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三人の休日

ーー翌朝(?)


「エゼー、起きろー!もう昼過ぎでお客さん来てんだぞー!」


頬を叩かれて目覚めると、その場を立ち上がって寝ぼけた顔のまま洗面台へ歩いていく。半分寝ている彼には、「起きろー」の部分しか聞こえていないようで客人が居ることに気づいていない。


「まだ寝てるなありゃあ・・・洗面台で顔洗えば戻ってくる時に気づくだろ」


ーー数分後。


「はぁ……リグ、なんで居んの?」


「何でじゃねえよ。エゼに客人が来てたようだから俺が部屋の鍵を開けたんだよ。はぁ……俺はもう帰るぞ〜。吸血鬼に朝の起床は辛過ぎる……」


視線を玄関から去っていくリグルスからソファに座っている二人に移す。

すると、彼はポカーンと口を開けたまま、動かなくなってしまった。


リグルスが帰ったことに驚愕を覚えたわけではない。昨日の約束を自分が忘れていたことに驚愕したのである。


「エゼルー?大丈夫か?おーはーよーう!」


「エゼル隊の隊長、寝起きは鈍感。っと、サイトにプロフィール情報追加だね!」


エトの呼びかけには、全く反応しなかったエゼルだが、ニアの言葉に危険信号を感じると、気を取り戻して、端末を奪い、直様、文章を削除した。誰得感が漂う文章は一瞬で端末上から消える。


「えええっ……なんで消すんだよ!」


「そんなプロフィール誰得なんだよ!」


ニアに端末を手渡しで返しながら、彼は少し強めに声を上げた。


「それは、エゼル君のファン達の得だよ」


「僕にファンなんか居ないよ!」


奮闘中の彼に、青年は自分の端末の画面を指を踊らせるように操作して液晶に映った情報を彼に見せながらこう言った。


「え?エゼルは《朧憑夜(ハウント・ナイト)》の新人序列で輝かしい一位に名を刻んでるけど?」


彼の言う通り、自分の名前が刻まれている横には"第1位"と金色の文字で色付けされた順位が載っていた。


「《朧憑夜(ハウント・ナイト)》って何?」


「俺の経営するサイトの強敵(ライバル)サイトだよ。俺のは個人情報や序列、強さなどを中心に載せてるんだけど、《朧憑夜(ハウント・ナイト)》は、人気な生徒が載るサイトだよ。新人賞受賞おめでとう!良かったね!」


普段、連絡時以外は端末に触れないので今の祝い言葉に対して純粋に喜んでいいのか分からず、微妙な表情を浮かべた。


「因みに!このサイトの総合序列で一位は、エトだよ!モテるのに彼女も作らなければ、あまり人と関わろうとしない。ほんっっっとにバカだよねえ〜!」


「こいつ、俺を馬鹿にしてるときの顔が一番は輝いて見えるんだよな。腹立つ……!」


ニヤニヤと微笑だが、嘲笑を調子に乗って続けていた青年は数分後に自分の頭上から降る光の拳を警戒していなかったーーために、直撃。

最近食らっていなかった痛みを久しぶりに味わった彼は気持ち悪くもニヤニヤと嗤い、正気に戻ると目に涙を浮かべてこう言った。


「そ、そんなに怒ることないだろ……」


「調子に乗らせると面倒なヤツはこういう対応するべきだろうと思ってね」


頭上に生まれた赤く丸いタンコブからは蒸気が出ており、青年はそこを必死に両手で包み込むように抑えている。

その状態を見るだけでも痛みが伝わってくるようだ。


「エゼル、パジャマ姿可愛いね」


シャッター音と共に端末に顔を隠しているエトが笑いながら言った。洗面台で顔を洗って帰ってきたまま、立ち話をしていたので当然、着替えていないのだ。


「今すぐその写真を消せえええ!!」


画像消去のためにソファに座るエトに飛びかかるが、常に光の速度で動く彼の速度に普通のエゼルが叶うはずもなく、端末を奪い取ることは出来なかった。


「エト!その画像、俺の端末に送って!サイトのプロ画像にするから!」


「おっけー!」


「だめえええええええ!!!」


ニアとエトのやり取りに、自分のプロ画像がパジャマ姿なことを想像して余程に嫌だったのか。次の瞬間には速度強化(スピード)で彼らの端末を奪い取り、威力強化(パワー)で彼らを殴り飛ばした。




「二人とも、反省してる?」


「「してまふ・・・」」


威力強化(パワー)状態の拳を顔面で受けて、その場から吹き飛ばされて壁にめり込むように叩きつけられた彼らは、すぐに起き上がって左頬が膨れ上がった影響で呂律が回ってないことを気にもとめず、彼の機嫌を取ろうと必死に謝罪を繰り返した。


「なら、いいんだけどさ。次、こんなことがあるようなら、こんなもんじゃ済まないよ。」


「「ふぁい・・・」」


ーー

正座から一転してソファに座り直した彼らにエゼルは追真の様子で聞く。



「ところでさ、僕の明日の敵の情報とかある?」


「嗚呼、あるよー!情報なら任せとけい!」


自慢気に自分の胸にポンと拳を当てて、ニアは端末を操作して出た情報をエゼルに提示する。

幾ら自分のサイトとは言え、手際が良すぎるような気はしたが、気にせず情報の方へ視線を向けた。


「はい!コレ!《有罪(ギルティ)》の情報ね!」


有罪(ギルティ)

ゾヒス・マティック。

前魔闘演戯では16位の成績を見せた涅槃史上最強のドM。

彼の能力であり、異名ともなっている《有罪(ギルティ)》は、受けた傷、痛みに応じて強さが変わるというもの。

弱点としては、彼の意識を飛ばす程の痛みを一度に与えれば良い。

だが、前回の魔闘演戯から一年経った今では、この策が通用しない程に彼は痛みに対しても快楽に対しても敏感だ。



「えええええ………面倒臭そう…」


「前回の魔闘演戯で俺戦ったんだけど、本当に面倒だったよ。俺の魔法も全部「気持ちいい!!」の一点張りだったからさ・・・」


と、エト経験者は語る。


「じゃあ、どうやって勝ったの?」


「あいつ風に言うなら、最高の快楽を与えてやったんだよ。俺の魔力を最大に詰め込んだ最強の魔法でな」


「アレは極大過ぎて・・・会場が完全に吹き飛んだヤツじゃん。エトのせいで今年のシード戦に防壁が貼られるようになったんだから・・・。」


額に冷や汗をかきながらエトは続ける。


「その魔法はもう使ってはいけないって学園長に禁止にされたんだよな。懐かしいけど、アレやった後は歩けなかったし・・・」


「あの時、迷惑を被ったのは本人じゃなくてこっちだってのに……反省しろバカ!」


"反省してます"と付け加えて、彼はソファから床に正座で腰を下ろした。


「ところで気になったんだけど、エトの魔王武器は?」


涅槃(こっち)に来てからは、まだ一度も出したことないよ」


ソファに座り直したエトは平然と言ってのけた。


「そうなんだよ、俺程の付き合いでもエトの魔王武器は一度も見たことがないんだよね……」


ニアも続ける。

この時、"何この人かっこいい"と思ってしまったエゼルの表情は何故か天に召されているようだった。



「じゃあ、魔人学校(アカデミア)では出したことあるってこと?」


「カルラに聞けばどんな魔王武器なのか分かるよ。彼奴、何でもベラベラ喋るからな」


今度聞いてみよう。

と思った時、ニアが口を開いた。



「・・・ってエトに言われてカルラちゃんに聞いたけど教えてくれなかったよ。"それは私が答えることじゃない"ってのでさ」


「へぇ、彼奴黙ってくれてんだ。意外性感じるってか、見直したわ」


それを本人の目の前で是非とも言ってあげて欲しいが、きっと彼には言えないだろう。


ニアの考えを妨げるようにエゼルは続ける。


「純粋に……何故使わないの?」


「嗚呼、アレ使うと誰も俺についてこれなくなるんだよ。あっさり勝つってのはあまり好きじゃなくてさ。どうせやるなら絶対的な勝利よりも窮地からの逆転が楽しくて好きなんだよ」


「そっか……なら、魔闘演戯で僕がエトに魔王武器を使わせてやる!」


闘志の籠った真剣な表情と眼差しは、《光帝》の心に炎を灯した。


「幾ら大切な友達だとしても戦闘になったら関係ないよ?間違えて殺さないようにしないとね……」


「間違えても殺されないから大丈夫だよ。僕は簡単には負けない!」


平穏な空気だった室内は異形な殺気と真っ直ぐな闘志が接触し、不穏な空気を発生させた。


「じゃあ、明日応援してるよ。魔闘演戯の決勝でエゼルのこと待ってるからさ」



「うん!楽しみだね!」



二人の闘志の衝突を見届けるや否や、青年は端末に視線を向けて、必死に指を滑らせていた。


「激突!魔闘演戯決勝戦の約束!っと、ん?二人共、話は終わったの?」


次の瞬間、青年の目の前に二つの拳が重なるように現れる。


「「威力強化(パワー)」」


そして、彼が拳に灯る眩い光を最後まで見届けることはなく、強い衝撃と痛みと共に部屋の戸を突き破り、幾多の部屋を貫いて、外に辿り着くと勢いはやっと止まり、彼はそのまま250階の高さから地面に急降下し落ちて行った。


「あっ、思わず……死んでないかな?」


「大丈夫だよ。彼奴はああ見えてタフだし、極々稀な能力の使い手でもあるからな。」


「そーなんだ……」


その能力って?と聞きたくなったが、本人のいないところで聞くのは気が引けたのか。納得したように、ソファに腰を下ろす。


「痛かったー(棒)ただいま!」


「帰ってくるの早っ!」


「もう一度殴り飛ばしてやろうか」


エトは拳を前に突き出し、真剣な表情で言葉を吐いた。コレに対して洒落にならないと感じたのか、ニアはエトの拳をよいしょ巧みに撫でながらゆっくり下に降ろした。ニアは、さり気なく殴られることから逃げることに成功したようだ。

"変な部分に巧みな技術持ってるな"と感じ、二人から視線を外した。


「長居しちまったな……ニア、そろそろ集会の時間だろ?」


「あー、あと十分だね」


"やべえ!エゼル、明日応援行くから頑張ってな!"と帰り際に一言言って、エトとニアは姿を消した。恐らく、光速で待ち合わせ場所とやらに向かったんだろう。


そんなことを想像しながら彼らの帰った後の静まり返った室内からゆっくりと流れる雲を眺めて時が過ぎるのを待った。


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