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電波

作者: 黒楓

今日の黒楓も真っ黒です!

 これは……オレ、鈴木良男の遺書代わりの独白だ。



「クラスメイト」なんて言うと、ヤツからボコボコに蹴られそうだが……大渕泰輝(おおぶちたいき)の家は大昔、首相を輩出した政治家の家系で、オヤジは外務大臣も務めた事のある国会議員、兄貴はこの間の選挙で……三つの政党から推薦を受け、30そこそこの若さで県知事に当選した。

 そんな“家”なんだからセレブの子女が通う様な私立中学へ行けば良かったのに……ヤツは地元の公立中学に通い、“我が物顔”で振舞っている。


 中一の時は別のクラスだったので“被害”が及ばなかったが中二で同じクラスになると……クラスメイトどもが“異質なオレ”をヤツへの“犠牲の子ヤギ”に仕立てた。

 オレはヤツの餌食となり……クラス全員からイジメを受けた。


 もちろん担任を始めとして教師は全員、『見ない振り』だ!

 そんな毎日に耐えかねて、ある日学校を休んだら……その日の内に担任が飛んで来て、()()()()()心配で塗り固められた甘言でオレと親の説得に掛かった。

 その必死の様に親は見事に騙され、オレだけが“悪者”となった。


 何の事は無い!

 全ては大渕泰輝の差し金で……

 ヤツのひと言

「鈴木を連れて来い!」

 で、担任は慌てふためいたのだろう。


 ただ、この一件以降

 ヤツのイジメは更に狡猾になり……証拠が見えない形での残虐さに拍車が掛かった。


 その内容をここに披露するつもりは無い。

 この独白はヤツを糾弾する事を目的とはしていないから。

 まかり間違って

「こんなやり方があるんだ!」

 なんて具合にイジメの方法が喧伝されるのは世の為にはならないから!

 オレがせっかく守ろうとする()()を……不必要に穢したくないから!!


 ハハハ


 こんないかにも厨二的な事を書いてしまうと……


 ますますオレの“行動”は誤解されるのだろうが……


 それもやむを得ない事なのだろう。


 なので一旦、筆を置く事とする。


 次章では、オレが“行動”に至る経緯を述べたいと思う。



 §§§§§§



 最初に見た夢では、大渕泰輝は壮年で……原子力委員に就任していた。

 “センセイ”と呼ばれていたから既に国会議員になっていると思われる。



 次に見た夢は、背広姿の二人の男が議員会館に居る大渕泰輝を表敬訪問するシーンで……二人の内の一人が「我が社はゼネラルエレクトリックと深い繋がりがあります。そして彼は上海電気の特別顧問でもあります」と頭部が禿げあがったもう一人の男を紹介していた。



 その次に見た夢は……てっきり中国人かと思っていた禿げ頭の男がハングル文字の書かれた書類をシュレッダーにかけているシーンだった。



 その次に見た夢は、()()()()()()()()()()()大渕泰輝とその秘書との会話だった


「総工費5兆円の話に50億円などと話しにならん! 銚子に原発を誘致するのにいったいくらバラ撒いたか! お前の方が知っているだろうが!!」


「よくご覧下さい。“フチキ商事”を介しての入金分だけで月々50億です」



 その次に見た夢は……滔々と(とうとうと)“外国語”で演説を垂れる……肥満で独特の服装をしている男の後ろ姿で……その先のモニターには千葉県の地図が映っている。


 ひとしきり演説を終えると男は“大仰な”身振りで目の前に置かれたボタンを押した。


 途端に「マンセー」「マンセー」との大合唱が起こった。



 その次に見た夢は……核戦争後の地獄絵図で……

 もうもうと黒い霧が立ち込め、時折、見える人らしきものは……すべてがドロドロになった“ゾンビ”だった……



 オレはこれらの夢を毎日繰り返し繰り返し見た。


 その夢達は……繰り返されるたびに鮮明になり……特に最後のゾンビの夢は、世界のあちこちの光景となった。


 これらは……

 大きなストレスを抱えているとは言え……()()男子の単なる想像が見させる夢などではない!!

 明確な未来予想図だ!!


 オレもあの“Dead Zone”に立たされたのだ!


 だとしたら!!


 オレの取るべき道もただ一つ!!


「もしヒトラーが台頭する前のドイツに行けたなら、あなたはどうするか?」と尋ねられたら……オレも「命にかえてもヒトラーを殺す」と答えるまでだ!!




 ◇◇◇◇◇◇


「ニュース速報をお伝えします。前外務大臣の大渕泰造氏の長男、大渕泰輝くんが同級生から短刀で複数回刺され、緊急搬送された病院で亡くなりました。犯人の少年も警察官がやむを得ず発砲した銃弾で頭部を損傷し亡くなりました」


 との報道から世に周知されたこの事件は……犯人の少年が遺した“独白”から極めてセンセーショナルに扱われ、一時は「デッドゾーン症候群」と言う言葉でマスコミを賑わした。


 でも『症候群』との言葉が示す様に……誰も、“彼が変更する前の未来”を信じる事は無かった。


 果たして真実はどうなのか??


 イジメで心を病んだ“電波系の”少年がその妄想の末に起こしてしまった惨劇なのか??


 でも、もしそうでなかったとしたら??……



 いずれにしても


 全てが()()()()()今となって


 知る由も無いが……





                         おしまい



もし、鈴木くんに……『神の見えざる手』が働いたとしたら


鈴木くんの事をとても悲しく思えます。



ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!


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