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シルヴィとロート

【シルヴィとロート】


トレジャーハンターとして、1年間と言う経験を積む期間を実績の条件を追加した。


本音としては、エクストラ級とはいえ自作自演による持ち込みを疑われないための伏線だった訳だが、グリューナと接した感じでは疑われている様子はなかった。


もっとも直接会った事の無い上司とやらは分からないが・・


「まあ先日かっこいい事を言った訳ですが、事の顛末としてはこんな感じな訳です」

「シルヴィ、ロート姉妹の闖入ですか・・、困りましたね」


計3回の攻略済みダンジョンの探索の出来事を正直に話すと、グリューナは苦笑いを返してくる。


「正直な所、遺跡探索がこんな温さで良いのか? と思って、3回の探索の結果としてはやばいんじゃね? と・・」

「1年間の延長に行きついた訳ですね」

「そう言う事です。

実際に遺跡探索には、ヴュステの町での準備と言うのが不可欠になってくるでしょう?」


遺跡のある島々への玄関口である、最南の町の名前を挙げる。


「その通りですね」

「少なくとも他の町の近くにあるダンジョン跡に行ってみなくては、と考えた次第です」

「姉妹の突撃もありえませんしね」


グリューナの言葉に、今度はシュバルツが苦笑いで返す。




商業ギルドに赴いたのは、主都や他の町の情報を得るためだ。

実は他の町へ行った方が良いと考えた理由は、もう一つあった。


シルヴィとロートをいつもの様に食事に誘い、いつもの様に送り届けた後、修道院では無く再びゴルドの定食屋へと向かう。


しばらくするとヴァイスが姿を現す。


「何かしら? うら若き乙女を、こんな夜遅い時間に呼び出すなんて」

「確かに・・、迎えに行けば良かったな。すまん」

「次はそうしてよね」


素直に謝ると、毒気を抜かれた様に肩を竦め話の先を促す。


「それで何な訳?」

「トレジャーハンティングに行った事を知っているな?」

「馬鹿にしている訳? 奢ってもらった事ぐらい覚えているわよ」

「違う、違わなくないか・・? そうじゃなくてその情報を誰から手に入れた?」

「勿論、シルヴィとロートからよ?」


何を今更、という顔をして答えてくる。


「どういう風に?」

「んー・・、三か所に行って・・、一つ目はピクニック、二つ目はお昼のデリバリで・・、三つ目は何も出来なかったって感じかな」


それがどうしたのと言う表情を浮かべると、近くで聞いていたゴルドが驚きの声を上げる。


「それは本当か?」

「ゴルドさんもおかしいと感じるか」

「おかしいも何も・・、不味いだろう」

「えっー? 二人とも何がおかしくて不味いの?」


鈍い男組が気が付いて、自分が気が付かないのが悔しそうである。


「ヴァイス。15歳と12歳の娘が、知らない人の職場に来るものか?

シルヴィとロートはそんな事を、ヴァイスにも行った事があるのか?」

「・・・えーっと」


ヴァイスが記憶を探る様に視線を彷徨わせ、シュバルツとゴルドの危惧している事態を理解する。


「シュバルツさんの事を、二人が好きになった!?」

「ならば良いんだが・・」

「冗談よ・・。依存ね」


深い溜息を吐くと、困ったわねと言う顔になる。


「俺は子供どころか、結婚も女性と付き合った事も無くて、あの年頃の娘たちの気持ちに疎くてな・・」

「両親を亡くし、姉妹二人で支え合ってきた生活に、年上で自分たちを気にかけてくれる」


シュバルツの問いかけに、ヴァイスが重ねるように答える。


「あの年頃の子どもたちが大人に甘えるのは仕方ないと思っていたが・・」

「緊張の糸が切れて、自分で自分がどうしょうもない状況かしらね」


二人が顔を見合わせると、お互いががっくりと項垂れる。


「すまん、俺の責任だ」

「周りの大人が気付かなかったのだから同罪よ」


シュバルツの言葉をヴァイスが否定し、ゴルドがそれに同意の頷きをする。


「二人の事を考えると、距離のある町へ行った方が良いのではと考えているんだ」

「居なくなる事、別れる事に、二人の心が耐えられるか心配になったのね」

「ああ、それでヴァイスに来てもらった次第だ」

「呼び出した用件は理解したわ。

ちなみに連れて行くのは駄目なのかしら? お・に・い・ちゃ・ん?」


お兄ちゃん? 思わず身震いして渋い顔になる。


「冗談を言っている場合ではないぞ。そんな事をするくらいなら最初から相談なんかするか!」

「そりゃそうだよね」

「悪くないな」

「「ちょ、ちょっとゴルドさん」」


シュバルツとヴァイスの冗談を真に受けたのか、ゴルドがそう答える。


「特にロートは人の来ない店番だ。一人ぼっちで色々な事を考えてしまうだろう」

「だからと言って中古屋を閉めさせる訳には・・」


店の問題だけでは無い、二人の人生を背負う事になるかもしれない。


「だから何時も一緒に居ると感じさせれば良いと思う」

「何時も・・?」

「・・一緒に?」


思わずシュバルツとヴァイスは顔を見合わせ聞き直す。


「シュバルツさんの、トレジャーハンターの仕事の一部を任せたらどうだ?」

「なる程・・」

「・・そう言う事ね」


ふたりは視線をそれぞれ巡らせ、ゴルドの提案の意味を悟る。


「シュバルツさんの手助けをしていると感じれば、無理に付いて来ないかもしれない」

「二人の依存の解決には・・」

「先ずは二人の自立していた時間に戻すよう努力しましょう」

「自立すれば依存から抜け出せるかもしない・・か」


3人とも年頃の娘の機微を見定めるには、若干経験が足りない。

自立を促しながら、お互いの距離を徐々に元の位置に戻すようにする事となった。


「何をさせたら良いんだろう?」

「困っている事は無いの?」

「沢山あるぞ。一人でやってるんだ、そもそも人手が足らん」

「そこを二人にやって貰えんのか?」

「うーん、上手くいくだろうか」

「失敗したら別の手段を考えましょう」

「そうだな・・。分からん以上やってみるしかないな」


シルヴィとロートの自立を考えて、依頼の内容を整えていく。






今の今までシュバルツは、中古屋へ夜が明けてすぐに押し掛けた事は無い。


シルヴィとロートに準備が出来たら、修道院の屋根裏部屋に来て欲しいと伝えて来た。


「一体なんだろうね、お姉ちゃん?」

「さあ? 寝ぼけたんじゃないなら良いけど」


二人は珍しさもあって、ご機嫌で出かける。


修道院に着くとシスターたちに挨拶しながら屋根裏部屋へと向かう。


「おはようございます、シュバルツさん」

「おはよう、来てやったわよ」

「二人とも入ってくれ」


シュバルツの言葉に促されて、屋根裏部屋へと入っていく。


「朝早くから呼び出して、悪かったな二人とも」

「いえいえ」

「ふーん、寝ぼけた訳じゃなさそうね」

「シルヴィは俺の事を何だと思っているのか、今度じっくり話し合おうな」


苦笑いをしながらも睨むシュバルツの視線を、シレっと交わす。




屋根裏部屋は個人使用のため、椅子など無いので二人をベッドの上に座らせる。


「さて、二人をわざわざ朝早く呼び出したのはお願いがあるからだ」

「「お願い?」」


シュバルツは今まで、シルヴィにしろロートにしろお願いをされた事は無い。


「何なら指名依頼と言う形をとっても良い」

「「・・・」」


二人は思わず顔を見合わせて頷く。

シュバルツの真剣な表情に姿勢を正す。


「お話を伺っても?」

「勿論だ」


咳払いを一つ入れて二人に頼みごとを話し始める。


「正直、三回の攻略済みダンジョンの探索は芳しい結果ではなかった」


何となく察して二人も、面と向かって言われるとショックを隠せない。


「ここで新たに一から攻略済みダンジョンを調べると、かなりの時間がかかってしまう」

「「・・・」」


それはそうだろう、二人は黙って頷く。


「俺一人ではどうしても限界がある。

そこで探索に行っている間に、二人には情報を集めて欲しい」


シュバルツのトレジャーハンティングの手伝いをする依頼の様だ。


「どんな情報ですか?」

「次に向かうダンジョン跡の情報だ」

「「なっ!?」」


二人はとんでもない大役を任される事になったと緊張する。


情報の正確性によって、成否が変わってしまう。

つまり二人の責任で、シュバルツを失敗させてしまうのだ。


「と言いたい所だが、最終判断は俺がするからその前段階までだな」

「「ほっ・・」」


二人とも緊張で止めていた息を吐き出す。


「例えばどんな情報が必要になりますか?」

「これから他の町の近くの攻略済みダンジョンへ向かう予定だから、町とその周辺の情報は必須だな」

「各町の情報ね」

「出来る事なら開拓計画が分かれば非常に助かる。無駄足を踏まなくて済むからな」

「前に問題になった件ですね」


二人はそれぞれが使える伝手で、どうやったら情報が得られるか、頭の中で目まぐるしく考える。


「続いて攻略済みダンジョンの中から、発見日と攻略日の間が出来る限り短くて、出来る限り階層が深い場所を見つける」

「攻略済みダンジョン選別の最初に取った手段よね」

「その通り」

「町情報と攻略済みダンジョン情報を、擦り合わせて候補を出せばいいんですか?」

「そこまでやって貰えれば非常に助かる。・・が、無理はしなくて良いよ」


胸の前でグッと力こぶしを作るロートに、シュバルツのフォローは聞こえていない。


「次に大切なのがパーティの情報だ」

「パーティって?」

「最短でダンジョンを攻略したパーティの事だ。

ギルドでは個人情報並みに秘匿していて、決して教えてくれないんだ」

「へぇー、そうなんですか」

「ちょっと、そんなのどうやって調べるのよ!?」


シュバルツが失敗している事を、どうやって行っていいか分からず声を荒げる。


「ギルドは秘匿していても、冒険者同士の噂話なら?」

「・・あぁ、なる程」


ギルドが正確な情報を教えるのが駄目でも、知っている、見た事がある、以前一緒だったと言った小さな噂話なら集められるかもしれない。


「全くと言っていい程、そんな噂話を集めている時間的余裕は無いんだ」

「そりゃそうよね」


ダンジョンを決めるだけでも、かなりの時間を取られるのは容易に想像できる。

この上パーティに関する噂話を聞いて回るなんて正気の沙汰ではない。


「では、シュバルツさんからの依頼を纏めますと、


1つ目は、他の町とその周辺、開拓計画の情報収集

2つ目は、攻略済みダンジョン情報の収集

3つ目は、パーティに関する噂話の収集


となりますが、大丈夫ですか?」

「うん、その通りだよ。

俺が攻略済みダンジョンから戻ってきたら、二人の情報を元に次の候補地を最終決定する」


二人の表情を見ればやる気満々、すぐにでも動き出しそうな位ウズウズしている。


「間違いなく時間の短縮になる」

「「やります!」」


自分たちの働きがシュバルツの役に立つのだ、右手を挙げて即答する。


「ただしロート」

「はい」

「冒険者ギルドの資料を見るためには、冒険者登録をする必要があるかもしれないが・・」

「必要なら登録します」

「すまない」


彼女の即決に頭を下げる。


「いえいえ、とんでもないです。頭を上げて下さい」


シュバルツは出来る限り、二人に迷惑をかけて申し訳ないという低姿勢で臨む。


「依頼料だが・・」

「依頼料だなんて、ねぇ、お姉ちゃん」

「まあ要らないかな?」


二人して両手を体の前で振っていらないアピールをする。


「いや受け取ってもらう。これは君たちが手に入れる情報の信頼度でもある」


シュバルツも二人が手を抜くとは思わないし、二人も手を抜くつもりもないが、金額に見合った仕事をする、責任を取ると言う事になる。


「「分かりました」」


シルヴィもロートも真剣な表情で了承する。

それを見てシュバルツは笑顔で頷く。


「依頼料は銀貨4枚だな」

「そ、それは貰い過ぎじゃ・・」

「ちょ、ちょっと多すぎ・・」

「俺が情報収集に一人で掛けられる時間は2週間が限界なんだ。

故に宿代が1泊大銅貨2枚として、2週間で銀貨4枚と妥当なんだ」


シルヴィとロートとゆっくりと視線を合わせる。


「君たちの仕入れる情報はそれだけの価値がある、価値ある物にして欲しい」

「「はい!」」


二人の返事を聞いて頷く。

そしてもう一つと追加する。


「前にも言ったけど、中古屋も薬草採取も大切な仕事ではある。蔑にされては本末転倒だからね」

「分かってる」

「分かってます」


言われる事は分かっていましたと言ったドヤ顔で約束してくれる。


「本当に本当だぞ?」


しつこく繰り返すシュバルツに、少女たちの頬は膨らんでいった。





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