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ステージクリア to be continued

 さて、ことの顛末を話そう。

 結論から言えば、乃愛の学校で起こったいざこざも意外な形で収まることとなった。


 次の日、乃愛が学校に行くと、乃愛に罵声を浴びせた女子とその友達……彼氏に振られたという女子が2人揃って、乃愛に頭を下げてきたのだ。


 乃愛に罵声を浴びせたショートポニーの女子に至ってはなぜか涙ぐんでいるくらいだった。

 

 実は、ショートポニーの女子が学校であったことを、乃愛に言ってしまったことまで説明すると振られた女子が振られて悲しんでいることも忘れ、とてつもなく怒ったとのことで。


 謝らないと絶交とまで言われたショートポニーの女子はこうして乃愛に頭を下げにくることになったというわけだ。


 ちなみに、彼女を振ったその足で乃愛に告白してきた男子は、彼女たち2人から痛烈なビンタを浴びせられ、こちらも一応一段落という形に落ち着いたらしい。


 こうして見れば、全てが丸く収まってハッピーエンドに見えるかもしれない。

 けれど、1つだけ、ちょっとしたことが起きていた。


 それは、


「——にしても、優陽が風邪引くとはなぁ」

「まあ、さすがに夜通し川でもの探してたらどんな人間でも体調くらい崩すでしょ。疲れもあるだろうし、着替えあるのに濡れたまま結構放置したらしいしね」


 そう。優陽は夜通し川でキーホルダーを探すという無茶をやった結果、見事に体調を崩して、今日は学校を休むこととなっていた。


 拓人と梨央が肩をすくめて呆れている中、乃愛が落ち込みながら、口を開く。


「……私のせいで、本当に優陽くんに申し訳ない」

「何度も言ったけど、乃愛ちはほんとに悪くないからね? キーホルダー落としたのだって乃愛ちのせいじゃないし、探すのだって私たちが手伝うって言ったのに断って1人で探すって決めたのは優陽くんなんだから」

「そーそー。これに懲りたら1人で無茶なんてするなって話」

「ま、ちゃんと私たちに電話をかけて頼ってくれたのはプラスだし、赤点はギリギリ免れたってことにしといてあげよ」


 散々な言いようだが、口調は仕方ない奴だ的なニュアンスで、ちゃんと3人なりに優陽を理解し、慮っての発言だった。

 その証拠に、次いで出てきた話題は見舞いのことだ。


「見舞いに行ってやりたいところだけど、今日バイトがあるんだよなぁ、オレ」

「私もー。空と乃愛は行くんでしょ?」

「うん。結構熱もあるらしいし、なにか色々と買っていってあげようかなって。ね、乃愛ち」

「ん。財の限りを尽くす。なんなら店ごと買い取る」

「「「いやいやいや」」」


 自分のせいで体調を崩した優陽の為にとにかくなにかしたい乃愛が大真面目な顔で意気込むと、3人が声を揃えた。


 そんなこんなで、現在、空と乃愛は優陽の部屋にお見舞いに向かっているところだった。

 

 他愛もない会話をしながら歩く中、


「——空ちゃん」

「んー? なにー?」

「私、優陽くんが好き」


 乃愛が切り込んだ。

 そんないきなりの宣言にも、空は「……そっか」と落ち着いたトーンで呟くだけだった。

 これには、逆に乃愛の方が肩透かしを食らった気分になって、驚いてしまう。


「……驚かないの?」

「んーまあ、絶対こうなるって分かってたからねぇ」


 ほんの少しだけ苦笑を漏らした空が、空を見上げながら「あーあ、もう気付いちゃったのかー」と零した。


「……後悔とか、してないの?」

「え? なにが?」

「私に好きって気持ちがどういうことなのかは、自分で見つけるしかないってアドバイスしたこと。あれがなかったら、もっと気付くのが遅かったと思うから」


 もし、あの時の問答がなかったら、きっと好きという気持ちに気が付かないまま、優陽の傍にい続けることになっていただろう。

 

 いずれは気付いていただろうし、好きになっていた。

 どんなに気持ちに気付くのが遅れたとしても、絶対に好きになっていたことは疑わない。


 けれど、その頃にはもう手遅れになっている可能性だって十分にあった。

 結果として、空は恋敵に塩を送ることになってしまったわけで、そのことをどう考えているのか。

 

 乃愛からの問いかけに、空は少しだけ困ったように笑う。


「うーん、まあそりゃ……100パー後悔してないって言ったら嘘になるよね」

「……」

「けど、感謝もしてる」

「感謝?」

「うん。好きな人が誰かを助けてるカッコいい姿を見られたからね。この人を好きになって間違いじゃなかったなーって思えたんだ。……なんて、こんなこと言ったら乃愛ちのトラブルを喜んでるみたいになっちゃうんだけどね」


 もちろん空にそんなつもりは微塵もないし、乃愛だってそれは分かっているので、わざわざ目くじらを立てたりはしない。

 乃愛は静かに話の続きを待つ。


「乃愛ちが気持ちに気付いてる間に、私はもっと優陽くんが好きになったんだよ。だから、まだ追い付かせてあげない」


 空が勝気に笑ってみせる。

 

 ——同じ舞台には立ってるけど、気持ちの強さでは負けてないからね?


 空が言外に含んだ意味が伝わったらしく、乃愛の眉がぴくりと動く。

 そして、乃愛は。


「……空ちゃんも知ってると思うけど」

「うん?」

「白峰のえるは超が付くほど負けず嫌い」


 乃愛は、それはもう下手くそでぎこちない作り笑いを浮かべ言う。

 けれど、その笑顔は不思議なことに誰がどう見ても、不敵な笑みに見えるものだった。

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