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プロローグ
Kは死んだ。
これから君に語ろうと思う「事件」は彼の不可解な投身自殺に始まる。
私の友人、K。
生前の彼が私に語った物語は、Kの死後に私が体験し、これから君に語るこの「事件」の物語だ。
私はKの人生を追体験している。この反復以外に方法はなかったのだ。
かつてKが私に彼の物語を話したように、今私はこの文章によって君に「私」の事件の顛末を話そう。
望もうと望まざると、すべての人間は繋がっている。
人と人を紡ぐ、<物語>は至るところにある。
いつか君も、私やKのように人の罪を事件として反復してしまうだろう。
そして君が最後に犯す罪は、君の物語を誰かに伝えることだ。
私たちの罪は決して贖えない。
結局Kも私も君も、一つの過程の物語を繋いでいくだけの駒にすぎないのだから。
終わりなき終わり。人生の反復。繰り返される罪の<物語>。
Kは、その絶望の先に終わりを夢見て、死んだ。
同じ「事件」を経験し今それを「告白」している私には、彼の死の意味がようやく分かりつつある。
すべてを君に伝えた時、私は彼の最後の気持ちも理解できると思う。