心の鬼
「お前は何を望んでいる?」
「……僕が消滅しないこと」
「……それは不可能な話だ。俺に力を求めれば、結局のところお前は簡単に消滅する。
俺に食い尽くされたくなければ、必死に足掻いて見せろ!」
「……分かってるよ…」
何も無い空間で青年は空間の中で蠢く彼と対話していた。
白か黒かも分からないような空間は、きっと何もないのだろう。
あるとするのならば、彼が居ること。
青年に植え付けられた闇だ。
目が覚めると、最初に視界に映ったのは真っ白い天井。
恐らく、病室のベッドに寝かされているのだろう。
「結局どうなったんだろう…」
「どうなったと思うのかしら…?」
「だ、誰?」
自分以外に誰もいないはずの病室で、大人っぽい女性の声が耳に入った。声のしたと思う方へ視線を向けるも、誰もいない。
「どこにいるの…?」
「私がどこに居ようが構わないじゃないのよ。それで、貴方は何を知りたいの?貴方が《有罪》を倒した後の出来事かしら?」
「う、うん…」
彼女の言われるがままに返事を返すと、薄い笑い声が聞こえて、彼女は話し始める。
「そもそも、《有罪》が暴走したあの日から、今日で丁度一週間よ。貴方は一週間眠り続けていたの」
「一週間も!?」
「そう。それでね、貴方の隊が出る予選Bブロックは危険な試合が多いってことで、勝利していた隊員を全員優勝ってことにしたのよ。ここで異例の3人優勝ね。本線のトーナメントがどうなるかなんてことは知らないけれど、さすがに良い判断ね。敵ながら天晴れよ。」
「え?敵??」
彼女はエゼルの問いを無視して続ける。
「今日本当は貴方を殺しに来たの。傷の手当が施されている今の貴方が起き上がることも体を動かすこともあり得ないから。でも、気が変わったわ」
「……?」
キョトンとした表情を浮かべる。
誰に向けて浮かべるわけもなく、率直な表情だ。
「そんな顔されても困るわよ。
さて、私は帰るわね。また何処かで会いましょう?次に会った時は容赦はしないわ、今日の任務の相手みたいに簡単に捻り潰してあげるんだから」
「あっ、待って!!」
と、言った頃には彼女の気配は消えていた。気配と言っても何処にいるかが、定かになるわけでもない。素直に直感だ。
「何だったんだろう…今の…」
夜から朝に変わる寸前の出来事に暫く悶絶し、横になりながら考える。
話し方が誰かに似ていると思ったのは、考えてから何分からだっただろうか。
可能性がないわけではないけれど、自分が思い描いた展開は余りにも現実味のしない可哀想な幻想だ。
彼は、ソレを心の中の引き出しにしまい込むと、ただただ真っ白い天井に視線を移し、ボーッと時が過ぎるのを待った。
「今日で一週間かよ。ホントにつまんねーの…!!エゼルが居ない一週間とか俺らよく生きてこれたなー感あるよな。」
「ホントな!!」
「あんた達、最低ね。エゼルにヒモするしか能がないの?全く…!!」
「エゼルくん、起きてるかな。。。」
病室に近づいてくる足音は、四人だ。声からしていつものメンバーだということに気がつくと、エゼルは寝ていた体を頑張って起こして、扉が開くのを待つ。
ガラガラガラーッ。
引き戸である扉が開くと、一週間ぶりのみんなと目が合った。
全員、驚愕に唖然としているようだ。
「せ、先生呼んでくるねっ!!」
チトが目に涙を溜めて病室を出て行った。
「や、やっと!!起きたのかよ!!」
「うおおおお!!エゼルが起きたぁぁぁ!!」
「……二人は当分口聞きたくないかな。
僕のこと、ご飯の美味しいコックとしか見てないような言動聞こえたし……」
ーーー
「一週間ぶりね。エゼル。今、チトが先生呼んでくるから、このまま安静にしてなさいよ」
床に手を付いて四つん這いに気が沈んでいる二人を無視して、サディとエゼルは話を続ける。
「これでようやく紋章治癒が可能になるのね」
「紋章治癒?」
「そう。この間の戦いで、エゼルの紋章が崩されちゃったのよ。
だから、その紋章じゃ、涅槃の人としては認識されない。つまり、都市にいられなくなるの。涅槃では、紋章を持たない者は涅槃の人として認められないから外に出されちゃうのよ。
それが例え、黒闇の猛攻を二度も防いだ少年でも…ね」
ーーガラーッ。
扉が開く音と共に、チトと黒いローブに身を包む、謎の人達が部屋へ入ってきた。
何をしようとしているのかは分からないが、この時点で再度、エゼルは気を失ってしまった。
ーー
「オイ、起きろ!」
懐かしい怒鳴り声と共に目覚めると、目の前には司令官が居た。
謎の少女の言う通り、今日が一週間後ならば一週間ぶりの司令官だ。
「ん…あ、し、司令官!ここは…?」
「王宮だ。紋章治癒のためにお前を眠らせてたんだ。すまんな……でも、もう無事に終わったよ」
「そうですか」
自分の手の甲に視線を移すと、涅槃を守る龍の紋章が描かれている。
「来月は魔闘演技本戦だ。黒闇が入り込めないように万全の警戒態勢を取るそうだ。だから、安心しろ!!」
「はい、そうします!」
それだけ言うと、司令官は部屋を出て行った。
来月からは自分の夢を叶えるための第一歩である、魔闘演技が始まる。
エトとの約束も含めて、絶対に負けるわけにはいかない。
エゼルは、自分の中の鬼に問いかける。
ーー自分はいつまで持つのだろう。と。
鬼は答える。
ーーーーーーと。
投稿遅い上に短くてすいません。
また仕事が落ち着いたら、ゆっくり書かせていただきます!!
それまで、辛抱お願いしま((ry




