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僕の役目

「大丈夫だから帰らせろって!」


「身体が良くなったのも元気になったのも認めますが、チームの隊長や司令官殿がお見えになるまでは帰らせることが出来ないんですよ!」


特別病棟室。

普段、使われることのない、この場所は特別に容態が悪化した人物、又は、危険視された人物を隔離するという目的で使用される場所。


「ダメだ!やめなさい!」


必死に止めにかかる医師を跳ね除けて、外へ出ようと必死にもがく。


「リグ〜、そこは出口じゃなくてトイレに行くための扉だよ?」


後ろの扉から入ってきたエゼルは、興奮して顔が真っ赤になっている彼に声をかけた。


「エゼエエエエ!!隊長来たし帰っていいよな?お医者さんよー!」


「駄目だよ、僕が来たら帰っていいことになってるんだとしても僕が許可しないからね」


「は?俺はここから出たいんだよ!なんで出させてくれねえ!そうやってエゼルも俺を変な目で見てんだろ!使えないやつだってよ!そう思ってんだったら、今すぐ言ってみろよ!!」


思いもよらなかった言葉に反発した態度を見せる。隔離されているのが怖い、辛い。この空間に居ると自分が何なのか分からなくなる。


彼は分からなくなっていた。


自分の中に宿る悪魔が言葉を悪い方へ変換し、自分の本心がソレを真実として理解する。例え偽りだったとしても、それしか信じるものがない。

困惑した彼の思考は思わず口を開いた。


「俺はなんなんだ・・・?」


彼の言葉にユリアスの言葉が蘇る。


「お前の役目は、これからどんなことがあってもじゃ、仲間を信じること。」


そうだ。僕の役目は、仲間を信じること。そして導くことだ。

隊長なら守り通せ、仲間を信じろ、そして導け!


エゼルに聞こえたのはきっと自分の言葉。自分の意思。

そして、彼は優しい表情でリグルスに問いかけた。包み込むように優しく。



「お前は、リグルス・ブラッド。それ以外に名前がある?あるなら教えて欲しいけど、無いよね?

リグは僕の隊の大切な仲間だよ。

この場所は僕と司令官しか入れないらしいけど、僕が来る前から皆、ずっと外で待ってた!それくらい大切にされてるんだよ、君はリグルス。それ以外に名前は……あるの?!」


最後の最後まで自分の意見を通し抜いた彼はリグルスの返答を待つしかない。


僕がリグを導くために言った言葉。

通じれば、僕は自分の役目を守ったことになる。

でも、重要なのはそんな部分ではない。

重要なのは、リグ自信が仲間を頼るということを当たり前に思うこと。


僕は、それを願うだけだ。



彼にはエゼルの言葉の一つ一つが壊れたラジオのように何回も何回も再生された。それは毎回、感情が違って見えた。怒り、哀しみ、笑い、他にも様々な感情が入り混じって見える。

そう感じた頃には、リグルスの心は暖かいベールに包まれていた。


自分に聞こえる言葉を濁す悪魔も、迷っていた頃の弱い自分も居ない。


彼は本心を泣きながら伝えた。

今までずっと疑問に思っていたこと、口に出してはいたけれど本当はどんなものなのか分かっていなかったことを。


「・・・仲間ってよぉ、なんでも頼って良いんだよな・・・」


「うん!当たり前だよ!助けて欲しい人に頼るのは当たり前!」


「・・・当たり前・・?」


「そう!イッツアタリマエ!」


エゼルの明るく元気な心の暖かさに、リグルスの冷たく凍り切った心は溶けていった。

完全に心が許された時、二人は病室で笑いあっていた。そして、この笑顔がこれから絶えることはない。と言いたげに空は青かった。


「おい、お前ら、いつまで笑ってんだ!行くぞ!!」


病室の扉が大きな音を立てて開き、司令官が怒鳴り声を上げて去って行った。

エゼルは、リグルスに手を差し伸べ、彼はそれを掴むと二人は仲良く手を繋いで病棟から外へ出た。


「お前ら、仲良くなりすぎだろ。流石に男同士がそこまで仲良くなっちゃうと気持ち悪いわ!今すぐその手を離せ!」


一部始終を全て見届けていた司令官でさえも流石に引く程に彼らは仲良くなっていた。サディやチトらが集まっているところを確認すると、すぐに手を離したので良しとするが。



「エゼルの試合もリグルスの試合もサディの試合も明後日だ!それまで各自身体を休めるように!」


全員一致の肯定の返答でその日は解散となった。


「んじゃ、帰るわよ〜!チト!」


「うん!」


「俺らも帰るぞー!エゼ、リグ!」


完全に解散モードになっている彼らの中、リグルスは立ち止まって俯いている。


「どうした?リグ?」


「お前ら、俺の初めてのお願いっての聞いてくんねえかー!!」


力一杯賭けて出した声は少しだけ大きく、遠くにはあまり聞こえない小さな声だった。


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