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ダンジョンの成果

【ダンジョンの成果】


三番目のダンジョンの期限、つまり商業ギルドに提出してある活動計画の期日を迎える。

成功失敗に関係なく、先ずは無事に戻ると言う事が試される。


「全てのダンジョン跡でアイテムを見つけ出せなかった訳だが、もうすぐ期日を迎えるし、どうしたものか・・」


穴掘り系の魔法では、『トレジャーメーカー』に付随するため、『トレジャーメーカー』で作られたアイテムには効果を及ぼさなかった。

しかしそれ以外の物は、ゴッソリスッパリと無くなってしまい、今後ダンジョン跡からアイテムを見つけられる可能性は現時点でゼロに近くなった。



では手持ちのアイテムを使って、運良く見つけられたと言って信じてもらえるか?


「1回限りであれば疑われるだろうが、それが毎回だとしたら?」


トレジャーハンターを甘く見ていたと、他の町も視野に入れて、しばらくの間ダンジョン跡巡りを行う。


「幾らギルドが疑うとしても、毎回エクストラ級を提出されれば、個人購入もしくは所持品から補填しているとは考えないんじゃないだろうか?」


もしかしたらファイン級は購入品と思われると思ってのエクストラ級という考えである。


その内に運良くダンジョン産のアイテムを掘りあてる可能性だって・・あって欲しい。


「最初は疑われるのを覚悟で、今後の計画を練っておくか」


期日になると直ぐに撤収して、ズューデンの町へと帰還する。






ズゥーデンの町に着くと、先ず中古屋へと向かう。


カランコロン‐


「いらっしゃ・・、お帰りなさい、シュバルツさん!」

「お帰り!」


ロートが飛びついて来ると、同時に騒ぎを聞き付けたシルヴィも出てきて飛びついて来る。


「二人ともあっちこっちに報告に行かなくちゃいけないから」


やんわりと二人を引き剥がす。


「うん、分かった!」

「戻ってきたら、お祝いだ!」


二人は急いでゴルドの定食屋へ行く支度を始める。


「いや、少し時間が・・、全く聞いていないな」


何が嬉しいのか分からないぐらい、大騒ぎの二人に苦笑いで溜息を吐く。




次に修道院に向かい、院長先生に無事戻ってきた事を報告する。


「ご無事で何よりでした」

「ご心配おかけしました。まだ報告に行かなければならない所がありますので。

まずは帰還の挨拶だけと思いまして」

「忙しい中わざわざ・・」


忙しいのは院長先生も同じだろうが、自分のために時間を取ってくれた。




最後に商業ギルドへと赴く。


「お帰りなさい、シュバルツさん。ご無事の帰還、心からお喜び申し上げます」


いつものグリューナが笑顔で迎えてくれる。

反対にシュバルツの表情は優れない。


グリューナはすぐに失敗、何も見つけられなかった悟る。

当たり前である。そう簡単に成功するならば、誰も彼もトレジャーハンターになるだろう。


失敗の恥ずかしさのあまり逃げてしまう者もいるのだ。

こうやって結果報告に来ること自体が成功であると、彼女はフォローのために心の準備をする。


そんな中シュバルツが口火を切る。


「申し訳ありませんが、実績の条件を少し変更したく恥を忍んでお願いに来ました」


グリューナも何かしらアイテムを見つけるまでと言う条件は、流石に厳しいと思っている。


「どの様にでしょうか?」

「トレジャーハンターと言う職業を甘く見ていました。

ダンジョン跡探索の場合は成否に関係なく、少なくとも1年間は取り組む様にしていただきたい」

「・・・はぁ!?」


彼女は唖然とする。

条件を緩めるのではなく? 更に厳しく? 思わず声が出てしまう。


「理由をお伺いしても?」

「先ほども言いましたが、トレジャーハンティングを甘く見ていました。

実際に活動してみて、余りにも経験不足であることを痛感しました」

「ふむふむ」

「考えてみれば、冒険者ギルドで道具の選択の際にも、自分のスタイルを知らなくては駄目だと、野営の経験を積むようにアドバイスを受けました」

「なる程」


野営の経験を積む・・、実際に野宿をしたのだろう。

この行動は非常に正しい。正に師匠と同伴のトレジャーハントの意義からも正解である。


「そこで1回程度でトレジャーハンティングは理解できないと判断しました」

「それで1年と言う条件が必要と感じたのですね」

「その通りです」


がむしゃらに一つの事に突き進む勇気も時には必要だが、恥を忍んで戻る勇気は常に必要である。


冒険者にしろ、商人にしろ、このような人物は必ず大成する。

いや寧ろ大成出来るように支援できないで何のギルドか。


「分かりました。条件を緩めるのではなく厳しくする以上、ギルドとしては特に文句も反対もありません」

「ありがとうございます。つきましては・・」


そう言うとグリューナの前にアイテムを並べて行く。


「これ・・はっ!?」

「ダンジョンから発掘されたアイテムです」

「ちょ、ちょっと待って下さい!? それなら成功じゃないですか! わざわざ1年の延長なんて必要・・」

「逆です、逆なんです」

「えっ!? 逆?」

「成功したからこそ必要と感じたのです」

「経験不足ですか?」

「そうです」


成功しているなら遺跡に行きたいであろう。

しかし簡単ではない苦労をしたのだ。だからこその1年という期間なのだろう。


「分かりました」


持ち込み品は4点で、ポーションが2種類、ネックレスが1つ、爪装備が1つである。


最初にポーションを鑑定する。


「えっ!? LP全回復ポーション!? こっちはVP定期回復ポーション!? どっちもエクストラ級じゃないですか!?」

「後2本分ほどあったのですが割れていまして。無事だったのがその2本になります」


LPは生命力、VPは技力であり、全回復は文字通り一発で回復させる。定期回復は一定期間回復し続ける効果がある。

割れていた2本は反対バージョンだった可能性が高い。


続いてネックレスを手に取る。


「ネックレスに付いているのはエメラルドで間違いありませんね。

これだけの大粒の上、質が良ければエクストラ級になりますよ・・って、オプションが+1? 混乱回復!?」


オプションが付与されていることにも驚くが、効果そのものにも驚きである。


混乱はボスや上級モンスターが持っている、魅了と並んで味方の行動を阻害する。

普段は殆ど使う事は無いが、混乱を持っているモンスターを相手にする場合には必須であり、金貨500枚でも買い手が付くかもしれない。


「シュバルツさん? 前にもお話ししましたが商業ギルドでは品質価値でしか買い取りは致しませんよ」

「ええ、覚えています」

「・・分かりました。査定を続けますね」


シュバルツの笑顔にグリューナは溜息を吐き、最後のアイテムを手にする。


「レニーム鋼ですか、エクストラ級ですね。オプションが+2・・」


そのまま卒倒しそうになるのを見て、シュバルツは慌てて声をかける。


「大丈夫ですか?」

「ええ、すみません。お恥ずかしい所をお見せしました」


付与されているのが回避UPとクリティカルUPである。


爪装備は武闘家などの使用者を選んでしまう。

ダンジョン産である以上、必ず欲しいものが出ると言う事はない。

こればかりは仕方が無く極端に高値にはならないが、条件があう人には喉から手が出る逸品だろう。


「全て買い取りですと金貨800枚になりますが・・、よろしいですか?」


物によっては直接相手に売った方が遥かに利益が出るのは間違いないので、思わず確認してしまう。


「そうですね・・、グリューナさんとしてはこの中から一つ選ぶとしたらどれですか?」


この質問は非常に迷う・・

ポーションはオプションが無く金貨100枚だが、必ず売れる。

時と場所を選ぶが混乱回復のエメラルドのネックレスも売れるだろう。

最も高い爪装備はそうそう需要があるとは言えない。


「私でしたらネックレスでしょうね」


今回の4点では一番高値が付くであろうと判断する。


「分かりました。ネックレスを月会費の代わりに納めます。残りを買い取っていただけますか?」

「・・・・はぁ!? 何をおっしゃっているのですか? シュバルツさんはブロンズランクで、納めるべき月会費は大銅貨1枚ですよ?」


例えゴールドランクであっても25年分である。

シュバルツの言っている意味が全く分からなかった。


「ええ、覚えていますよ。これから先支払えるかどうか分かりませんので、先払いと言う事で」

「いやいやいやいや、おかしいですって! 何代先の分まで支払うつもりですか!?」

「これからもよろしくお願いします、と言う意味も含まれているとご理解下さい」

「それにしても・・」


心付け程度であればコミュニケーションを円滑に進めるために多少は認められる。

しかし第三者に影響を及ぼす様な賄賂は禁止されている。


「まずは上司に相談させて下さい」

「どうぞ」


自分一人では判断できないと上司の所へ、今まであった事を報告に行く。




上司は今回持ち込まれた4点を眺め、ネックレスを弄ぶ。


「ギルドの買い取りで金貨200枚をポンと出すとはな。

賄賂にしても随分と我らが商業ギルドを評価してくれるもんだな」

「如何いたしましょう?」

「ん? 折角シュバルツ本人が月会費と言っているんだ、快く受け取っておけ」

「よろしいので?」

「構わん。まぁ月会費は毎月支払い済み扱いで処理しておけよ」

「分かりました」


これくらいの労力は労力の内に入らない。


「もしシュバルツから協力要請があれば、可能な限り最優先で処理しろ」

「なっ!?」


ケチで有名な上司が随分と気前のいい事である。

とは言え、締める所は締め、ここぞと言う勝負所では一発を決めてきたのだから、チャンスを敏感に嗅ぎ取ったのだろう。




シュバルツの所へ戻り、上司との相談の結果を伝える。


「上司から了承が得られまして、月会費として受け取ります」

「ありがとうございます」


月会費を納める時に礼を言われたのは、初めてかもしれない。


「それからポーションと爪装備の代金がこちらになります」


シュバルツの前に革袋が置かれる。


「あー、そっか・・。困ったな」

「何か問題でも?」

「いや、前回の買い取りの代金も残っておりまして、手元にこれだけの金額を置いておくのも不安で・・」

「もっともですね。ギルドにお預けになりますか?」

「えっ!? 預かってもらえるんですか?」

「ええ。商業ギルドでも冒険者ギルドでも行っていますよ。どの町でも同じギルドなら引き出し可能です。金額によってはお時間は頂くと思いますが」

「知りませんでした。是非お願いします。ついでに前回の分も」


前回の代金の残りの金貨300枚を預けてしまう。


『倉庫』の能力も今の時点では秘密にしている以上、このようなシステムがあるであれば、どんどん活用すべきである。


改めてグリューナに礼を言って、商業ギルドを後にする。




少し遅くなったが、中古屋に戻ると何故かヴァイスを含めた3人が手ぐすねを引いて待っていた。


ゴルドの定食屋ではシルヴィとロート、ヴァイスに質問攻めになりながら、久しぶりの4人での食事を楽しむ。

ゴルドも無事帰還のお祝いと、特別料理を振舞ってくれた。




3人を送り届けて、修道院に戻ると遅い時間であったが院長先生に面会を求める。


「どうしたのですか、シュバルツさん?」

「遅い時間に申し訳ありません」


そう言うと懐から金貨を1枚、院長先生の方へと差し出す。


「今回のトレジャーハンティングで得られた利益からです」

「お待ちください! これは受け取れません。ただでさえ多くの寄付と頂いていてこれ以上は・・」

「修道院が受け入れてくれたからこそ、安心してトレジャーハンターとしての務めを果たせるのです。家賃を含めた感謝の気持ちです」


ふたりはしばらくの間、視線を交わすと院長先生は深く溜息を吐き頭を下げる。


「ありがとうございます。快く受け取らせていただきます」

「これからもよろしくお願いします」


シュバルツも頭を下げる。





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