰めの言葉をかけ、グラス磨きに戻る。
誰か別の人が映ったグラスに・・
シュバルツは最後の時を待つが、その時はなかなか訪れなかった。
ゴルドを見送り・・
ヴァイスを見送り・・
シルヴィを見送り・・
ロートを見送り・・
グルノを見送り・・
ブラウを見送り・・
院長先生や、シスター、孤児院の子供たち・・
グリューナにヴィオレット・・
その子供たちさえも見送る・・
この大陸の長寿の記録を塗り替えても尚、その時は訪れてこなかった。
「(あの女性管理者・・、絶対に何かしくじっただろう!)」
心の中で叫ぶしかなかった。




