表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/74

頼むよ、俺から出て行ってくれ!!

__________その頃。


「はあっ、はあっ……!!!

キリがねえ……!!


この人形、どんだけ!!」


シルバー達はまだ無限に増え続ける人形と格闘をしていた。

倒すコツは掴んだものの、一瞬で復活し、増えてくる人形を対処するのに精一杯でピエロ姿の男にまで攻撃がいかない。


すると、ティアはポケットから出した端末を指でタッチして、耳元にあてた。



「えっ……!?

王が…!?わ、分かったよ。


それじゃ、戻る!!

うん!!」


嬉しそうにしているティアを見つめるに、シルバーは嫌な予感を覚えていた。

王が?どうしたというのだろう。


黒の王はもうこの世にいない。

それは分かっていることなのに、不安が止まらないのだ。



「やったね、王が!!

んじゃ、君ら弱いから俺帰るね〜!


さよなら、シルバーさん?」


「お、おい!ちょっと待て!!」


ティアは時空の裂け目に混ざるように消えてしまった。

人形もその瞬間からはただの砂となって、地面に崩れて消えた。



「俺たちは時間稼ぎをさせられたのか!

クッソおおおお!!!


し、仕方ねえ。

エゼルは諦めて、スピノザのところに向かうぞ」


シルバーの決断を止めるものなど、誰一人としていなかった。

この場合でなら、リグルスもキルスも空気を読んだのだろう。


__________シルバー率いる隊は、隊長のエゼルを失ったまま、潜入捜査を続けることになった。




__________何処かの国のとある場所。

白く大きなタイルが幾つも幾つもあり、それぞれが発光して部屋の光を放ちあっている大きな部屋には、少し低い階段が用意され、その上には玉座に腰を下ろす、黒服のエゼルの姿があった。


彼の下には何億人という兵士が集い、

兵士長が前に立って、エゼルの姿を目視していた。



「アルハイト、兵士長は右から順に名乗るように言え。能力名と魔王武器の詳細もだ。」


「あっ、はい!!

お、お前ら、右から自己紹介だ!」


ビビっているアルハイトに、「ビビりすぎだろ」と一言入れたいメンバーが殆どだったが、王の命令は絶対。


一番右に立っているピエロの仮面を被った青年は、仮面を取りざまに微笑んで自己紹介を紡ごう。



「俺はティア・ロスティハーレ。

黒の王、エゼル様だから言いますが、

俺の旧姓はティア・アルカディナです」


顔の四分の三に大きな傷を残す、金髪の男の子は確かにエトにそっくりだった。

なら、何故彼は黒闇に入ったのか。


エゼルは理解していた。

当たり前とでもいうかのように。



「お前の魔王武器は、大地神(タイタン)だな。魔法は何を持っている?」


「よくご存知で。

俺は闇魔法の使い手です。


そこにいる道場着を着ているオッさんが俺の師匠です」


ティアの隣には道場着を着たスキンヘッドのオッさんが佇んでいた。

その存在だけで圧倒されるほどの威圧を持ち、生半可な敵であれば簡単に斬り伏せられそうな鋭い眼光を持っている。


その後も何名かの紹介が終わり、エゼルはアルハイトに深く感謝した。

自分が黒闇を離れてから一年近くの月日が経つのにも関わらず、組織を守り、増やし、黒闇という組織を大きくしてくれたことを。



「黒闇の存在理由は、

世界に散らばっている我々のような同士を、世界を愛し、憎んだ我々のような存在に救いの手を差し伸べ、辛い過去を消滅させるコトだ。


今から順番に並び、消滅の加護を受けよ!」


最初は数人しか居なかった黒闇の組織も、今では億を超える数になっているのだから、これからの自分の仕事は大変だ。と、彼は首を傾げた。


消滅の加護とは、消滅魔法の奥の真髄に足を踏み入れた者だけが扱える高位の魔法。

術者が死に陥らねば、世界を消滅させたいという強い意志の影響で普段使えないようなレベルの技も扱えるようになる。


____ここから黒闇の時代が始まる。



「司令官、エゼルはどうなったんでしょうか…」


「分からないよ。ただ、言えるのはきっともうコッチには戻ってこない。


俺の推測が正しければな」


その言葉にリグルスがシルバーへ掴みかかった。


「ど、どういうことだよ!!

司令官が推測している答えは!!」


「黒の王、黒闇の王がエゼルだということだ。」



____ッッ!?

そんなことあるはずがない。


リグルスは自分の脳裏に浮かんだエゼルとの楽しい日々を思い出した。

自分が紐になっている時に殴られたこと、魔闘演戯で人を頼っていいってことを教えてくれたこと、ルナールにボコられた時、誰よりも心配してくれたことなど、まだまだ沢山ある。数え切れないくらい。


なのに、今は司令官の言っていることが事実に聞こえてきて胸が苦しい。

彼はエゼルに願った。戻ってきてくれと。


____その時。


「やあ、また会ったね。

というよりは俺に会いに来たんでしょ?


シルバーさんと、久しい吸血鬼さん?」


あの日の戦慄が頭を過る。

自分自身で殺してしまった一族のことを。


狂の人格になったセルシアが心底自分を恨んでいることを。


そして、彼は目の前の青年に憤怒しよう。


「スピノザ・ディスカバリィ…!!」


「やっぱり、怒ってるんだね。

あの日のことを、でも良かったじゃない。


君は一族で懸念されてた、要らないものだと思われてたんだよ。

というか、そもそも、俺は|狂増薬(インセ二ティ・ドラッグ)を君に使ってないよ?」


へ……?

それではミストが言っていることと違ってきてしまう。


リグルスは彼の言葉に耳を向けた。


「使ってない……?嘘だ!!」


「嘘じゃないよ。

そもそもあの薬は君の狂気から創り出せたものなんだ。

あの時代には存在すらしなかった代物だよ。


それでは、ミストという吸血鬼の女の言ってることが違うって?

ふははははははは!

その女、涅槃の人間じゃないよ?」


ミストが涅槃の人間ではない?

それであれば、何処の人間なのか。


________その時、彼らの目に飛び込んで来た光景。


それは司令官ですら、目を疑うモノ。



「ダメじゃな〜い。

スピノザ、私が涅槃に居られなくなってしまったわ。


まあ、ここでこいつらを殺せば問題無いのだけれどね!」


空中から舞い降りるように現れた彼女は、紛れもなく涅槃の最上階に存在するミストという女性魔道士だった。

だが、いつもよりも感覚が違う。


なんかこう、セルシアの狂の人格の時のように震えるほどの威圧感が脳に焼きつくように再生される。



「ふふふふふふふふ。

一族は滅びたわ、でもね、リグルス。


私は吸血鬼の生き残り、本名は……ミスティア・S(シルディン)M(メアリー)・ブラッド。このMの意味、分かるわよね?」


それは吸血鬼の王女のみがつけることを許された名前。つまり、リグルスの実の母親だ。



「お腹痛い思いしてやっと産んだ我が子がまさかの一族を滅ぼしちゃうなんてね。

そんなに憎かった?


ほら、貴方を嵌めて陥れた分家の男の子も〜!」


「やめろ…!」


それでも彼女はやめない。



「あはははははははっ!!

お父さんが憎かった?


セルシアばかりを可愛がっていたのを見て、嫉妬しちゃってたもんね?」


「やめろよ…!!」


彼の怒りはマックスに。



「本当に無様ね。

大丈夫、私が今ここで楽にしてあげるわ。


序でに、一族の仇とでも言うかしらね」


リグルスの身体からは赤くドス黒い液体が空中に浮くように纏わり付き始める。

残酷が再び、襲来だ。



「やめろって言ってんだよおおおおお!!

俺は、俺を助けてくれたやつを救わなきゃならねえ!!!


こんなところで死ぬわけには行かねえんだぁぁぁああああ!!!」


__________それはもはやリグルスではない。

狂気によって生み出された力が増強し、彼の形を異形のものへと変えてしまう。



「リグルス!気を確かに持て!!」


シルバーの声は届かない。

今、彼の目に映るのは辛い過去と向き合わねばならない残酷な目標と二人の敵のみだ。



「スピノザ、アレが薬の原点?」


「うん。あの体内から湧き上がるモノが薬本来の力を発揮させてる力だよ。


あの力は本気の俺じゃないと止められない」


ミスティアでさえも彼の存在に恐怖した。

スピノザが本気で相手をしなければ戦いを続けることさえ不可能。



「うがぁぁぁあああああああ!!!」


自我を失い、彼はもう止まらない。

破壊の印に腕を一振りしただけで、右手の街が壊滅に至るほどだ。



「やめろ。また、人を傷つけるな。

俺は最低な魔人だから、頼むよ。


今からエゼルを救いに行かなきゃならねえんだ。頼むよ、俺から出てけ!!!」



彼の言葉は届かない。

自分自身の憎しみに打ち勝つには、全てを許さなければならない。


自分を見てくれなかった父親。

自分を陥れるために全力を尽くす友人。

自分を憎しみの目で見る兄。

自分を殺そうとさえする母親。


それら全てを許さなければ、憎しみの連鎖は免れられない。


だから、彼は次の行動に出た。


口で言うなら簡単だ。

行動に移さねば、自分自身で過去に怒った残酷な悲劇を許すことなんてできない。


だから、彼は自分の眼を。


__________自分の手でくり抜いた。



「俺ばかりが不幸になったなんて考えは、もうやめる。

友人の時も父親の時も全て、自分の想いを口に出せなかった俺が悪いよ。


だから、これで許してもらう!!!」



__________その瞬間。

リグルスの身体からは赤く黒い液体が引いていき、彼は自分自身で自分を押さえ込むことができた。



「ここからは俺がお前らを相手してやる。

かかって来いよ、てめえら!!」



今までの彼とは違う、その違和感は。

次の瞬間ではっきりと分かった。



「私達を相手に一人で戦う?

バッk………いやあっ!!!」


蝙蝠のような黒い羽は彼の背中に位置し、

血液のような真っ赤な瞳孔は全てを見透かす力となる。


空中に飛び上がって襲いかかってきた彼女を片手で弾き飛ばした。

弾き飛ばされたミスティアは"それだけ"で数キロメートルに吹っ飛ばされ、何度も家を突き破ってはやっと止まった。



「……へえ?

凄いね、自分で自分の力を制御。


コレはまるで君の父親のようだよ。

俺も本気で戦わないと、死んじゃうなあ」


スピノザは自分の内部に秘めている魔力を一気に爆散させ、力を振るう姿へと変貌する。

巨大な黒き龍はその方向だけで街を破壊し、世界に蹂躙しよう。


「俺は龍の姿になったら止まらないんだよ。

自分で制御なんて面倒臭いこと出来ないからな、ふははははははは!!


覇滅龍の街ごと吹っ飛ばしてやる!!」


黒龍(スピノザ)は、硬く黒い鱗を持つ巨大な飛龍になると、高く飛び上がり、口から紫のドス黒い闇の咆哮を彼らに放った。



吸血魔法(ブラッディ・マジック)

血の林檎(ブラッド・アップル)!」


彼の口から放たれたのは聞いたことのない魔法。自身の血液を魔力の起点とし、血液を消費する吸血鬼が一人前になった証に使うことが許される魔法、吸血魔法(ブラッディ・マジック)だ。



緋色の林檎は、咆哮を飲み込むように消滅させると、スピノザの背後に移動して_____


__________吸収した咆哮をそのままの威力で放った。



「この力は父さんの力……!!」



「グオオオォォォォオオオオ!!」


咆哮を本気で食らったスピノザだが、彼には効かない。そうとでも言うように、もう一度同じ咆哮を放った。


____しかし、それが向かって行った先には。



サディとチト、キルスの姿が____。


最後までご拝見頂きありがとうございます!

今回はリグルス君覚醒回です。


昨日投稿した回ではエゼルが黒の王に覚醒しましたが、今回はリグルスが吸血鬼の王に覚醒しました( ´∀`)


覚醒続きで申し訳ございません( ´∀`)

まあ、楽しんでいただければ僕は何も思わないのですがね(笑)


次回もお楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ