背中の傷
エトが帰還し、ルナールを止める為にアレを使用したことを聞かされたカルラはーー
「え、エト君!!
それって…つまり?」
状況が飲み込めないカルラは目を回しながら、問いかける。
「ルナールを倒したよ。
仇を取ったって言えばいいのか…。
……ッ!?
ちょ、え!?か、カルラ!!
離れ……」
報告を聞いた瞬間。
彼女は目の前に立っているエトの胸元に全力で飛び込んだ。
衝撃で地面に尻餅をつくと、驚愕したように彼女の表情に視線を移した。
「うぐっ…ティ、ティアの仇討てたんだねッッ…!
が、が、敵討ちは良くないって分かってるけど、やっぱり……嬉しいな…。
エト君、ありがとう。
ティア、無念晴らせたね。
ゆっくり、おやすみなさい」
カルラの言葉に同意するように、エトはゆっくり抱きしめた。
今、この瞬間だけはと心に安堵を残しながら。
ーーー数分後。
自分とエトの状態に気づくのがあまりに遅かったカルラは、顔を真っ赤にして椅子に座りなおした。
その様子をシャスは遠目で見て、笑っていたが彼らに次の議題を持ち込む。
「エゼル君のことだけど…。
ニアから伝言魔法で送られてきた様子だと、魔闘演戯に出場するには問題ないくらいには回復させたらしいわよ。
良かったわね……!
コレで今回の件については終止符って感じかしら?」
そう。
ルナールを倒して、エゼルは完治。
あまりにも出来すぎてはいないだろうか。
不穏に感じる謎の意図に、エトは勘づいていた。
が、それが何なのかは完全に気づくわけもなく、彼は疑問を胸の中にしまい込んだ。
ーーー病院にて。
エゼルのオペを終えたニアとリグルス。
病院内には司令官や特殊部隊がルナールの奇襲にも万一のために備えて、警備を強化していた。
が、彼にはそんなことは関係ない。
ーー時が止まれば全てが無だからだ。
「ニアの魔王武器凄いな……!
司令官の間を簡単に潜り抜けて、そのままオペを開始しちまうなんて!!
やっぱり、アテにした甲斐があったわ!」
「……これでも一応、エト隊の医療隊のリーダー張ってるからな。
これくらいの傷ならどうにでも塞がるけど……いくつかおかしな点があるんだ…」
エゼルの損傷を幾つか治し、完璧なまでに完治させたと言ってもいいほどのオペを終わらせたニアだったが、エゼルの身体の構造に不思議と疑問が湧いた。
「……おかしな点?」
「うん。
普通、魔人ってのは人間から魔人適合手術を受けて適合すればなれるモンだよね?
その時の手術の傷ってのは小さいけれど、必ず背中のどこかにあるんだよ。
でも、エゼルにはそれが無い」
彼の背中をなぞるように触り、真剣な面持ちでニアは続ける。
「それだけならまだ良かったんだけど。
これを見て欲しいんだ!
この背中の傷、何かに見えない?」
エゼルの小さな背中には巨大な傷があり、背中の肉でも削がれてしまったのではないかと思うほど荒んなモノで、ニアには何かに見えたようだ。
「……コレは魔王武器発動時の魔法陣の紋章と同じ!?」
「そう。前にエトの診療をした時にあったんだよ、これと同じような傷が…!
単なる偶然だと思ってたけど、これは何かを意味する存在でエゼルもエトも持っている。
何か凄い力があるんじゃないかと思うんだけど、どう思う?」
エゼルの背中にある傷をじっくりと見るも、リグルスとニアには到底分かり得ないことだった。
背中の紋章が何を意味するのかを。
「取り敢えず、エゼルが起きてから聞くしかないんじゃないかな?」
「だな!ニア、ありがとう!
用は済んだし、病院の外に出よう」
かくして、彼らは病院の外へ出て、暫く遠くへと進み終わると時間を元に戻し、何事もなかったかのように自室へと戻っていった。
*ニアは合宿に戻った。
「ニア〜、さっきから何を悩んでんだ?
エゼル助けに行って、帰ってきたあたりから様子が変だけど…」
椅子に腰を下ろして考え事をしている彼に疑問を感じたのか、エトは声をかけた。
「んーと……ちょっと聞きたいんだけどさ。
エト、その背中の紋章は何を意味するの?」
その瞬間。
一気に空気が変わった。
ニアには、エトが内心焦っているのが手に取るように分かった。
そうか、聞いてはいけないことなのか。
でも、知りたい。
エトが何故それを聞かれて焦るのか。
そして、それが何なのかを。
「……はあ。そこまで知られてるなら素直に話すよ。
皆、集合して!!」
知られている事実だとは知らなかったようで、エトは諦めたように椅子へ腰を下ろし、隊員に召集命令を出した。
近くにいた、エト隊は全員、同じ机の椅子へ座ると、隊長が語ろう。
背中の紋章についてを。
更新速度を上げていきたい願望!




