その名は、エゼル・シスタ
更新遅れてすいません。
「_____危ないッ!!」
闇も凍てつく咆哮が向かった先は、キルス、サディ、チトが居る地点。
スピノザは狡猾さを利用して、目の前にいる厄介な吸血鬼の弱点を引き出した。
彼が飛び出ようと地面を蹴るには時すでに遅し。
_____だが、彼がいるのを忘れてはいないか?
「俺を忘れてんじゃねええええええ!!」
咆哮を拳で受け止め、そのまま弾き返す。
シルバーのその所業は龍となったスピノザですら圧倒された。
「グォォオオオオオオオ!!」
「司令官んんん!
スピノザは俺が倒す!!
だから、ミストを!」
「わーったよ。
死ぬんじゃねえぞ!!」
シルバーはチトとサディ、キルスを連れてミストが飛んで行った方向へ走り出した。
「……チッ、龍化はダメか。
カッコウの的になっちゃうもんなー。
なら、こっちで倒してやる!!
来い、《残酷な龍の力よ、闇を受け入れ、混沌を支配せよ!!我こそはスピノザ・ディスカバリィ!!》!」
彼は人間の姿に戻ると、
二刀の剣を混沌に呑まれた闇の力で生成し、
目の前の吸血鬼に向けて矛先を放った。
「……もうお前の攻撃は見切ってんだよ!!
どんな攻撃をしてこようが俺には関係ねえ!」
紫色の光がスピノザの二刀の矛先へ纏い、
彼の動きを、速度を、威力を向上させる。
彼の止まらない剣戟を大剣一本で防いでいるリグルスはやれやれと呆れたように首を傾げた。
「だから言ったじゃねえか。
お前の攻撃はもう当たらない、見切ったぞ!ってよ。
……つまらねえ攻撃なんざ、
俺には通用しねえんだ!!」
スピノザの剣戟を受けたタイミングで剣を弾き、彼の身体に一瞬だけ隙を作る。
そう、リグルスはこの隙を簡単に逃すような輩ではない_____よって。
「吸血王よ!
この俺に父を超える最強の強さを寄越せ!!」
彼の一言は大剣に赤く強い光を纏わせた。
禍々しい血液のような吸血王は、スピノザの身体を真っ二つに斬るかのように振り下ろされる。
「龍の血液ってのは美味えのか?
俺の本質は吸血鬼でな、普段は血さえ飲まねえが今回は別だ!
テメェの血液、美味しくいただいてやんよ!」
振り下ろされた大剣が斬り裂いた時に生じる飛び散ったスピノザの血液は、空中で硬い剣のように形成されると再びスピノザの体内へとそのままの形で戻っていこう。
腕についた僅かな返り血を、ペロリと舌で舐め取ると彼の瞳は赤色に光った。
_____一方その頃、シルバー達は。
「ミスト、テメェ!
……最初っから裏切ってたのか!?」
「いたたた……!
ふんっ、当たり前じゃないのよ。
何で国家機密レベルの重罪を犯したヤツと仲良く出来るの?
私の出身地は涅槃じゃなくて、あの神國なんだよ?」
シルバーは戦慄した。
神國で起きた自分の失態を知っている人間がいたと。
もう十年前の話だ、それに神國の人々は滅びたと報告があった。
もう自分を恨むものはいない。
そう考えてきた。
_____のに!
「神國……でのコトをお前はなぜ知っている?!」
「何故って、私はあの日、あの場所に居たのよ?
貴方が神國を消滅させたあの日に」
彼女は怒りのこもった言葉をぶつけた。
「神國ってどこ……?」
チトが不安そうな言葉を紡いだ。
「この世代の子は知らないんじゃないかしら?
というか、そもそも黒闇が出来た理由も貴方への復讐のため、だしね」
そして彼女の口から明かされる衝撃の真実。
「黒闇の王は神國の出身者よ。
彼は8歳の時、自分の両親を貴方によって失っているわ。
妹は生き延びたって話だけれど」
「……だが、黒の王は俺とグレースが!」
「……倒したって言いたいんでしょうけど、それは二年前の話。
あの時だって、どういう倒した方をしたのだっけ?」
シルバーは思い出す。
あの日のことを。
黒の王を撃退した日のことを。
_____二年前。
涅槃郊外、鬼の館にて。
常に黒雲が空に纏わりつく、この場所は黒雲からの雷が激しく空を轟き、吹き荒れる崖下の津波によって、近隣からは危険な場所とされ、誰も近寄らなかった。
そんな場所に、黒い仮面を付けた白髪の男の子と、まだ涅槃総司令になる前のシルバーとグレースが相を交えていた。
「……黒の王、世界を消滅させるなどという無駄なことはよせ!」
シルバーが地面を強く蹴って、彼との間合いを詰めると力を込めた拳を放った。
「無駄なこと?
なら、お前は無駄なことをして、俺らの故郷を奪ったのか?
……巫山戯るな!!」
シルバーの全力にまで近い拳を片手で簡単に受け止めると、黒の王は逆に力を込めた拳を彼の腹部に放った。
「……ぐはっ!!!」
血の混じった唾液を吐きだして、彼は地面へ叩きつけられた。
腹部に大きな衝撃が当たったことで、肺は苦しそうに空気を吸い込もうとする。
「……そうだ。
お前を殺して、この世界も消滅させてやる。
そうすれば、俺の目的は達成する!!」
黒の王は高らかに叫び、シルバーとの間合いを一気に詰めると、黒い剣を生成し、首元にヤイバを振るおうと振りかざした。
「させるかっ!」
賺さず、グレースが空間を捻じ曲げて黒い剣をへし折ると、彼の腹部に蹴りを入れて、強引に間合いを取らせる。
「ちっ、邪魔だな!!
なら、これを食らって死ぬがいい!」
黒の王が両手を上に掲げると、彼の目の前に巨大な紫色の光を放った魔法陣が宙を浮くように烙印された。
「消滅魔法!
世界消滅波!」
彼の烙印した魔法陣からは凄まじい高出力の光線が解き放たれた。
極太の光線が通る場所は、空気も地面さえも消え去っていた。
「シルバー、アレをやるぞ!
まだ一度も試したことがないが、きっと俺らならできる!」
「ああ……やるっきゃねえ!!」
シルバーは立ち上がり、光線が動く光の速度よりも早い動きですんなり回避。
「空間魔法、分裂の段!」
彼が手でモノが裂けるような動きを取ると、黒の王がいる空間を捻じ曲げて、彼を拘束した。
空間ごと捻じ曲げられて仕舞えば、彼でさえも動くことはできない。
「……シルバァァァァ!!」
「わーってるよ。
この力よ轟け、縋るモノに一切の手助けなし、破壊すべきものは殺してやる!
俺の力の全てを受けてみろ!!!
破壊魔法!!
破滅の豪!
うおおおおおおおおおおおお!!」
_____これが最後。
彼の全力を灯した一撃は、身動きすら取れない黒の王の腹部へ強くめり込み、吹っ飛ばした。
この一撃はかつて一つの大都市を消滅させるに至ったレベルのもの。
グレースの空間を捻じ曲げて拘束する魔法ですら、"止めておくことができない"レベル。
腹部の臓器、骨、肉すらも破壊された黒の王は大きく吹っ飛んで、吹き荒れる津波の中へと落ちて行った。
シルバーとグレースはやり切った。
黒の王は破滅し、もう自分らに敵はいない。
過去のことは忘れよう。と。
そう、誓い合ったのだ。
_____そして現在に戻る。
「……あの時、確かに殺したはずだ。
アレで生きてるわけねえ!」
「でも、確認してないんでしょ?
黒の王の名前、知りたい?」
彼女は笑いながら告げてしまう。
この世界を壊し、消滅させたいと願う少年の名を。
「その名はね、エゼル・シスタ」
今日から本格的に連載復帰です!
仕事もだいぶ落ち着いて、自分の時間が作れるようになったので頑張りますよーっ!
また、多数のブクマと採点ありがとうございます!
これからもよらしくお願いします!
twitterの方に、チトとエゼルのイラストを投稿してます!気になる方は是非お願いします。
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@sirokurosan2580
今後とも、よろしくお願いします!




