影の薄い少年
「出来れば、忘れて欲しくなかったですが、過程はともかく結果的には良かったです。僕の名前は、エゼル・シスタ。気軽にエゼルとでも呼んでください。意気込みはそうですね・・・僕のこの体質を治すために魔闘演戯で三回連続優勝を目指します!」
青年の名は、エゼル・シスタ。
8歳の頃に親に存在ごと忘れられ、道路で餓死しそうになっているところを現在の世界の創設者である《元老院》に助けられる。それからというもの、自分の持つ異常な影の薄さを治すために様々な特訓と訓練を重ねるも意味はなさず、逆にどんどん影は薄くなる。
このままだと誰にも認知されない人間になり、彼は消えてしまう。
病名は《元老院》が付けた"消滅病"
治すためには、年に一度開かれる魔闘演戯で3回連続優勝をしなければならないという使命。
そのために、彼は拳を握った。
「((えええ?!何でこんなにかっこいい解説入ってんだよ!おかしすぎる・・))」
司令官は手に持っていたエゼルの個人情報資料の書かれ方に異様な格好良さを思い、若干引いた。
「ま、まあ、どうあれ、五人全員合格だ。((エゼルエゼルエゼルエゼル))エゼス、エゼディ、エゼルス、エゼ、エゼル!お前らは此れから、あのかの有名な・・・」
「「「おい!!」」」
エゼルとチトを除いた全員からの華麗なハモりからなる"おい!"で正気に戻った司令官はあまりの恥ずかしさに顔を手で覆って隠しながら続けた。
「キルス、サディ、リグルス、チト、エゼル!お前らは此れからこの世界で一番強く大きい魔法都市ニルヴァーナの生徒である新一年生として入学するわけだが、数々の困難もそりゃあある!それも全てこの五人で助け合って欲しい!俺からの話は以上だ!それじゃ、今から配るこの制服を着てニルヴァーナの入り口まで競争だあっ!」
司令官はそれだけ言うと、大きめの段ボールを僕ら五人の目の前に投げて走り去って行った。
「これから僕達、チームなんですね。隊長とかはどうなるんですかね?」
投げられた段ボールを開けて中身を見ている自分以外の四人へエゼルは感心したように問いかけた。
ーーしかし。
「そうだね。隊長は、確か学園長と司令官さんが話し合って決めるとか入学のガイドブックに書いてあったよ。私はチト、これからよろしくね!エゼル君!」
振り向いて挨拶までしてくれたチト以外は制服のデザインについて語り合ったりしている。
"まずは僕の存在を覚えてもらうのに根が上がりそうです"
エゼルは、心の中で誰に伝えるでもなくそっと囁いた。
「やっぱり、黒に赤ってデザインは最高だな!俺様の格好良さが更にアップしちゃうぜ!」
「黙れ!DT!!」
サディの強烈なまでの張り手と同時に放たれた暴言は、キルスの心までをも叩き飛ばした。
意気消沈したキルスをほっといて、四人は新しい制服に着替えた。
デザインは、ブレザーというよりも黒と赤の迷彩服のようなもので後ろにはフードが付けられている。
上下共に動きやすい伸縮素材になっているらしく、重みを感じずに動けるといった手の凝り度が異常な制服だと着てみて感心した。
「じゃあ、ニルヴァーナの入り口まで肩慣らしのつもりで走ろう!」
「「「OK!」」」
「うん!」
目を覚ましたキルスを急いで着替えさせて、エゼル達一行は魔法都市ニルヴァーナの入り口である転送魔法式巨大転送装置に向かって全速力で走っていった。
《魔法都市ニルヴァーナ》
遠い昔に魔王隕石が地球に落下した時に生じた莫大なまでの魔力を制御し、魔王武器として新たな兵器を生み出した《元老院》の一人であるソルト・インディラの創り出した巨大魔法都市。
この世界に百ある国の中で最も文明的に発達しており、人口も多く盛んな都市。
都市には巨大な結界魔法が貼られており外部からの攻撃や侵入を防いでいる。都市に入るためには、転送魔法式巨大転送装置にニルヴァーナで契約した者だけが得る手の甲に宿る紋章の力を流し込んで使うしかない。世界最強の都市と外国からは呼ばれている。
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