ただいま!
ーーー
僕は……
僕は………!!
消滅、消滅、消滅!!
「リグルスー!」
エゼルは、前方にリグルスが見えたので、叫びながら肩を叩いた。
ーーその瞬間。
視界が真っ暗になって、彼は地面に蹲った。
「お前は誰だ?」
「貴方は誰?」
「あんた、誰よ?」
「俺様の知り合いかよお前?」
サディ、リグルス、キルス、チト。
エゼル隊の全員が輪になり、輪の中にはエゼルが居る。
「ちょっと待ってよ!
皆、忘れちゃったの?!
僕だよ!エゼル・シスタだよ!」
「は?誰だよお前。
俺はお前みたいな弱そうなやつ知らねえな!」
リグルスも。
「ちょっと!リグルス君!
ダメだよ喧嘩は!
この人も悪気はなかったんだよ!
人を間違えるくらいあるじゃん!」
チトも。
「そうよ!
喧嘩沙汰にするのは間違ってるわよ!
ほら!!リグルス、行くわよ!」
サディも。
「俺様は別に怒ってないからいいけどよ。
次からは気をつけろ、どうせモテないようなツラした童貞野郎!」
キルスも。
「ど、どうしてっ!?
み、皆!!待ってよ!!」
どんどん遠くなるばかりに、暗闇の中へ彼らは消えてしまった。
僕は消えてしまったのだろうか。
母親の時のように。
忘れ去られてしまうのだろうか。
それはーー
ーーーー死に値するーーー
コト。
「お前はもう少しで消える。
タイムリミットは残されていない」
消滅の声が聞こえる。
分かってるよ。
でも、諦めきれない!
忘れ去られたとしても!!
そして、真っ暗な世界に光が訪れよう。
目覚めの時ーーだ。
「……ッ!!!
……ゆ、ゆ、、、夢?」
目に映ったのは白い天井。
視界が暗いのはきっと夜中だからだろう。
黒闇に襲われれば終わりのフィールド。
「夢だったか……よかった。
…ん?涙?
やっぱり、僕、あと少しで消えちゃうのかな」
夢だったことに内心ホッとした彼は自分の目に溜まっている涙に驚いて、服の袖で拭うと起き上がってベッドから出た。
「…ん?物音が聞こえた気がするんだが…!
…ッ!?
エ、エゼル!まだ寝ていろ!お前の傷は、万死に値するレベルなんだぞ!
待ってろ!今すぐ、医者を呼ぶ!」
物音に気がついた司令官は病室に顔を出すと、驚愕の声を上げ、一目散に出ていった。
「そんなに酷い怪我は無いみたいだけど…?
司令官のあの驚き方は、そういうことなんだろうなー、とりあえずお医者さんを待とう」
ーー数分後。お医者さん到着にて。
「あ、あ、あり得ない!!
魔力の供給も何もかも万全の状態に回復し切っている!!
こ、これは来週から始まる魔闘演戯本戦にも余裕で出場可能ですな…。
今すぐにでも余裕な程です!」
この時、司令官はリグルスの言った一言が頭を過ぎった。
自分が何とかしてみせる。という言葉。
病院には自分自身が見張りに付いていたので複数の警護を掻い潜る手段が無いことがリグルスの仕業ということを確証つけることは出来ない。
驚異の回復力として見過ごすことにした。
「あー、今日退院して良いそうだ。
大事には至らなくてよかったよ、来週の本戦に向けてゆっくり休むんだぞ!
お疲れ様!」
三週間ぶりに外へ出たエゼルは、王宮前噴水広場に向かった。
自分の隊の皆が待っていてくれていることを信じて。
噴水広場に着き、辺りを見回すも彼らの姿はなかった。
哀しみの表情でその場から離れようとすると、後ろから聴き慣れた声の喝が入ってきた。
「おせーよ!!隊長!!」
後ろを振り向くと、そこには、リグルスを含めたエト隊全員が笑顔で手を振っていた。
「……ご、ごめん!皆には本当に迷惑かけ…」
「そうじゃないだろ?俺らに言うことはさ」
エゼルの声を遮るようにリグルスは言った。
ハッとし、エゼルは笑顔で彼らに向かってーーー
「ただいま!!」
「おう!おかえり!!」
ーー彼らはまだ発展途上。
でも、絆だけはまた一つ上に上がったことは間違いがないだろう。
ーー
リグルスは、ハッと思い出したように続けた。
「あっ、そう言えば、明日、エトとニアが話あるから来るってよ!
ニアには礼を言っとけよ?
お前助けたの、ニアだからな!!」
ーーーー後日。
昨日の遅くまで隊の皆で遅くまで出かけていたエゼルは寝不足で起床した。
ルナールにボコボコに殴られた時までの記憶しかない自分は、昨日一連のことを話されて状況がイマイチ分かっていない。
ただ、今日、エト達が来るのは別件でのことらしい。
身支度を一通り済ませると、彼らが来るのをソファに座り、リラックスしながら待った。
「……別件?ってなんだろう。
僕が消えてしまうことについてかな」
消えたくない。
この楽しい生活を終わらせたくない。
彼の心はそのことでいっぱいだ。
ーーー暫くすると、インターフォンが鳴った。
エトとニアが来たようだ。
エゼルはドアの鍵と戸を開けると、真剣な表情のニアとエトを部屋へ招き入れた。
「取り敢えず、退院おめでとう!」
「ありがとう、ニア。
なんか、緊急オペを行ったらしいね…その件も本当にありがとう!
命の恩人だよ!」
「良いんだよ。
困ったときはお互い様さ!」
ニアは笑顔のグッドサインで場の空気とエゼルの表情を和ませた。
「おめでとう。
あまり無茶はするなって言ったろ?
ルナールは危ないやつだって!!
まあ、でも気をつけてはいたんだろうな。
あいつのことだから本戦で脅威になるやつを潰すとかでお前に理不尽なことをしたんだろう…。
その件についてはもう良いよ。
俺らが今日来たのは別件なんだ。」
「別件?ってなに?」
神妙な面持ちで彼は問う。
「エゼル、単刀直入に言うよ?
君は、何処でその伝説の証を…伝説の魔武器を手に入れたの?!」
驚いた様子でエゼルは答えよう。
自分が何故、背中の傷を持っているのかを。
辛い過去を、現実を。
見逃すは、出来ない。
速度を早めていきたいなーっと、頑張ります!




