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チュートリアル

【チュートリアル】


一瞬、それとも長い時間なのか分からないが、自分としては直ぐに目を覚ました感覚だ。


「ん・・。あぁ、そうか」

「ご気分は如何ですか? Mr.シュバルツ」

「可もなく不可もなく、と言った所だ」


傍にいた女性に、肩をすくめて見せる。


「特に異常や問題が無ければ、貴方に追加した能力について説明したいのですがよろしいですか?」

「ああ、頼むよ」


与えられた能力について説明が始まる。


「先ずは、これから世界に導入しようとする技術です」

「まぁ当たり前と言えば当たり前の話だな」


これが無くては、新しい世界に言っても全く意味が無くなる。


「次に生活するに必要な技術と、生き延びるための技術となります」

「どんな能力何だ?」

「これから一つ一つ説明して行きますね」

「承知した」


大きく3つに分かれていると話してくれる。




「最初にこの世界で生活するのに必要な技術、能力から説明して行きます。

一つ目は『鑑定』。世界にあるあらゆるアイテムの名前や詳細な情報を見る事が出来ます」

「ふむふむ、便利なものだ」


初めてみる物も多いだろうし、かなり有益な能力だな。


「二つ目は『千里眼』。広範囲のエリアで敵味方やアイテムなどの探知探索が可能です」

「なる程、これで安全面を確保すると言ったところか」


何かに集中していればわからないが、身近の危機には有効になる。


「三つめは『異言語理解』。別の世界に言ったのに言葉からの学習では時間がかかりますので付与させていただきました」

「言語の学習と言うのも面白そうではあるが、今回は諦めるとするか」


言語の学習・・。非常に興味深かったなぁ、と残念に思う。


「四つ目は『倉庫』。色々な物をしまっておける空間です。時間が経過せず無限に収納可能です」

「これは便利な能力だな」


検証する能力がまだ不明だが、重要な物、必要な物、危険な物を考えた場合、中世の安全管理には疑問が残るのは確かだろう。


「五つ目は『移動』。他の場所へ転移したり、高速移動や飛行と言った事が出来ます」

「そんなに移動手段が限られているのか?」

「そうですね、主に徒歩か馬車です。時間に重点を置いていると考えていただければと」


中世の移動手段といえば、確かに徒歩か馬車ぐらいになるだろう。

移動距離を考えれば、後々必要となるかもしれない。


「しかし何でもありだな。やりすぎな気もするぞ」

「確かに過剰と思われる能力もありますが、世界の違い、文明の違い、価値観の違いといった壁がありますので、そう言った物を加味しております」

「まぁ使わなければいいだけだしな」

「はい。この5点セットで、私からの第一のギフトと言う事になります」

「分かった、受け取っておくよ」


少々やりすぎと思われる、生活するための能力の説明が終了し、次の能力の説明へと移る。




「続きまして生き延びるためのアビリティを説明します」

「今のギフトで十分生き延びられると思うんだがな」

「いいえ。前の世界では基本、戦う事は無かったかと思います」

「勿論だ」


前の世界では戦争も過去にはあり、軍隊も存在するが参加した事は無い。


「こちらの世界では、戦う場面が非常に多くなります」

「何故だ?」

「人間を襲うモンスターや、野盗といった存在が至る所に居るからです」

「そう言えば与えられたデータにもそうあるみだいだな」


後付けされたデータから読み取り、戦闘の必要性を認識する。


「戦った事が無い人間が、生き延びるのは容易ではありません。

そのためにアビリティとして『因果応報』を付与しています」

「『因果応報』・・。やった事は自分に返ってくると言う事か?」

「そうです。やられたらやり返す。受けた恩には報いると言う能力です。まぁ死んでは意味がありませんので、攻撃は当たる直前に発動します」

「寸止めは?」

「大丈夫です、多分。・・もしかしたら微妙かもしれません」


ちょっと気をつけた方が良い能力かもしれないと、心に刻みつけておく。




「最後に導入を考えている第二のギフト『トレジャーメーカー』の説明になります」

「どのような技術なんだ?」

「その名の通り、お宝を作り出す能力です」

「宝を? 作りだす?」


意味不明な言葉に眉を顰めると、ここぞとばかりに説明する。


「通常のくじ引きは、金額に対して最上級から最下級までの、どれかのグレードが当たるといった仕組みとなっています。

課金させるための、不公平なアイテム構成になっている事が往々にしてあり、非常に悔しい思いを何度した事か・・」

「・・・くじ引き?」


新しい能力? 『トレジャーメーカー』? くじ引き? 

後半の方は、女性管理者の恨みごとに近い様だったが?


「しかし『トレジャーメーカー』は別です。アルティメイトレア級3個分を得るためのくじ引きで、更に運が良ければ最上級が出る可能性があると言う物です。

滅多に出る事の無い最上級であるサーガ級やレジェンド級の価値と比べる事は出来ませんが、サーガ級、レジェンド級1つに対して、アルティメイトレア級で3個と設定しています。

同様に『トレジャーメーカー』での価値となりますが、アルティメイトレア級1個に対してスーパーレア級が3個、スーパーレア級1個に対してレア級が5個、レア級1個に対してプレミアム級が5個、プレミアム級1個に対してエクストラ級が5個、更にはファイン級、ノーマル級、チープ級にも細かに設定されています。

ここまでは普通のくじ引きじゃないかと言うかもしれませんが、条件指定すれば割と欲しい物を手に入れる事さえできるのですよ?

しかも課金とかではなく、一か月と言う時間を待てばオッケー!」

「・・・」


オッケー? 何を言っているんだ?


「ざっくりではありますが、条件指定しなければ一回の『トレジャーメーカー』で、UR級が1個、SR級が3個、R級が10個、プレミアム級が15個、エクストラ級が50個程出るようになっています」

「・・・」


全く別の言語をしゃべっているのか? さっぱり言っている事が分からん。


「如何ですか?」


にこやかに語りかける女性に、沈黙を破って問いかける。


「いや聞きたいのは、このギフト『トレジャーメーカー』が、新しい技術として必要なのかと言うのを聞きたいのだが?」

「・・おぉ、そちらでしたか」


ポンと手を打ち鳴らすと、分かりましたと説明をする。


「こちらの世界にはダンジョンと呼ばれる物が存在します」

「そのようだな」


頭の中の新たなデータから、思い起こす様に引き出す。


「そのダンジョンは生活を脅かすため、見つけ次第、即時破壊が原則とされています」

「ふむふむ」

「しかしダンジョンにはお宝があり、それが陽の目を見ずに地中深く眠っている事になります。

そこでそのお宝お見つけ出すという新しい職業を導入したらどうなるかと考えました」

「なる程、そう言う事か」


新しい技能、新しい職業、新しい雇用を生み出すという考えな訳か。


「実は中世の文明に落ち着く前に、古代の文明が存在しその遺跡群があります。そこからお宝を見つけるトレジャーハンターと言う職はあるのです」

「なら不要じゃないのか」

「しかし、そうそう見つかるはずもなく、人々に影響を及ぼすには至っていません」

「『トレジャーメーカー』というか、お宝が存在するなら作る必要がないだろう?」


探すための能力を用意すればいいだけの事だ。


「必ず存在する訳では無く、既に持ち去っていたり、割れたり壊れたりするでしょう。

しかし確実にお宝を入手できるとなれば、人々の生活に変化が生じるはずです」

「そりゃそうだ。だが下手すれば経済の崩壊や戦争の引き金になるぞ?」

「その懸念はもっともです。そのための検証でもあります」


導入すべきかどうかを図るための、実験的要素が強そうである。


「実際には『トレジャーメーカー』だけではなく、他の技術も検討されており、あくまでもその一案となっています」

「元から失敗覚悟の上と言う事か」

「いいえ、成功するに越した事はありません。が、失敗してから次を考えるようでは・・」

「遅きに失するということだな」


研究者や科学者も、他の人がどんな事をしているか位の予想は立てる。

そして同時に、いくつもの研究が進んでいくのだ。


「その通りです。失敗と言っても改良案が出れば良しとも言えるでしょう」

「分かった。『トレジャーメーカー』の検証引き受けよう」

「ありがとうございます。それでは早速試していただきましょう」


そう言って、パチンと指を鳴らす。




真っ白い世界から、色彩のある世界へと一瞬で移動し、二人は地面に立っていた。


「ここが新しい世界と言う事か?」

「そうです。これより『トレジャーメーカー』を実際にやっていただきます。

では地面に手を付いて『トレジャーメイク』と言って下さい」

「こうか? 『トレジャーメイク』!」


しかし何も変化が見られない。頭の奥で何かを感じ取る。


「失敗したのか?」

「いいえ、成功しています」

「何処に宝があるんだ?」

「それは勿論、地面の中です。お宝なんですから、トレジャーなんですから、ハントなんですから・・、掘り起こしてナンボでしょう?」

「地面・・、地下?」

「そうです」

「どうやってそこまで行き着くんだ?」

「どんどん穴を掘って下さい。お宝の部屋にたどり着くまで。ひたすら」

「・・・」


にこやかにスコップを手渡してくる女性に、かなり殺意を抱いてしまう。


「穴を・・、掘る。自力でか?」

「無論です」


何故だろう・・、スコップを思わず振り上げてしまう。


「・・と言いたい所ですが厳しいですよね」

「分かってて言ったのか?」

「ちょ、ちょっとした冗談です、冗談」


取り返したスコップを隠して、笑って誤魔化そうとしているが、頬に冷や汗が流れている。


「実は『トレジャーメーカー』と言うギフトに付随するスキルが存在します」

「さっきの説明の中には無かったと思うが?」

「『トレジャーメーカー』の説明の際に、合わせてやろうと思ったんですよ」


嘘臭い、かなり胡散臭い。とは言え、そう簡単に能力を追加できるようではなさそうである。


「・・まぁいい。どんなスキルだ?」

「『クリエイトスキル』と言います。ぶっちゃけスキルを作るスキルですね」

「をぃ・・」


このスキルがあれば、何にも要らないと思えるスキルである。


「あっ、誤解しないで下さいね。あくまでも『トレジャーメーカー』に付随しますので、『トレジャーメーカー』に関連するスキルしか作れません」

「例えば?」

「今まさに必要な穴掘り魔法とか、通路作成魔法とか階段作成魔法ですね」

「・・なる程」

「これから先『トレジャーメーカー』を使っているうちに、何らかの問題が発生した時に切り抜けるためのスキルとお考え下さい」

「そう言う事か・・、承知した」


階段や通路を作りながら、お宝のある部屋まで穴を掘り続ける。

途中、外の光が弱くなったため、灯りの魔法も作成した。


「ん? 何か石壁みたいなものにぶつかったぞ?」

「はい、先程申しましたが、『クリエイトスキル』は『トレジャーメーカー』に付随するスキルですので、『トレジャーメーカー』によって作成された物に影響を与える事は出来ません」

「そう言う事か。じゃあ最後はどうしたらいいんだ?」

「申し訳ありませんが、此処だけは自力でブチ破っていただくしか。本当に申し訳ありません・・」

「・・そうか、ならば仕方がないな」


何度も謝罪する管理人に、軽く溜息を吐いて、ブロックを積み重ねたような石壁を崩していく。

せめてもの救いは、ただ単に積み上げているだけなので、かろうじて人力でも動かせると言う事だろう。


石壁の崩れて出来た穴をくぐり部屋に入って驚きの声を上げる。


「これは・・、何と言うか・・、すごいな・・」

「そうでしょう、そうでしょう!」


してやったりと言う笑顔で、部屋をぐるっと指し示す女性管理者。


先程言っていた量のアイテムが壁や台の上に所狭しと並んでいる。


「これだけの量を片づけるためにも『倉庫』という能力は必須と考えた訳です」

「その様だな」


全てのアイテムを『倉庫』に片づけると、女性管理者は次のチュートリアルへ移る。


「では、今度は何処でも構いませんので手を付いて『トレジャーメイク』と」

「分かった。『トレジャーメイク』」


すると今度は明確ではないのだが、失敗したと言う感じがする。


「今のは・・、失敗した?」

「はい、失敗しました」

「何故だ?」

「これからその説明をいたします」


どうやら成功と失敗を経験させてくれたようだ。


「『トレジャーメーカー』は先程説明しましたが、色々な問題を引き起こす可能性があります。特に経済的な影響です」

「そうだな」

「そこで月に1回という回数制限が設け要られています」

「そう言えばそんな事を言っていたな」


意味不明の言語でしゃべられた中に、そんな情報があった事を思い出す。


「しかし今はチュートリアルなので、全部で10回程試していただきたいと思います。残り9回チャージしましたのでもう一度やってみて下さい」

「了解した。『トレジャーメイク』」


再び失敗したと言う感覚を受け取る。


「ん? また失敗したようだが?」

「はい、『トレジャーメーカー』には、まだ制限があります。

一つ目が『トレジャーメーカー』で作られた場所から、『トレジャーメーカー』を行う事は出来ません。

二つ目がお宝の部屋を作るだけの空間が必ず必要となります」

「ふむふむ、そう言う事だったのか」


説明だけで十分では?と思ったのだが、黙って女性管理者の話の続きを聞く事にする。


「それから『トレジャーメイク』をすると、アイテムは自動的にランダムとなります。

先程言いましたが、細やかな条件指定として『トレジャーメイク』の前に、武器、防具、アクセサリー、アーティファクト、薬、ランダムなどを付け加える事で、その種類だけのお宝を作り出す事が可能です」

「必要に応じて使い分ける事が出来ると言う事だな」


色々な条件で『トレジャーメーカー』を試し、穴を掘ってはお宝を回収を繰り返していく。


そして10回全てを行うと、チュートリアルは終了となる。





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