ダンジョン跡巡り
【ダンジョン跡巡り】
トレジャーハンターになるために、色々な人々の助けを借り、
「♪〜♪〜、♪〜♪〜」
様々な事を経験し、濃厚な時間を経て、
「「♪♪〜、♪〜〜♪♪〜」」
トレジャーハンターとして旅に出た。
少しぐらい鼻歌が出たとしても罰は当たらないだろう・・
「「♪♪〜♪〜〜」」
『トレジャーメーカー』の秘密を守るための一人旅である。
「「♪〜♪〜」」
それなのに何故、鼻歌が二人分あるのだろうか?
「お姉ちゃん、ピクニックって久しぶりだよね」
「そうね」
「いや、ピクニックじゃないから! トレジャーハンターとして大切な初めての挑戦だから!」
楽しそうに鼻歌を歌いながら、先をとっとこと歩く姉妹に思わず半泣きで突っ込む。
「「そう?」」
シルヴィとロートが同時に不思議そうに首を傾げ疑問視してくる。
シュバルツは如何してこうなったのか思い返す。
確かロートにねだられて、トレジャーハンターの活動計画を見せた時の事・・
「シュバルツさん、この三つのポイントは上から順に回っていくの?」
「うん? ああ、そのつもりだ。スケジュールも、その様に商業ギルドへ提出しているからね」
「ふむふむ。お姉ちゃん、ここって」
「ん? なぁに? ははぁーん、なる程」
何か気になるのか、シルヴィとロートはとても熱心に目を通して、何やら話し合っていた。
旅立ちの朝、何故か姉妹揃って修道院の前で待っていた・・。何で?
商業ギルドなどから、主都から東西南北の町まで、距離にして徒歩8日と言う言葉で表わされている。
この8日とは休む事無くひたすら歩き続けるのではなく、昼間の時間を歩き、夜間はしっかり休んでと言う意味である。
冒険者ギルドの薬草採取などの依頼にある日帰りとは、日の出に出かけて、日の入りまでに戻ってこれる距離を指している。
薬草採取に掛ける時間と往復の時間の、どちらに重点を置くかによって距離が変わってくる。
シュバルツはトレジャーハンターとしての実績を得るために、調べ上げた情報から選んだ攻略済みダンジョンは三つ。
その内、一か所は正に日帰り圏内であり、もう一か所もお昼に何かを届けるのにちょうどいい距離であったのだ。
最初ロートは、シュバルツの事が気がかりでトレジャーハンターの活動計画を根掘り葉掘り聞いていた。
どうも近場であるらしいという事実に気付いた様で、姉のシルヴィと相談の上、ピクニック気分での参加となったのである。
「うむー、想像していたのと何か違うな・・」
「仕方無いんじゃない? 最初から躓いていた訳だし」
「そう言われるとそうなんだけど・・」
確かにシルヴィの指摘通りだ。
「いきなり何もかも自分一人でやらなくちゃいけない遺跡探索よりは、良かったんじゃない?」
「それはその通り・・、なんだがなぁー」
まあロートの言う通り経験など全くないのだ、とんでもない事になっただろう。
ダンジョン探索は遺跡に向かうための準備だと考えれば良い・・のか? 2人が居て?
いきなり遺跡に行けても、ポコポコとアーティファクトを見つけて、世に出して大丈夫かという問題が発生したに違いない。
トレジャーハンターの実績作りの準備に色々な事をしてきたが、それ自体とても有意義だった。
また『トレジャーメーカー』を、自由に使える環境が出来ただけも良しとすべきだ。
商業ギルドでグリューナに驚かれたが、これから先もアイテムを世に出して、どの位影響があるのかも探っていく必要がある。
しかし目的がずれている3人で、のどかに目的地に向かう。
しばらくすると、シュバルツに「この辺りだ」と言われた2人は、全くと言っていい程、今まで歩いて来た場所との違いが分からなかった。
「・・ここ?」
「そう・・、なるな」
「何にも無いねー。風景も全く一緒!」
ロートがあっちこっちを見渡しながら万歳をする。
「シュバルツさん・・」
「何だい、シルヴィ?」
「言い難いんだけど、私ここに薬草採取に来た事あるよ?」
「そうか・・」
すこーし先には森が見える。そこで珍しい薬草が採れるらしい。
来た道を振り返れば、すこーし先に畑が見える。
立っているのはその中間で開拓禁止区域であり、単なる草原であった。
ダンジョンが攻略されると、階層を維持できずにペチャンコになる。その分土地に大穴があく。これは攻略の証でもある。
不思議な事にしばらく経つと地面がせり上がってきて大穴が埋まる。
ダンジョンが階層を作る時に消えた分の土が戻ってきていると言われているが本当の所は分からない。
「此処を掘るの?」
「そうだな」
「ひたすらアイテムが出るまで?」
「そうだな」
「大丈夫そう?」
「そうだな」
「ダメみたいね」
「そうだな」
ロートの答えに同じ言葉を繰り返し返すシュバルツを見て、シルヴィも憐憫の情が湧く。
シュバルツ当人も流石に困惑状態である。
もう少しダンジョン跡らしい何かが残っていると考えていたのである。
茫然としていても何も始まらないと、シルヴィとロートはお昼の準備、シュバルツはテント設営などの野宿の準備に取り掛かる。
水場は少し先に畑がある以上、そう困りはしないだろう。
お昼のメニューはサンドイッチである。
サンドイッチと入っても、四角いパンでは無く、コッペパンの様なパンに、朝早く町を出る前に買っておいたおかずを、この場で挟んだだけの物である。
それらを三人で仲良く食べていると、シルヴィがとんでもない事を言い出す。
「シュバルツさん、明日何が良い?」
「・・あ、明日って?」
「明日もお弁当持って来てあげるから」
「うん! 私も一緒する!」
「・・・はぁ!?」
「まぁ、指名依頼の続き続き」
「いやいや、おかしいだろう!?」
パタパタと手を振るシルヴィと、何が良いかなーと悩んでいるロートに思わずツッコミを入れてしまう。
「「そう?」」
二人揃って首を傾げてくる姿に不条理な物を感じるが、説得は難しいと考える。
ならば・・
「事後とは言え依頼なのだから、依頼料と食費は支払う。これは譲れない」
「「はーい」」
「中古屋も大切な仕事だ。薬草採取も大切な依頼だ。蔑にしない事」
「「はーい」」
「まぁ、俺自身の経験を積むための訓練でもある事を理解して欲しい」
「「はーい」」
毎日ではなく、お互いやるべき事をやった上で遊びに?来る事で落ち着いた。
後片付けを済ませ、楽しそうにこれからの事を話す2人を見送る。
「しかし、どうやって、何からやっていったら良いんだ?」
最後にぐるーっとダンジョン跡の草原を見渡すと一人呟く。
今回は一応証人が二人いるので、形だけでも何か残す必要があるだろう。
「鉱物とか採掘する露天掘りは、一人じゃ不可能だろうし」
原始的な手法ではあるが、広範囲で探し物を行うには効率が悪すぎる。
「まあ適当に穴を掘っていけば、それらしく見えるだろう」
ダンジョンが何階層あっても、最終的に盛り上がるのだから掘る必要があるのは階層分の天井と言うか床の分の深さである。
「どの記録にも厚みは書いていないから想像だけど、俺の身長の半分程の厚みと考えて、10階層なら、大体5人分の深さを掘れば一応恰好は付くはずだよな?」
穴掘り魔法を使って、階段や小部屋、通路を組み合わせて、当初の目的の深さまで掘り進める。
「灯りの魔法もあるけど、今回は使い勝手を試す意味でもカンテラでいくか」
流石に太陽の光も弱くなり、灯りをどうするか悩み、何事も経験とカンテラを準備する。
「しかし何かしら出てきても良いと思うんだけど?」
此処まで掘り進めたが、アイテムはおろかダンジョンに関する物が何も出てこない。
「ふむ。先ずは『トレジャーメーカー』を発動させておいて、このダンジョンの期限までアイテムの入手を目指すとするか」
今回はランダムモードで『トレジャーメーカー』を発動しておく。
「二人には悪いけど、崩落の危険ありと言う事で立ち入りは禁止させてもらおう。
まあ、最初の階段ぐらいまでならいいか」
姉妹の襲撃に備えつつ、時間の許す限り穴掘り魔法で、あちらこちらを掘り進める。
二日後、つまり1日はシュバルツの説得通り、自宅や店、薬草採取に充てたのだろう。
「へぇー」
「すごーい」
危険と言ってあるので、二人とも覗き込むだけではある。
「何か出た?」
「いや、まだ出ない。と言っても2日掘っただけだからな」
「駄目なの?」
「少なくとも期限いっぱいまで掘って掘って掘りまくって出るかどうか・・」
「ふーん」
お昼はロート監修による屋台のおかず組み合わせサンドイッチである。
「アイテムはありそうなんですか?」
サンドイッチをほおばりながらロートが聞いてくる。
「俺はあると思っている」
「根拠ってあるの?」
「無い」
「うわぁ、ダメじゃん」
「トレジャーハンターってそういうもんだから」
「分かってるけど・・ねぇ」
シュバルツの考えと行動は理解できるが、流石に心配になってくる。
「根拠と言う程ではないけど、宝箱はダンジョンから持ち出せないが、アイテムは持ち出せているのが理由だね」
「どう言う事?」
「ダンジョンコアが破壊されても、今もアイテムは残っているだろう?」
「なる程・・ね」
アイテムに常にダンジョンの効果が及ぶとなれば、持ち出しは難しいだろうし、コアが壊されれば消えるはずである。
「それであると思うんだね」
「尤も、ポーションなんかの壊れやすい物は残骸しか無いかな」
「「確かに」」
「逆に金属製品は残っていると思う。ただ宝石は微妙かな・・」
「「宝石!」」
食後のまったりとした時間を、どんなアイテムが出るか和気あいあいと話して過ごす。
『トレジャーメーカー』の発動は既に終わっている。
しかしトレジャーハンターとしての実績は別である。
出来る事ならば本当にアイテムを発掘しておきたい所である。
「実際にアイテムが有るか無いかはかなり大きいよなぁ。
出ると分かればトレジャーハンター職の地位は一気に向上するし、『トレジャーメーカー』の使い勝手に変化が出るだろう」
例え宝箱の残骸でも良いのである。
何かしらダンジョン産と分かる物であれば大成功といえる。
期限一杯まで第一の目的地の発掘を行うが不発であった。
三人でお昼にロートお手製のサンドイッチを食べている時にシュバルツが切り出す。
「二人ともそろそろ期日が近い。このダンジョンは放棄して次の場所へ移ろうと思う」
「そうですか・・、仕方ありませんね」
「まぁ一発目から何か出たら、大騒ぎだったよ」
二人でシュバルツを慰めながら、次の場所について何やらゴニョゴニョ話している。
・・何となく既視感を感じるのは、気のせいであって欲しい。
「何時から移動始めるんですか?」
「次のダンジョン跡の距離からして、午後から撤収準備をして、明日の朝一には移動を開始すれば、日暮れまでに野営の準備まで行けるだろう」
「そうですか」
ロートは少し寂しそうに残念そうに言うが、シルヴィは何故かニコニコである。
第二の目的地に着いた次の日、正にお昼頃にシルヴィがやってきた・・
「シルヴィ。やっぱり二人して話してたのは・・」
「ごめん、本当に時間無いから。これロート謹製のお昼ご飯ね。じゃあ!」
一方的にしゃべって、一方的に荷物渡して、振り返り手を挙げて去っていく。
正に嵐の様だ・・
「日帰りギリギリなんだから、無茶をするなよ二人とも」
お弁当はとてもありがたいが、お父さん、二人がとても心配だよ。
律義な姉妹の事だ、一日はきちんと自分たちの事をするという約束は守る。
ならばシルヴィの強襲の二日後、即ち今日再び来る可能性は高い。
「何時でも来なさい。こっちの準備は万端だぞ」
来ると分かっていれば対応は出来る。
「今度は手ぶらでは帰らせないぞ」
シルヴィは穴の中を覗き込む余裕はない。
ならば一応アイテムを探しながら適当に掘っておいて、可能な限り珍しい薬草を採取する。
更には依頼料と食費をきちんと入れておく。
遠くにこちらに向かって、少し急いで来る人影を見つける。
「レディ・・、ゴォ!」
シュバルツは荷物を持って人影に向かって走り出す。
向こうも気付いた様だが、帰りの事を考えているのだろう同じ様には走ってこない。
ホンのわずかな差でしかないが、この差が明暗を分ける事もあるのだ。
「ずるーい!」
シルヴィの怒鳴り声が聞こえるが、そのまま彼女の手を取ってUターンさせ歩くスピードに戻す。
「ずるく無い、ずるいのはそっちだ」
息も切れ切れに何とか言葉を紡ぎだす。
「だって、驚かしたかったんだもん」
だもんじゃない、だもんじゃ。
「こっちも驚かすためにきっちり準備しておいたからな」
「うん? どう言う・・」
「まず荷物があるなら受け取ろう」
「うん、これ。お弁当ね」
「よし。こっちはこれを持って帰ってくれ」
「何?」
「説明している余裕は・・ない」
そのままシルヴィの背中を押し出す。
シルヴィも分かっているのか、一度振り返って手を挙げて帰っていく。
「・・俺は何をしているのだろう??」
ふとダンジョン跡に戻りながら、パンを頬張って首を傾げた。
このような日々を繰り返すが、二番目のダンジョン跡も不発に終わる。
シルヴィにダンジョンを今日移る事を伝えると、以前ロートがした様な、寂そうで残念そうな表情を浮かべる。
三番目のダンジョン跡は、日帰りでは無理な距離と言う事を承知しているのだろう。
何度も振り返り振り返り手を振るシルヴィを、何時までも見送る。
二番目を午後に撤収し、三番目のダンジョン跡に向かい明るい内に到着する。
ズューデンの町からは距離があるが、二番目のダンジョン跡からなら近いのだ。
「ふぅー。二人には感謝だったが、これからが本当のトレジャーハンティングだ」
日々の生活は朝起きると共に穴をひたすら掘り、夕暮れまで続く。
食事は保存用の硬いパンと干し肉である。
期限の半分を過ぎた頃、シュバルツの頭に疑問が過る。
「おかしくないか? これだけ掘って何も出てこないなんて・・。
単純に調べるポイントが悪い、もしくは運が悪いのか?
本当はダンジョンコアの破壊と一緒にアイテムも消失していたりして・・」
そして最悪の考えに辿り着いてしまう。
「もし、もしだぞ、穴掘り魔法によって土と一緒に消えている事は・・無いよな?
こればかりは検証のしよう・・・・がある!」
何故もっと早くに気付かなかったんだろうと、自分を責め立てる。
穴を掘ってアイテムを埋めて、穴掘り魔法を使う。この自作自演なら・・
「余計な影響を受けない様に、アイテムを埋める穴は自分の力が良いだろう」
少し離れて数か所の穴を自力で掘り始める。
「うーん、少し勿体ないが・・、今使えるアイテムはこれだよな」
手持ちで一番多いファイン級のポーションと、非常食の干し肉や乾パンを掘った穴に埋めていく。
念には念を入れてと翌日まで待つ事にする。
「それでは穴掘り魔法の検証始めまーす」
少し間抜けな感じで宣言すると、目印の付けた場所すべてに穴掘り魔法を発動し穴を開けて行く。
「なる程、効果は分かった。穴掘り系の魔法の使用は、たいへん危険という訳だ・・」
ファイン級のポーションを残して、すっぱりスッキリと無くなった穴を見つめて呟しかなかった。




