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商業ギルドからのお誘い

【商業ギルドからのお誘い】


商業ギルドでは、トレジャーハンターとして成功し実績は残しているが、一年間の延長をしている。

シルヴィとロートには芳しく無いと言って、攻略済みダンジョンの情報収集をしてもらう。


ヴァイスには、失敗したとは言っていないと言うと、冷めた目で、バレない事を祈るのね、との言葉に冷や汗が止まらなかったが・・




最初に冒険者ギルドの資料を見るのに、ロートに冒険者登録が必要かどうかの確認をしなければならない。


「何を当たり前の事を言っているのですか? 指名依頼? 冒険者でない人に出来る訳無いでしょう」


ヴィオレットが目の笑っていない笑顔から、お小言を言ってくる。


ロートもギリギリの年齢ですぐに登録すると、ランクGのお使い依頼をシルヴィと一緒に超効率良く巡って半日で終了させてしまい、流石は住み慣れた町の姉妹であると感心する。


ちなみに姉のシルヴィがすでに冒険者となっているので、講習会は免除である。




午後にはロートがランクFになると、情報収集のレクチャーが始める事にする。


ギルドの資料室へ3人揃って入っていく。


「他の町の情報とか、パーティの噂話と言うのは集めた事が無いから、すまないが教えようがない」

「はい、分かりました。頑張ってみます」

「任せておいて」


攻略済みダンジョンの資料の棚の前に来ると、以前ヴィオレットから言われた事と合わせて、パラパラと資料を見せながら説明する。


「えっ!? 攻略済みの一言だけですか?」

「何よ、こっちのは裏面までびっしり情報で埋まってるわよ!?」

「パッと見てもらっただけでこのありさまだ。

この中から本当にアイテムがありそうな攻略済みダンジョンを探さなくてはならない」


説明をするシュバルツ自身も溜息を吐く。


「「おっけー」」

「良い物件が見つかったとしても、更に君たちが集めてくれた情報によっては、諦めなくてはならない場合もある」

「なる程です」

「これは骨が折れるわね」

「分かってもらえる? 心も折れそうになるよ」


苦笑いのシュバルツに、シルヴィとロートも慰めの言葉もない。


「と言う訳で二人には俺が出来ない事、一か所一か所を丹念に調べて欲しい」

「「はい」」


二人ともやる気に満ちた笑顔で、元気良く返事をする。




シュバルツはシルヴィとロートへのレクチャーが終了すると、事前に調査しておいた候補地へと向かう。

本音は二人の様子を見るためであり、ヴァイスとゴルドに後を任せる。


シルヴィとロートはシュバルツと別れた後、精力的に活動する。


「やる事は全部で4つ。開拓情報はギリギリの新しい方が良いから後回しにするか」

「駄目だよ、お姉ちゃん。一番最初にやっておかないと」

「ん? 何で?」

「詳しく調べた後で、開拓計画の範囲だったら振り出しに戻っちゃう」

「それもそっかー」


何から始めたらいいかとシルヴィが悩んでいると、ロートが意見を出す。


「お姉ちゃん、二手に分かれるのが良いと思う」

「どう言った感じで?」

「私が商業ギルドで、他の町やその周辺、開拓計画を確認してくる」

「ふむふむ」

「お姉ちゃんは、冒険者ギルドで候補地を探す」

「でもさっき言ってた、振り出し云々は?」

「明日、お姉ちゃんが薬草採取している間に、私が店番しながら付け合わせをするの。

それを繰り返しながら絞り込むのはどうかしら?」

「合点承知」


そう言うが早いか、シルヴィは冒険者ギルドの方へと駆け出していく。


ロートは商業ギルドへと向かう。


「こんにちは、グリューナさん」

「あら、いらっしゃい。ロートちゃん」

「お忙しい所すみませんが、シュバルツさんのお手伝いで、他の町とか、その周辺の情報とか、開拓計画を集めています」

「へぇー、そうなんだ」

「色々と教えていただいても良いですか?」

「ええ、勿論。可能な限りお手伝いするわ」


正直にシュバルツのお手伝いと話して、他の町の情報を集めている事を告げる。

商業ギルドもシュバルツに対して最優先の協力命令が出ているため、可能な限り情報を提供してくれる。


「うーん、町とその周辺の地図も欲しいです」

「そうね。持ち出しは禁止だけど見るだけならいいわよ。まぁ、情報は若干古いかもしれないけどね」

「ありがとうございます!」


何とロートは地図の閲覧の許可まで取り付けてしまう。


シルヴィは資料室で、ひたすら候補地の条件に合う物をピックアップしてロートに渡すと、彼女は店番をしながら候補地の絞り込みを行う。




更にシルヴィは自分の強みを生かしての活躍の場がある。


「ねぇねぇ、ちょっと武器を見せて欲しいんだけど?」

「うん? どうしたんだシルヴィ、急に武器見せろって?」


冒険者は荒くれ者が多く、新人に良くからむ事はあるが女性には遠慮がでる。


「いや、店をやっていくには目利きの勉強は欠かせないからさ」

「中古屋をまだやっていくのか? まぁ、どんな職業も目利きは必要だからな」


ましてやズューデンの町の殆どの冒険者は、シルヴィの事を知っている。


「ほれ。あっ、売らんからな!?」

「チッ、釘刺されたか」


軽口を叩きながら武器を預かると、真剣な表情で武器を見て行く。


「うん。良く手入れされているね」

「当たり前だ、俺や皆の命がかかってるんだからな」


その調子で一通り全員の武器を見て行くと、今度は質問タイムである。


「ねぇ、珍しい武器とか変わった武器を持っている人って知らない?」

「珍しい武器ね・・、代えがきかない武器を持つ奴っているかな・・」

「うーん、何でそんな武器に興味を持つんだ?」

「あまり見た事無い武器と言うのも見ておかなくちゃと思ってね」

「そうか・・、すまんが知らんな」

「ありがと。知っていればと思ったぐらいだから」


それじゃあと話を変えて、幾つかのパーティの名前を挙げて行く。


「このパーティに何かあるのか?」

「いや、ダンジョンを攻略しているから、どんな武器持っているのかなって」

「ああ、なる程。確かに聞いてみたいな」

「やっぱりレア級とか持っているのかな?」

「レア級だーぁ? アホ言え、難攻に潜る奴ぐらいだ。そんなもん持ってるの」

「そうなの?」

「そう言えばこっちのパーティとどこぞの討伐で一緒だったけど、ノーマル級、良くてファイン級ってとこだったな」

「ふーん、全員戦士だったの?」

「いや、魔法使いが2人で戦士が3人・・だったか? 内一人が盾持ちだったな」


こんな感じで少しずつパーティの情報を集めて行ったのである。




シュバルツは攻略済みダンジョンから戻ってくると、真っ先にヴァイスとゴルドの元へと向かい、二人の状況を聞く。


「問題は無かったと思う。寧ろ新たな目標が良い方向に働いた様に感じた」

「落ち込むとかは無かったわね。元気一杯動き回っていたわ。

まあ1回目だし、もう少し様子を見た方が良いとは思うけど」


概ね好感触の様で、後は継続しながら少しずつ距離を取っていけば良い。


ヨシっとガッツポーズで中古屋へと向かう。




カランコロンと、いつもの扉に付けられた鈴の音を聞きながら中に入る。


「お帰りなさい、シュバルツさん!」

「お帰り、お疲れお疲れ」

「ただいま、変わりは無い?」


他愛もない挨拶を交わすと、これからの事を簡単に決めておく。


「今日の所は商業ギルドに今回の報告に行って、修道院に戻るけど候補地って浮かんでるかな?」

「大体の所は。次はどこら辺にするとか希望はありますか?」

「うーん、先ずは主都の方へ行ってみようかと思っているけど・・」

「あっ! 主都はやめた方が良いわよ」

「ん? どうして? 何かあるのかシルヴィ?」


シュバルツとしては、この大陸の中心となる町は見ておきたいという気持ちがあった。


「流石に主都と呼ばれるだけあって、人口も多く、冒険者だけではなく軍隊もあって、開拓もかなり進んでいます」

「も、もしかして・・」

「そう、開拓計画はバッチリ徒歩2日の距離まではカバーされちゃってるね」

「なる程・・。ダンジョンの発生個所と開拓範囲が被っているなら諦めるべきだな」


シルヴィとロートの明確な答えから、主都は完全に候補地から除外された。


「他の町ではどんな感じ? お勧めの候補地はある?」

「不慣れな事もありますから、町から近くて、攻略期間が短く、且つ開拓計画から外れていて・・」

「攻略パーティに盗賊が居ない事が分かっている場所は、どの町にもあるよ。どうする?」

「結構調べてくれたんだね、どうしようか?」


シュバルツの問いに、姉妹は絶妙な連携で答えてくれる。


「好みの問題ですけど、町の特色なんかで選んではどうですか?」

「特色って?」

「ノルデンの町なら、湖沼が多くて魚料理が有名ね」

「ヴェスデンの町なら肉料理ですね。森が多いから良く獣が獲れるんです」

「オスデンの町は鉱山の町だから食べ物はそんなに有名じゃないけど、良質な金属とか装備品で有名よ」

「ふむふむ、それは面白いね」


もう少し町ごとの特色を聞いて、候補地を決めるというのは悪くない。


「二人とも明日の都合のいい時間に修道院に来てくれる? もう少し話を詰めたいんだけど」

「えーっと、明日は・・」

「何か都合が悪いのかい?」

「ヴァイス姉から、植林事業の手伝い頼まれてて・・」

「そう言う事なら仕方ないね。

君たちが調べてくれたおかげで時間的にかなり余裕が出来たから、遺跡の方の準備や冒険者ギルドの依頼をこなしているよ」


ヴァイスも二人のために、あの手この手と考えての事だ、無碍にしては申し訳ない。


「分かりました、明後日には行けると思います」

「楽しみにしていてね」


シュバルツは話の後、三人でゴルドの定食屋へ向かう。

シルヴィとロートの後姿を見ながら、二人のために何が出来るか思案を続けていた。





商業ギルドで、エクストラ級の鎚+1と言う微妙な武器を月会費の代わりとして差し出し、翌日は冒険者ギルドで薬草採取の依頼をこなしておく。


約束の日の朝、ノックする音で扉を開けて・・


「迎えに来たわ」


何故かヴァイスが外で待っていた。

とても嫌な予感がする。


「・・・どうしてヴァイスが此処に居るんだ?」

「二人から聞いたわ。しばらく休暇なんですってね? ちょっと手伝って欲しいのよ」

「いや、俺・・何の準備もして・・、飯もまだ・・」

「大丈夫よ、二、三日抜いても死なないわ。

トレジャーハンターとして、そういう機会もあるでしょうから良い訓練になるわね」

「そんな機会も訓練も遠慮した・・い」


ヴァイスに首根っこを掴まれて、植林地の方へと引き摺られていく。


途中でシルヴィとロートを見かけ、救いを求めようとするが目を逸らされる・・


「お姉ちゃん・・、やっぱりヴァイスお姉ちゃんに、シュバルツさん帰ってきたの言ったせいじゃない?」

「ち、ちょっと口が滑ったのよ」


植林のお手伝いに行った際、お昼の時間に思わずシュバルツの帰還をしゃべったのだ。

その時のヴァイスの嬉しそうな笑顔が鮮明に思い出される。


「こんな事になるとは思いもしなかったし」

「しばらくは無理かな?」

「うーん、晩御飯までに何とかするんじゃない?」

「出直した方が良いよね?」

「うん、そうだね」


町の南の門から出て行く二人を見送って、一度実家の中古屋へ戻る事にする。




夕暮れ近くになると、中古屋にシュバルツが倒れこんでくる。


「た、助けてくれ・・、シルヴィ、ロート」


ヴァイスの所でさぞかしこき使われたのだろう、ボロボロのシュバルツである。


「こ、殺される・・」


以前にもあった状況に、二人は遠くを見る様な目になる。


「ヴァイス姉の所に行っただけでしょう」

「そうそう。どうしてそんな風に言うの?」


ヴァイスの植林の手伝いを経験している二人には、全く理解できないようだ。


「朝一番で、ご飯も食べずにつれて行かれたんだ」

「ふむふむ」

「ご飯の事聞いたら、働かざる者食うべからずって言葉知っているかしら? 働く前から食う事を言うなって怒られた」

「・・・・えっ?」

「お昼になったら、何も持って来てないの? 馬鹿じゃないって何も貰えなかった」

「そ、それは・・」

「せめて水をと言ったら、苗に撒く大切な水を? 馬鹿言ってんじゃないって言われた」

「「・・・」」


余りの出来事に、シルヴィとロートもかなり引き気味だ。


「で、でも苗を植えただけでしょ?」

「私たちも昨日はそうだったんだし?」

「穴掘り得意でしょって、木の根の掘り起こしをさせられた」


植林事業は当然の如く、木を切り倒した後の木の根の掘り起こしも必要になる。


「シュバルツさん、ヴァイスお姉ちゃんを怒らせるようなことしたのかな?」

「うーん、どうだろう?」


浴びるように水を飲むシュバルツに聞こえない様、姉妹はコソコソと耳打ちをする。






人心地ついたシュバルツは次の候補地の話をしている頃、職業ギルドの一室では、グリューナと上司が極秘の話し合いを行っていた。


「今回も掘り起こしてきたか」

「はい」

「ダンジョン跡にはアイテムが眠っていると考えて間違いないだろう」

「そうですね。とは言えかなりの広範囲と深さを調査となると、とても一人で出来るものではないと思われますが?」


結果は見えているが、方法や技術は各々が秘匿しているため知りえないのだ。


「可能性としては、スキルだろうな」

「スキルですか? どのような?」

「推測でしかないが、狩人が持つ探知系か・・」

「生きている物ではなく、且つ地中をですか?」

「だから推測だ」


そんなスキル見た事も聞いた事もない。

が、無いとは言えず、シュバルツの成果につながっている事は十分に考えられる。


「如何いたしますか?」

「ん? スキルは冒険者にとって死活問題だ。聞き出す訳にはいかんだろう」

「勿論です」


ギルド自体が情報保護を公にする立場上、そんな事は出来ない。

ただシュバルツの能力によっては、経済的な問題に発展するかもしれない。


「まぁシュバルツ一人の能力だろうし、大事にはならんだろうよ」

「そうでしょうか?」

「ランクアップはさせろ。アイテムの流通の監視がやりやすい」

「畏まりました」






ヴァイスの植林事業の手伝いと言う名の地獄から、そろそろダンジョンの探索がー、と抜け出す。

背後でチッと言う舌打ちを聞きながら、商業ギルドへと逃げ込む。


「何があったんです、シュバルツさん」

「ちょ、ちょっと地獄の鬼から逃げ出してきまして」

「え? 地獄? 鬼?」

「気にしないで下さい」


息を整えながら、苦笑いで手を振る。


「ちょうど良いです。シュバルツさんにご相談がありまして」

「相談・・ですか? 何でしょう」

「商業ギルドのランクアップをされては如何かと思いまして」

「あぁ、ランクアップですか」


商業ギルドの登録する際に聞いた、ランクアップのメリットを思い出す。


「正直トレジャーハンターにメリットが無いんですけど」

「それは重々承知しています。しかしですね、ブロンズランクの人が毎月金貨200枚も納められていると言う状況が監査に引っ掛かるのですよ」

「監査に? どうしてです?」

「ワザと上げていないのではないかとか、何か問題があるのかと言って」

「なる程、そう言った誤解が出てきているのですか」

「ギルドの内輪の事に申し訳ありません」


確かに納めている会費とランクが合わなければチェックに引っ掛かるだろう。

シュバルツが理解を示すと、恐縮するグリューナ。


「月会費が金貨1枚でゴールドランクでしたっけ?」

「はい、金貨200枚ですとプラチナランク以上になってもおかしくありません」

「うーん、トレジャーハンターは運の要素が大きく、今の状況が続けられる保証がありません」

「ご心配は分かります」

「申し訳ありませんが、今回はご遠慮させていただきたいのですが・・」

「残念ですが仕方ありませんね」


グリューナも無理強いはしてこないのでホッとする・・間もなく、次の一手を打ってくる。


「今の生活に不安があるのでしたら、成功している間に何か商売を始められては如何ですか?」

「・・はぁ!?」

「よろしいですか? トレジャーハンターと言う職に不安を感じるのは当然です。

ならばこそ何かしらの定期的な収入を得られる方法を手に入れておくべきではありませんか?」

「そ、そうかもしれません」


『トレジャーメーカー』を秘密にしている以上、否定をする訳にはいかない。


「し、しかし、商いをした事のない人間が、そう簡単に商売を始められるとは思えないのですが・・」

「勿論、その辺は商業ギルドがバックアップします」

「・・分かりました。即答はできませんが、何かアイデアが浮かびましたら相談させて下さい」

「こちらでも良い物件がありましたらご紹介させていただきます。買収をしてシュバルツさんが資金の支援をするという形にするのが良いと思います」

「お手柔らかにお願いします」

「お任せ下さい」


シュバルツは厄介事に巻き込まれたと、グリューナに気付かれない様に溜息を吐く。


実は商業ギルドとて、そうそう良い物件などあるはずが無い。

潰れかけている商売は資金よりも、人々のニーズと合っていない事の方が大きい。

流石にそんな物件は紹介は出来る訳が無い。


今の時点ではランクアップの言質を取り付けただけでも良しとする。






様々な出来事で成り立つ日常と言う生活を過ごし、このまま一年と言う時間が経てば遺跡に向かう・・


「遺跡探査のシュミレーションをしてみましょう」


・・はずだったシュバルツは、ロートの一言でとんでもない事態に巻き込まれる。





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