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吸血王

楽しんでいただけると光栄です( ´ ▽ ` )ノ

今日の午前中に行われた、エゼルvsキルスの試合展開は誰もが驚愕する結末だったためか。

その後に行われた試合は全て盛り上がりに欠けてしまうこととなった。


「次は俺の番か・・・」


「リグルス、あんた大丈夫よ!いつもの感じでいけば……ね!少なくとも試合中にドジんじゃないわよ!ほら、行ってきなさい!」


自分の席から立ち上がり、空に向けて手を伸ばす。自分に力があるのか、何のために魔王武器を使えるようになったのか。その経緯を心の中で一つ一つ思い出し、彼は掲げた拳を強く握りしめた。

気を遣いながら、キツめの言葉吐くサディに背中を押され彼は控室へ向かった。


「Bブロックもいよいよ大詰め!残る試合はあと3試合となってきました!次なる試合は〜!リグルス・ブラッド選手vsクラディール・アスカ選手の試合になります!今回注目のエゼル隊に所属するリグルス選手ですが、どんな攻撃を仕掛けると思いますか?ナイルさん!」


「はい。リグルス君の資料が不明なんですよね。経歴は不明、でも。名前にブラッドと書かれているからには、吸血鬼系統ではないでしょうか…?では、ご登場……」


「ちょっと待って!それ私のセリフ!何で、ナイルんがやるの!」


「うるさい!このまま私が言った方が話の形的にはすんなり行くでしょ!」


解説、実況者の間からバチバチと火花が散り始める。そんな時、彼女らの頭の上には女性の丸い拳が目標を補足し、目標に向かって発射された。


ーーゴツンッ。


「はい、お見苦しいところ失礼しました。ちょっと待ってくださいね〜」


ーーシュゥゥゥ。


彼女らの頭から紛れもなく白い蒸気が発されている。それはきっと、蒸気ではないのだろうが。発している場所の赤く大きなタンコブが彼女らの親衛隊を黙らせる理由にあった。


「アス隊長・・・そんなに強く殴らなくても良いじゃないですか!」


「そーだそーだ!実況中に隊長のゲンコツミサイル食らわないといけないんだっつーの!」


「オイ、お前ら。後で飯奢ってやるから、頑張れ!」


彼女の笑顔とその言葉に、二人の実況解説者の心に再び火が灯った。



「お見苦しいところ失礼しましたー!では、選手ご登場お願いしまーす!」


((切り替え早っ!?後、扱い簡単すぎ!!))


観客席の親衛隊は、"今度ご飯誘おう"と心に決めたのだった。



控室から伸びる薄暗い廊下からは、再び白い蒸気が会場へ向かう青年の姿を隠す。当然、彼には蒸気を避けることなど何の造作もない。蒸気を振り払い、試合会場に姿を現した。


「ふはははははは!!この俺様に勝てるわけがないだろ!黙って、この試合を棄権(サレンダー)したらどうだ?」


リグルスの前には、巨漢でガタイの良い男が立っていた。男は上半身裸で下半身は汚れたジーパンを履いている。何ともミズボらしい姿で登場した彼はどう見ても三下程度。それに吐く言葉も三下程度。リグルスは肩を落とした。


「はぁ………やるしかないか。」


「何だテメェ!聞いてんのかコラァ!」


「聞いてるよ。半分だけだがな、三下の台詞なんかだいたい聞き流すだろ」


「この野郎ぉぉぉ!!!」


クラディールは、激おこな様子で開幕合図を待った。開幕速攻、殺してやろうと。そう思ったからだ。


「両者がいがみ合う中!試合スタートです!」


開幕速攻、リグルスに向かって走り出したクラディール。その巨漢でそこまでの速さが実現できるのはきっと、魔人であるがためだろう。

そのまま肩を前に突き出して、リグルスに向けてチャージをしようと突進した。


「は?」


リグルスは、突進してくる男を見据えた様子で空中を華麗に舞うとそれを回避。そのまま空中から力の込めた拳を彼の背中に叩きつけた。


「そんなもん、効くに入らねえ!」


「へー?お前はもう動けないのにか…」


リグルスの言葉通り、クラディールは足をガクガクと震わせながら地面に跪いた。当然、自分の意思ではない。


「なんだ……これ・・・」


「もうすぐで楽になれるから待ってろ」


彼は成されるがままに、地面に突っ伏して動かなくなった。


「ねえ、審判さん。相手、気を失ってるけど、俺の勝ちじゃない?」


「試合終了です!勝者は、リグルス・ブラッド選手!何が起こったのか私には理解出来ませんでした・・・。恐るべし、エゼル隊!今年の魔闘演戯は期待出来そうです!!」


ーー涅槃の強者(ニルヴァリン)特別席にて。


「セルシア〜、あんたんとこの弟さんでしょー?今の何が起こったのか説明してくれないかしら」バリムシャア


セルシアの隣でクッキーの袋を開き、大きめの音を立てながらソレを頬張る少女は先程の試合の説明をセルシアにさせようと前振りをした。


「あー、アレ?アレは、僕ら吸血鬼が一番楽に相手を倒す方法だよ。殺傷力はまるで無いから、動きを止める時とかに使うんだけど・・・」


「そういう長々しい説明じゃなくて!あれは何をしたのかって意味よ!ほんとグズなんだから……」


「そういうことか。アレは、自分の力を込めた拳を相手にぶつけた際に生じる多少の傷口から見えない管を侵入させて血液を奪い取るっていう技だよ。でも、あの場合。リグルスの魔王武器の効果はきっと、俺が本気を出してその技をしても届かないほどに強化された代物なんだろうよ。」


「あんたの本気!?ダメよダメだからね!こんなところで・・・・」


首を左右に振って辺りを見回す彼女の姿に少しだけ苦笑して"大丈夫だよ"と頭を撫でながら諭した。

涅槃の強者(ニルヴァリン)の中で最も凶悪と言われているセルシアは、彼らの中でも少しだけ恐れられている存在だ。

普段の彼は全く問題が無く、このように心優しい性格で周りを暖めるような感じだが、興奮し始めると"狂の人格"になり、三日は元に戻らない。

少女とセルシアを除く、涅槃の強者(ニルヴァリン)達はそうならないようにと心から願った。



「リグルスおめでとーっ!じゃあ、次は私の番だから行ってくるわね!」


「おう!応援してるぜ!」


サディと軽くバトンタッチを交わすと、リグルスはチトの待つ観客席へ、サディは自分の試合のために控室へ向かっていった。


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