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敵は突然に

「んで、リグルス。お前の暴れたその宮殿ってのはこの都市の外れの郊外にある《鬼の館》って場所で合ってるか?」


「司令官、何故それを知ってるのですか!?」


「嗚呼、ニルヴァーナにある吸血鬼の住めるような場所といえばその辺しかあり得ないからな。この都市は、《元老院》様の作り上げた究極の人工太陽が宙に浮いて我々の街を照らしてくれている。

吸血鬼にはこの日差しは流石にきついだろ。まあ、魔人(デビル)になった元吸血鬼なら大丈夫なようだがな。

んでよ、この都市の地形的に光の届かない場所といえば《鬼の館》しか無いと思ってな。場所が分かったならさっさと行ーー」


司令官の見事な分析は、突如として落下してきた何かの轟音によって掻き消された。

辺りには突風が吹き起こり、砂嵐が視界を邪魔している。


「なんだよ・・・これっ!!」


突然の砂嵐に身を構えながら目に砂が入らないように手で遮った。

司令官へは幾多の斬撃と打撃が襲いかかってきたが彼はそれを華麗に全て避けて見せた。


「あはは、えへへ、うふふ、ふふふふ!笑えるわね、この私の暗瞬殺撃(ダーク・スフィア)を簡単に避けるなんて。話し中だったのにごめんねぇ〜?安心しなくても《鬼の館》には行かせないわよ。何故かは私がここであなた達、全員を仕留めるからよ〜ん♡」


砂嵐の中から現れたのは、露出度の高い全身黒の服を着ているダークで妖艶な雰囲気のお姉さんだった。

彼女の眼は右目と左目で色がそれぞれ違い、黒と赤。世に言うオッドアイというやつだ。


髪の色はどちらにも結びつかない、淡いオレンジ色で少女は何故かサディと同じ匂いがした。(サディ以外の五人の感想)



「突然過ぎて頭が追いつかないけど・・・なんかキャラ被りしてない?」


サディが砂嵐によってのクラクラする頭を両手で抑えながら、少女に文句をつけるように言葉をぶつけた。



「キャラ被りぃ〜?知らないわよ。貴女の都合なんて知らなぁ〜い。何でって、貴女も含めて全員、私に殺されちゃ・・・」


「だからそれは聞いたわよ!その上で私とキャラが被ってるわよね!って話をしてるの!私の押しは、あくまでか弱い女の子キャラってのがチームに一人いるから次に濃いキャラといえば、ドSって気がした!っていう作者さんのどうでもいい思考から来てるの!

分かる?あんたみたいなクズに私のキャラを取られてたまるもんですか!そんな黒の露出狂みたいな格好して誰を誘惑してんのよ!」


サディのマシンガントークに口を出せない、敵を入れた六人のメンバーは何だか呆れた様子でただただ、その光景を見ているしかなかった。


「つまり、私がドSぶりっ子ってキャラをやめればいいのね。分かったわよ。じゃあ、ぶりっ子可愛いキャラってことでこれからはしていくことにするわね」


((切り替え早っ!?))


あまりの切り替えの早さに悶絶した様子でやり取りを見守る五人のうち、司令官という男は半ば完全に呆れ果てていた。

自分のキャラくらい最初に決めておけとでも言いたげだ。



「えぇ〜っとぉ・・戦う前にぃ〜、名前を名乗らないってはぁ〜、なぁ〜んかぁ〜、非常識的だと思うのでぇ〜・・・私の名前をぉ〜・・・・ってダメに決まってんだろ!!気持ち悪すぎるわ!!キャラなんてどうでもいい、普通に私の話し方で行くから!!」


少女は、可愛い系ぶりっ子キャラの気持ち悪さを身を以て感じ、呆れかけているサディに向かって指をさしながら怒りをぶつけるように言った。


「んで、名前は?なんなの?豚?ゴミ?早く言いなさいよ。私の時間を無駄にするの?貴女みたいなゴミ如きが調子に乗るのも大概にしたらどうかしら?ほら、分かったならさっさと私の靴に服従のキスをなさい?豚ゴミ女!」


サディが追い打ちをかけるように自分の声で自分の本音(ドS)発言をすると、少女の怒りはたちまち怒りゲージを吹っ飛ばして額に血管を浮かび上がらせた。


「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!もぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!うるさいわねえええええええええ!!ちょっと黙ってなさいよおおおおお!!」


轟音のような叫び声は近くにいたサディの鼓膜を簡単にぶち破り、それだけで彼女の意識をぶっ飛ばした。

白目を剥いて、泡吹きながら仰向けに倒れていくサディを優しく受け止めたキルスは無言で戦いのコマに見えない完璧な位置に移動させ、持ち場についた。


「ごえ"ががれ"だがも"じれ"な"い"」


先程の叫びで完全に喉の声帯が壊れてしまったまだ名前のわからない少女は泣きながらマジックペンと自由帳の催促を司令官にし、司令官は本部に問い合わせて自由帳とマジックペンを至急で用意した。

戦っている場所が王宮前なので問い合わせというよりはパシリに近いものだ。


()←自由帳の中のセリフ


「(私の名前は、ミルニア。本名は諸事情で言えないんだけれど、さっきは轟音のような叫びをしちゃってごめんね。えーっと、取り敢えず、殺ろっか。因みに戦闘中はこの自由帳での会話はしないわよ?そんな早業・・私には出来ないわ。では・・始めましょう。)」


キュッキュッとマジックペンが自由帳の上を滑る音が聞こえなくなったかと思うと、少女は上の文章を自由帳に書いて見せてきた。

表情は・・泣いている。


「あ?一対一か?それともリンチしていいのか?」


司令官の問いかけに、自由帳のページを新しくして返答の文字を書いた文章を見せた。


「(一対一でも何でも構わないわ)」


「了解ー。んじゃ、自由帳とマジックペンを置いて戦闘しようぜ。俺の名前は司令官。よろしくな!」


((やっぱり、それなのかよ!わざと突っ込まなかったけど、司令官の名前って何!?教えてくれないところ、怪しすぎるよお?!))


キルスとエゼルは小声で口々に言い合った。上のは、二人の話をまとめた文章である。

勿論、"よろしく"に対する文章は返ってこない。その静けさがスタートの合図を切っているように思えたのか、気を失ってコマ外に居るサディを除く五人は戦闘態勢へ身構えた。


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