表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/23

【第2話:勇気から絶望】

森の静寂の中、突然、遠くから悲鳴が響いた。

「助けて……!」

反射的に耳を澄まし、声のする方向へ駆け出す。野獣の体は軽やかに地面を蹴り、森の中を素早く進む。胸が高鳴り、恐怖と興奮が入り混じる。


すると、開けた林の中で、一人の女性が数匹の狼に囲まれているのが見えた。牙をむき、低く唸る狼たち。女性は必死に逃れようとするが、すぐに追い詰められていた。


「……怖い……でも……!」

素直な心が体を突き動かす。考える前に、野獣は女性の元へ走った。


狼たちは彼を見て一瞬立ち止まる。その瞳に映ったのは、恐ろしくも異様な醜い野獣の姿。低く唸り、全身から圧倒的な存在感を放つ野獣に、狼たちは驚き、逃げ去った。


女性は大きく息をつき、涙をこぼしながらも逃げようとする。

「大丈夫ですか?」と声をかける野獣に、女性は再び悲鳴をあげ、森の奥へ逃げていった。


――絶望。


怖がられてしまうのは想定内だったが、素直な心で助けたいと思ったのに、これほど拒絶されるとは。野獣は少し肩を落とす。


お腹が空いたことに気づき、木の実でも取ろうと、近くの木に手をかけた。軽く揺らすつもりが――木が根元から倒れた。


「……え?」


驚きのあまり後ずさる。手の力、腕の力、体全体の力……どれも現世の自分の桁違いだった。森の木を一撃で倒せる力が、自分に備わっている。


「ま、まさか……こんなに強いのか……俺……」


体を見つめ、改めて野獣としての力を実感する。恐怖の存在として見られる一方で、自由に動け、並外れた力を使える自分――そのギャップに、胸の奥がわくわくと熱くなる。


これから、この力をどう使うのか――想像するだけで、心が弾む。


森の奥で逃げた女性のことはまだ不安だが、まずは生き延びるため、そして力を試すために、野獣は森の中を歩き出す。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ