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本戦前日

一連の話を聞いて、楽しげな話も出来そうになかったエゼルを見て、ニアとエトは寂しげに部屋を出て行った。

彼が怒ってしまった理由は、聞いてはいけないことを聞いてしまったからだ。


なんだかんだでまだエゼルと出会ってから、一年も過ぎていないのに急激なまでに仲良くなる速度が速くなってしまったせいなのか、限度というものを忘れてしまっていた。

反省すべき点をしっかりと自分で解釈し、謝る点をまとめた上でエゼルに再度会おうと決意した二人なのだった。


ーー帰り道。


「エゼルの背中の傷は魔王武器の魔王との絆の証だったんだね…。

俺とニアは、もう数年近くの仲になるけど、エゼルはまだ一年経ってない仲だったな…。

踏み込み過ぎたってのは反省してるよ」


「そうだね。

俺もそこはやり過ぎたと思ってる。


でも、あんなこと言われちゃったら次会うのがすごく億劫だなー。

次は本戦の時に合うんだろうけどさ」



「もう一週間ないな。

その時まで謝罪の言葉をまとめて、それがなりに俺らは謝る必要がある!!


エゼルと交わした約束を守るのは当然、彼奴を想ってやるのは友人として当然だ!」



「だな!

んでさ、取り敢えず、今日はどうする?

俺の部屋に隠れとく?


エト、今日、隊員集合会議だったんだけどカルラの目を盗んでエゼルのとこ行ったじゃん!カルラの靴底の痛さ、異常だからね!」


ーーその二人の後ろに、逆鱗に触れられてしまった赤き光を纏う少女が現れた瞬間に起こったことは、きっと言うまでもないだろう。




「僕は、昔とは違うんだ。

今は大切な仲間も、僕を認知してくれる人達と大勢居る!


だから、こんなところで消えたくはない。

僕の夢は、平凡に生きること!


僕は後どれくらい持つの?

ロスト!」



エトとニアが帰った後の部屋は真っ暗にも静寂に呑まれ、雨の音だけが部屋の音を奏でている。

エゼルだけに見える黒い影は、哀しそうに、応える。



「前にも言った通り。

これ以上、私の力を使えば、後一年と持たないだろう。

魔闘演戯とやらで三連覇するのは遠い夢の果てとして見てもいい。


だが、消滅するまでの時間を伸ばす手段はある!!」



「え…!?

な、何それ!!

あるなら、教えてよ!」



「これも前に言ったが、修羅の道だ。

耐え切れるかどうかは、これまでのお前を見てきた私の名において保証が出来るのだが、お前の身は持つとしても精神が持つのさえは分からない」



でも、消滅しないことが前提の夢だ。

僕が掲げてしまった夢は、大きな夢で、昔の僕なら確実に達成しようなんて考えもしなかったこと。

それでも、前に進むのは、守るべきものがあるからだ。


ロストは負けたように彼へ教えよう。


「……………と。」



驚愕の答えに、思わず目を見開いた。

そんなこと、できるはずがない。


エゼルは真っ向面からその答えを、考えを否定した。

ロストは哀しみの表情のまま、暗闇の世界へと消えた。


静寂の世界はまた戻り、雨の音が部屋に音を与える。

彼の頭の中は、瞬間的に真っ白になった。



ーーー

数日後、本戦前日。


暗く広い空間で、先日エトに身体をバッキバキにされたルナールはベッドに横たわっていた。


「……リブロ、俺の体に異常はねえよな?」


隣にいるリブロへ声をかける。



「いえ……ルナール様の身体は、後一ヶ月もしないと元には戻らないと思います…!


無理をなさらずに…。

明日の大会は諦めるしか…」



ドンッと大きな音がし、破壊されたのは壁。

壁には大きな穴が空き、リブロは命の危険を感じた。

黒いルナールが目覚めた瞬間だ。



「ル、ルナール様…!!

わ、私のことは殺してもいいのでお願いだからじっとしていてください!!


お、お前ら、ルナール様を取り押さえろ!

こ、このままでは黒闇に我々が始末されてしまう!!」



三十人というルナール隊の下っ端が束になって、ベッドから降りて立ち上がろうとするルナールを取り押さえた。

ーーが、彼が収まることはあり得ない。


束になってかかった隊員全員は、彼の思い通りに宙を舞い、目標を喰らい続ける一太刀の刀に一刀両断されて、絶死した。



「ル、ルナール様!!

こ、このままでは本当にマズイ!


落ち着いてくださ……!!」


刀は一周回って、リブロの腹部に強く突き刺さった。



「ダメだこのままでは……!

明日の本戦が闇に覆われ……る…」



自ら立ち上がり、リブロの腹部から刀を抜き、大きく振り、血を落とすと彼は刀を手放してその場を後にした。


その瞬間から、ルナール隊の幹部含めて全員が隊長の手によって全滅した。



ーーー


「ほう。

自我を忘れて、闇の力が心をも支配しようとしている。

今のルナールは、自分の目的のためなら手段を選ばない、言わば、猛獣のようになってしまったようだな。


これは、明日の本戦楽しみだ。

なあ、リアティア」



「ですわね。

楽しみでならないわ!

明日は頑張らないとね……!」



リアティアと呼ばれた女性と黒いローブに身を包んだ男、彼らは何処からか暴走したルナールを水晶越しに見つめ、不敵にも笑った。




「明日はいよいよ、本戦だ。

色々あったけれど、僕は僕の夢のためにどんな相手でも屈することなく立ち向かう!


僕だけの力で消滅しない方法を探すために!!」



エゼルは心に強く誓った。

諸刃の剣のような解決方法はいらない。

自分の手で消えない方法を考えて、それを遂行するまでだ。


彼は、燃え滾り、決して消えることのない戦闘の意思を持った強い炎が宿った。


消滅していた(ともしび)に光を。


ストーリー評価と描写の評価だけをお願いしたいなー、なんて思ってます!

お願いします(:3_ヽ)_


さあ、次の話からは本戦です!!

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