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孤独な姫君たちの蜜の駆け引き  作者: 和泉葉也
第五章 次代の女王と最後の別れ

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待ち合わせのメッセージ(4)

 門の前では十名ほどの兵士たちが槍を携え、イウス王に跪いて、鉄で出来た兜や鎧を取り外して素顔を見せていた。


 彼らも王の前では口を利かないように訓練されているらしく、こちらが何を語りかけても何の反応も示さない。一番背の高い、部隊長と聞いた青年に手の甲へ忠誠の口づけをさせると、そのまま強く頭を引き寄せて唇を奪った。


 さすがの衛兵も声を荒げて動揺し、静止しようとしてきたが構わずに部隊長の咥内に舌を送り込み、思い切り啜って楽しんでから、彼ら全員の解雇を告げた。


「突然で申し訳ないが、君たちの守り続けてきた伝統ある王の錫杖と銀のメダルは、先ほど不幸の事故があって破壊された。そう、不幸な事故があったんだ…。伝統は壊れるものだから、仕方ないね。ボクは中古品が嫌いだから、叔父上が下さった王冠だけを身に纏う事にするよ。


 それから、従僕たちを拘束していた枷は、退屈を嫌うイウス王の我がままによって解かれ、従僕の二人とも、ボクと言葉を交わしてしまった。王の護衛である兵士諸君まで王に向かって声を発して非難をし、おまけに部隊長は女王陛下と濃厚なキスに興じてしまった。

 しかも、数歩ではあるが王との快楽に身を委ねた結果、本来なら許されない王の居城の廊下に、動揺した君たち全員は踏み入れてしまった……」


 慌てて引き返しても、もう遅い。責任の所在を問うと言うならば、衛兵は磔にされて炎に焼かれる。


 やがて一人の一番若い兵士が決意し、お互いの胸に槍を突き立て合った。

 部隊長がそれに倣い、アーガイルの廊下は真っ赤な血の色で染まっていく。彼らを止める必要はない、静止する理由もない。職務を全うできず、惨めに自害した兵の命に価値など無かった。

 国王が目の前に居るというのに守りもせず、伝統だけを大事に思っただけの、幼かったあの日の自分を決して王妃に会わせはしなかった護衛たち。


 ここを抜けて居城に行けば、祖母である王妃が助けてくれるだろうと信じていた。

 高齢となった国王が弱り、カスティア派が占拠した王宮で居城から出て来られるはずもないというのに、何も知らなかった頃のエリヴァルイウスは、この先にあるものが救いだと思い込んでいた。


 返り血を浴びたガウンを脱ぎ捨て、居城の孤独な空間に帰っていく。

 ニーナとレインは、喉をナイフで貫いて絶命しているナタリーを前に戸惑っていた。

 言葉がもどかしいままの二人の説明を聞くと、姉妹も道連れにして自害しようとしたが抵抗され、仕方なく自分だけ喉を突いて果ててしまったらしい。


 二人に生きていたいのかと聞くと、陛下が好きだからと答えた。

 それから三人でナタリーを庭園の先に埋めてやり、姉妹の手を引いて元のエリヴァルイウスの住まいへと向かう。


 十人の兵士と一人の侍女が同時に命を落とした場所に、住むという国王は今後現れないだろう。母の友人を死なせたことを詫びて、初めて歩く城内に驚き続ける二人をかつてのベッドまで運び、それからようやく銀の王冠を外してから、退屈なクイーンは眠りについた。


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