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争いごとの解決編

【争いごとの解決編】


有名クランのマスターは、グリューナの上司の上、ギルドマスターの呼び出しを受ける。


「お主の所の冒険者が随分と、やんちゃしてくれたようじゃねぇか」

「クランのメンバーが勝手にやった事だ、クランとは関係ない」

「そうかもしれねぇ。だが下の人間を管理できねぇクランっていうのは、信頼が置けねぇわな」

「ちっ!」

「冒険者ギルドの看板にも泥を塗ってくれたんだ。キッチリと落とし前を付けさせてもらうぞ」




更に冒険者ギルドのクランの監査で、大手商会との護衛契約書が発見される。


「おいおい、こりゃあ何だ?」

「大手商会からの依頼だ」


流石にこの時点で、冒険者ギルドを通していない護衛契約書が見つかるのは疑って下さいと言っている様な物で、クランマスターもかなり渋い顔をする。


「ちーっとばっかし預かっていくからな」


この護衛契約書は商業ギルドへと渡っていく。






大手商会の会長は、材木商のヴァイスの訪問を受けていた。


「有名クランを使って、私の知り合いを襲わせたと聞いたのですが?」

「一体誰がそのような根も葉もない噂を?」


ヴァイスが、中古屋と定食屋の知り合いであるらしい。


「無関係なら結構です。ただ・・」

「商業ギルドの特別監査だ。全ての帳簿を確認させてもらう」


絶妙なタイミングで、突然入ってきた商業ギルドの職員に驚きの声を上げる。


「なっ!?」

「結果次第では、取引を考え直させていただきます」


きっぱりと言い切ると、邪魔にならないそうにその場を去る。


「ふん。何も出はしないと思うが好きにするが良い」


大手商会会長は、帳簿類は隠してあるから問題ないと高をくくっていた。

その目の前で引き出しから、何故か裏帳簿が出てくる。


「ば、馬鹿な!? 何でその帳簿が!」


慌てて帳簿を取ろうとする会長を押さえ、職員がチェックする。


「おいおい、これは・・」


ギルド職員全員の視線が会長に注がれる。


「キッチリと説明していただきますよ、大手商会会長?」

「知らん、ワシは何も知らん」

「まだあるかも知れん。隠し部屋、金庫など徹底的に調べろ」

「はい!」


何故か職員の感が冴えわたり、隠し金庫が発見され更なる証拠が出てくる。


最終的に多額の罰金が科せられた上、ギルドとの取引停止となる。






シュバルツは町の城門の外で、待ちに待った人物が、逃げ出すように出てくるのに気付いた。


「やあ、元大手商会会長」

「むっ!? シュバルツか・・」

「呼び捨てなんだな。まぁそんな事は良いや。俺と敵対するからこんな目にあうんだ」

「なっ!? き、貴様が何かしたのか!」

「いや。お前が余計な事をしなければ、何も起こらなかったはずなんだがね」

「グッグゥゥ・・」


歯噛みをして、シュバルツを睨みつける。


「もう二度と会う事もないだろうけど、余計な事はしない事だ」


杖で会長の肩をポンポンと叩き、傍を通り過ぎて町の中へと戻っていく。


最終通告をしたシュバルツの背中を、ただ睨みつけるしかなかった。






冒険者にランクがある様に、クランにもランクが存在する。

有名クランは最低ランクまで落とされることになった。


幾らクランマスターが知らぬ存ぜぬを通そうとしても、現行犯でクランメンバーが捕まっては、厳しい処分もやむを得なかった。


色々な意味で有名だったが故に、更に有名に磨きがかかり話のネタとなってしまっていた。


「下がり目のあんたの所に居る必要はないな」


クランの主要メンバーが捕まり、ガタガタの状態の所へ他のメンバーが抜け始める。


「てめぇら、散々世話になっておきながら!」

「世話? 恐喝や暴力、俺だけじゃなく身内にまでやっておいて、強引にクランに参加させる事が世話と言うのか? 俺の持ってる辞書とはずいぶん違うな」

「クランとは全く関係のねぇ事だろうが。証拠があるのかよ!」

「そうだな。でもこんな弱り切ったクランで、身内を守ってもらえるとは思えんよ」

「むぐぅ・・」


今までやってきた強引な手段で引き入れた者たちは、うちのクランが強いから守ってやれるの常套句を逆手に取られ抜けられてしまう。


「うち等も手を切らせてもらうぞ」

「なっ・・」


同様に強引な手段で、無理やり手伝わされてきた職人たちも反旗を翻す。


「本当は一発でも、てめえの面に入れてやりてぇ所だがな」

「まぁ、このクランがつぶれる事で溜飲を下げるとしよう」

「く、くっそー! どいつもこいつも・・」


ギリギリと歯を食いしばっていると、入れ替わる様にシュバルツが現れる。


「お前の仲間はちゃんと伝えなかったのか?」

「あぁっ? てめえは誰だ?」

「お前の・・敵だよ。そう伝えるように言っておいたんだがね」

「て、き・・? シュバルツか!?」

「その通り。大人しくしておけばよかったのにな」

「ふん。お前が何かしたって言うのか?」

「勿論」

「ん? どう言う事だ?」


考えてみればあまりにもタイミングが良すぎる。いや悪すぎたと言うべきか・・


「てめぇ、一体何をしやがった? てめぇのせいで俺のクランが・・」


殴りかかったはずなのに、猛烈な勢いで壁に激突する。


「ぐぅ!? ランクBの俺が、ランクEのシュバルツに・・? そんな馬鹿な!?」

「分かっただろう? 俺に敵対する事の意味を」

「あぁ!? たかがまぐれで投げ飛ばしただけだろうが!」


再び殴りかかるが、同様に投げ飛ばされる。


「い、一体これは・・」

「俺の能力に『因果応報』と言う物があるからな」

「いんが・・? 何だそりゃ?」


初めて聞く能力かスキルに眉を顰める。


「やられたらやり返すだけの能力さ」

「・・はぁ?」

「簡単に言えば、敵対者は自動的に報復される能力だな」

「くっくっくっ・・、何だその嘘くせえスキルは! もっとマシな嘘をつきやがれ!」


剣を振りぬいて切りかかるが、シュバルツには刃は届かなかった。


「んなっ!?」


付与はないがエクストラ級の片手剣であり、日々手入れは怠らない。

その愛剣の刀身が根元からない・・、綺麗に折れている。


「(・・おうほう? そんな能力が本当にあったら誰も敵わねえじゃ・・)」


折れた刀身がクランマスターの頭上に届く直前、その思いを最後に意識を手放した。






修道院とゴルドの定食屋に、両ギルドから多額の見舞金が支払われた上に、ヴァイスによって無償で修理が行われていた。




シュバルツはゴルドの所へと謝りに行く。


「ん? 冒険者に殴られたり、物を壊される事は良くあることだ。

特段お前に限った事ではないのだから気にする事はないぞ」

「とは言え、結局のところ自分への逆恨みで、巻き込む形になりましたし・・」

「商業と冒険者のギルドから見舞金も貰っている。

何よりもヴァイスがタダで直してくれると言う。俺にはこっちの方が恐ろしい」


ゴルドの真顔に、苦笑いで返すしかないシュバルツ。




修道院へと向かい、院長先生に話をする。


「えっ!? 修道院を出て行かれるとおっしゃるのですか?」

「はい。話を聞けば自分への逆恨みで、襲われる形になってしまいました」

「商業ギルドや冒険者ギルドから見舞金は頂きました。

ヴァイスさんの無償支援で壊れた物は直される事になっています」

「しかし・・」

「衛兵の方から事前に襲われる可能性の事は聞いていましたし、シュバルツさんも私たちを守る様に立ち回って下さっています。

何よりも逆恨みなのですから、貴方が責任を感じる事はありませんよ」


謝罪をしに来たにも関わらず、逆に慰め励まされた上に出て行くのを引き止められる。




すぐに動いてくれた商業ギルドと冒険者ギルドにも礼と願い事のために、先の二か所よりも先に訪れていた。


先ずは冒険者ギルドのヴィオレットの所から。


「この度は色々とお世話になりました」

「いえいえ。冒険者ギルド内でも問題になっていたクランでして、内定を進めていたのですよ。

まぁ、シュバルツさんとの約状もありますからね」

「とは言え事無きを得たのは事実ですから」


そう言うと、3つ程エクストラ級のアイテムを目の前に出す。


「そこまでしていただかなくても・・」


口では殊勝な事を言っているが、目は明らかに欲しいと言っていた。


「一つお願いがありまして」

「何でしょうか?」

「この中から、修道院と定食屋の方に見舞金を出していただきたいのです」

「見舞金・・ですか」


本来であれば冒険者個人の問題であり、ギルドが動く事はなく、被害者は泣き寝入りするしかないからだ。


しかし今回は現行犯であり、今までのグレーな話どころではない。

ましてや誠実な態度は、ギルドの株を上げてくれるのも確かだろう。


「分かりました。金額につきましてはこちらに一任いただけますか?」

「勿論お任せいたします」


多すぎず少なすぎず、ギルドの事情もあるだろうから任せるのが良いと判断する。




続けて商業ギルドのグリューナの所にも顔を出し、同様の事を行う。


まぁアイテムの数で言えば、冒険者ギルドより1個多いのは長い付き合い上、仕方がない所だろう。


ヴァイスに修道院と定食屋の修繕費を渡すため、口座から引き出す事にする。

無ければアイテムを換金する必要があるので、その分も用意してある。


「申し訳ありませんが、口座にはまだ残っていますか?」

「シュバルツさん、金貨数百枚って言うのは、普通に使っていると一生かかっても使いきれない物なんですよ?」

「そうですか・・、何かすみません。空っぽになる前、出来ればアイテムの需要が高い内とかに換金しておきたいので教えていただけますか?」

「分かりました。心配される需要につきましては、毎月各町に10個ずつ配られれば下がるかもしれませんね」


何となくだが、暗にもっと持って来てとも、他の町で売るなとも聞こえる。


「しかし随分とお持ちになりましたね」

「ええ。口座が空の場合などの不測の事態を考えまして」

「ちなみにどんな物なのですか?」

「いつものエクストラ級ですよ。まあ秘蔵中の秘蔵、セット装備で・・すぅうぅ!?」


グリューナにいきなり胸ぐらを掴まれて、前後左右に振り回される。


「い、今、何ておっしゃいました!?」

「エクス・トラ・・セット・・装・備ぃー!?」

「すみませんが見せていただいても!?」

「み、見せま・・す。だか・・ら、止め・・て」


必死の懇願で、何とか振り回しが止まるとセット装備の御開帳となる。


「うわぁー、初めてみました。剣、盾、鎧、小手、脛当ての五点セットですか。

全て+2の付与がされていて、やっぱりセットオプションまで付いてるんだ・・」


グリューナの目が、売らないんですか売って下さいと訴えていた。


「さっきも言いましたが、秘蔵中の秘蔵なんです」


エクストラ級のため名前はないが、セットオプションは上位魔法防御となっていた。


「エクストラ級の+2オプションが5個で金貨二千枚のセットオプションは品質価格の2倍ですから金貨四千枚です。オークションにでもかけなければ、個人ではなかなか捌けませんよ、ギルドにお任せ下さい」

「あの秘蔵中の秘蔵で・・」

「お金が足りなければ手放すつもりだったんですよね?」


こちらの話を全く聞く気が無いのか、きらきらした目で覗き込んでくる。


何とか言い訳の言葉をと思いながらも、最後は根負けしてしまう。

・・シルヴィに何て言い訳しようかと考えながら。






個室からホクホク顔のグリューナと、がっくり項垂れたシュバルツが出てくると、何やら受付が騒がしかった。


「何度もご説明いたしましたが、ご本人と会う事は出来ません」

「重々承知しています。しかし私たちの考えを聞いていただいた上で判断していただきたいのです」


ハンドサインでグリューナに何?と聞くと、首を振って知らないと答えてくる。


「その件につきましては、ギルドの方からお伝えいたしますから」

「他人からの言葉で、はいそうですかとアーティファクトを貸してくれる人が居ますか?

お会いしてお話を聞いていただいた上でダメならば諦めも付きます。

「「ん!?」」


微妙に聞きなれた言葉に、シュバイツとグリューナが顔を見合わせる。


シュバルツは静かに隣の席に座ると、盗み聞きの態勢に入る。

仕方なくグリューナもシュバルツの向かいの席に座ろうとすると呼びとめられる。


「あっ!? グリューナ、ちょうど良い所に! 代わってもらえる?」

「へっ!?」


いきなり同僚に話を振られるが、さすが受付嬢、一瞬で切り替わる。


「一体どのようなご用件でしょうか?」

「こちらの方が、あるアイテムの事でお見えになっていまして・・」


賑やかな来訪者は、新しい職員に自己紹介をする。


「初めまして。私、王立学術大学院アーティファクト研究会の教授を務めております・・」

「教授!?」


トップのお目見えにグリューナの声が裏返り、シュバルツは声が出ない様に、手で口をしっかりと塞ぐ。


「教授なんて、タダの肩書ですよ」


にこやかに手をパタパタと振る。


「その教授自らどのようなご用件でしょうか?」

「こちらで取り扱っている、ある高価なアイテムをお借りしたくてお願いしにまいりました」


教授直々のお出ましは見上げた物ではあるが、借りるとはどのような事なのだろうか。


「借りるとは? 購入では無くて?」

「私どもの研究会には、その様な予算はありませんので」

「例えば考古学会もでしょうか?」

「そうですね・・。多分同じぐらいの懐具合と思いますよ」


シュバルツもグリューナも、あの筆頭秘書、いや考古学会が真っ黒だった事を確信する。


「それで借りたいとおっしゃる訳ですね」

「ええ。アーティファクトは金持ちにとって一つのステータスとなっています。

購入品を見せびらかすだけで、ちゃんとした調査なんかさせてくれません」

「ふむふむ」

「そこで人の手に渡る前に、お借りしてきちんと調べておきたいのです」


今まで我慢してきたシュバルツが、いきなり隣から横やりを挟んでくる。


「何でそこまでして、アーティファクトを調べたいんだ?」


突然声をかけられたにも拘らず、嫌な顔一つせず顎に手を当てて考えてくれる。


「うーん、そうですね・・。ロマンの一言に尽きると思います」


くさい事を言いましたと照れ笑いする。


「なぁ、考古学者って言うのは皆そうなのか?」

「そう、と言うのは何を指しているのでしょうか?」

「身だしなみの事ですよ。人と会うのにその格好は・・」

「ちょ、ちょっと。失礼ですよ!」


余りの発言に、名前を叫ばなかっただけでも褒めて欲しいと思うグリューナ。

教授は第三者的に見ても普通の服装であり、とやかく言うような事はない。


「変・・ですかね」


教授は大して気にした風もなく、自分の姿を見下ろす。

そんな彼女にシュバルツは、一枚の鏡を手渡しながら言葉をかける。


「今度会う時は、もう少しまともな格好を期待したいですね」

「いい加減にして下さい!」


そのまま席を立って出て行ってしまうシュバルツを諌める様に叫ぶ。

受け取った鏡を見たまま固まっている教授に声をかける。


「申し訳ありません! 普段はあんな事を言うような人では無いんです。

最近彼の身の回りで良くない事が立て続けに起こりまして・・?」


シュバルツをフォローする発言を繰り返すが、鏡を凝視したまま動かない教授を不審に思う。


「あの・・、教授?」


声をかけるが反応がない。

ふと思い当る事があり、教授の手にある鏡に目をやる。


「ま、まさか・・」

「はい。多分アーティファクトだと思います」


教授もそう答えるので精一杯だった。


最初に対応した職員が聞いて来る。


「と言う事は・・、身だしなみを整えて来いと言うのは?」

「多分、この鏡を調べ終わったら返しに来いと言う事だと思います」


教授の発言に、シュバルツを良く知るグリューナは違う事を言う。


「彼の性格からすると、調べ終わったら別のを貸してやる。貸す・・? もしかしたら譲ってやると言う意味かもしれません」


三者三様の思いで、シュバルツの出て行った扉を見つめる。




ヴァイスの所へ向かう途中、シュバルツは内心焦りに焦り、頭を抱えていた。


「(不味い不味い、不味すぎる。カッコつけて鏡を渡したけどあれは確か・・)」


光を無限に吸収して放出する能力。

そして貯めてある光エネルギーの量によって威力が変わるレーザー兵器であった。


「(今さら別の物を渡せば、もっとおかしなことになってしまうだろうし)」


一体いくつのアーティファクトを持っているのかと、絶対に疑われること間違いない。




道中ひたすら悶々と悩み、自分の愚かさ間抜けさを呪い続けるシュバルツであった。







ある村では‐


「頼む、本当に頼むよ」


目の前の村長に土下座をして頼みこむ奴隷商人。


「モンスターに襲われた事まで、ワシのせいにするつもりか?」

「そんな事は言わねぇ。・・けどよぉ、こっちは大損なんだ」

「それこそ知った事か」


村長のけんもほろろの対応に、にやりと奴隷商人がほくそ笑む。


「じゃあよぉ、ちーっと手伝ってくれよ」

「ん? 何をだ?」

「きっとあの旅人は、妹の方は治療して解放しているはずだ」


奴隷商人の目から見ても、姉の方は手の施しようがないと考えての事だ。


「それがどうした?」

「そこで一芝居打って欲しいんだ」

「芝居・・だぁ?」


奴隷商人の意図が今一分からない。


「例えば・・そうだな、あの姉妹の両親の親せきが迎えに来ているって言うのはどうだ?」

「ふむ、それで再び奴隷にと言う訳か?」

「その程度であれば手伝ってくれるだろう?」

「そうだな。旅費ぐらいは出してもらえるんだろうな?」

「分かった分かった、その位なら・・」


突然扉が叩かれる。二人でいぶかしんで扉を開ける。


「一体どうした?」

「そ、村長大変だ。村崩しが来た!」

「な、何だと!?」

「何だよ、その村崩しって言うのは・・」


余りに動揺する村長に、奴隷商人が気になり思わず聞いてしまう。


「ダンジョンの大氾濫とは全く別の・・。

稀に周囲のモンスターが一か所に向かって移動する事がある。その途中に村があると・・」

「ま、まさか・・」




かなり経ってから、行商人が村一つが滅んでいる事を見つける。

周囲の町や村々に知らせ警戒がなされるが、良くある不幸な出来事と、すぐに人々の記憶から忘れ去られてしまった。





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