1話
ペンをはしらせる音が部屋に鳴り響く…
カリカリッ
ガタッ
「んっ、ふう〜…よしっ、これで小説完成っ! わっ!〆切間近だったなぁ〜… 明日これを担当者さんに出して…
終わりだ!!」
ピンポーン…
「? 誰だろ? はーい。」
今日は、誰かがくる予定は無いはずなんだけどなぁ…あぁ、でも、来るならあの子かな…そんな風に由美子は、考えながら玄関へと向かっていく。
ガチャッ
「ヤッホー! 由美子!小説作り終わった?
あっ、あがっていい?お菓子持ってきたからさ!」
この子は、私の友達 鞍田 伊佐美
(くらた いさみ)
私を小説の世界に、導いてくれた張本人。
私の親友です。
「うんっ、勿論! あっ、早くあがって!
寒かったでしょ?もう3月だけど、やっぱ、
まだ、冷えるからね。」
「やった〜! あっ、そうだ!小説読まさして! 前回の続きが気になってしょうがないんだよ〜 仕事中に落ち着きなさいって、叱られるぐらい。」
「えっ!? それはダメだよ!? ちゃんと仕事しなきゃ! でも、伊佐美らしいね。
通常運行だ。」
スタスタ
「あっ、机の上に、原稿置いてあるから勝手に読んでいいよ。 私はお茶入れてくるから。 ハーブティーでいい?」
ぶおっふぅー
伊佐美が、ソファーに倒れる音がした。
「お願いまぁーす くっ、由美子のいい匂いがする! 癒されるぅぅぅ…」
ガバッ
伊佐美が、ソファーから起き上がる音がして
そのあと、
「原稿だ〜!!」
と、叫んで、私の仕事部屋へと向かった。
「伊佐美は、いつも通りだなぁ〜。」
と、私は、のんきに独り言を呟き、ハーブティーを淹れるためにキッチンへと向かった
だから彼女は知らなかった。
リビングのテーブルに置いてある古い本が、 淡く光っている事に…