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カリオスの器  作者: titi
感染者ゼロ号
10/10

謎の存在。

深夜。


夢と現実の境があいまいになる、静かな時間。


神原カナメは、ふいに“落ちる”感覚で目を覚ました。


いや、目は閉じたままだったが――確かに、“どこか”へ引き込まれていた。


そこは、漆黒の世界だった。


空も地面もない。

色も音もない。


だが、真っ黒な闇の中心に――“誰か”がいた。


それは、カナメ自身だった。


白い服を着た、もう一人の神原カナメ。

ただし、目元には深い影が落ち、表情はまるで人形のように無機質だった。


その“もう一人”が、ゆっくりと口を開く。


「お前が選ばれた。だが、それは始まりに過ぎない」


「……お前は、俺か?」


「否。だが、かつて“そうだった”かもしれない」


問いへの答えが、禅問答のように返ってくる。


カナメは無意識に拳を握る。

冷たいはずの空間で、自分の心臓の音だけがやけにうるさく響いていた。


「なんの目的で、俺にこんな力を……。俺は何に巻き込まれたんだ」


「力とは、“受け継がれるもの”だ。

君の中で目覚めた“それ”は、長い眠りからようやく覚めた。

そして今、ほかにも――“器”は目を開けつつある」


「他にも……?」


「この街に、そしてこの国に。

いや、この星のあちこちに、同じように“選ばれた者たち”が存在する」


カナメの脳裏に、いくつかの顔が浮かぶ。


昨日の教室で異様な目を向けてきた白河ナオ。

そして、時折こちらを見てはすぐに視線をそらす、日向リコ。

誰よりも素早く、異常を感じ取る綾野ユイ――


「……これから、どうなる?」


「まだ語るには早い。だが、君はまもなく知る。

“器”たちが出会い、選別が始まる。

そして――それを導く者が現れる」


「導く者?」


「この星の“真実”を知る者。

そして、選ばれた“最初の器”――君の前に現れるだろう」


黒い世界に、青い残光が走った。


光の帯が空間を切り裂き、回転する歯車のような音が鳴る。


夢の中なのに、皮膚の奥が焼けるように熱を帯びてくる。


「――目を覚ませ、カナメ。

君の戦いは、すでに始まっている」


その声を最後に、世界が崩れる。


――目覚ましのベルが鳴った。


朝。


いつもの景色。光の差し込む天井。


けれど、カナメの目は決して“昨日のまま”ではなかった。

彼の眼には、確かに回転する歯車の残像が宿っていた。


次の瞬間、スマホが震えた。


未登録の差出人からのメッセージ。


そこには、たった一言だけ。


《器、集結セヨ。第一候補地:旧中央廃病棟》


カナメはそれを見つめ、唇をかすかに引き結ぶ。


誰が送ってきたのかもわからない。

だが、自分が“行くべき場所”であることだけは、何故か理解できた。


歯車は、回り続けている。

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