「鳳皇丸、フォールダイブキック!」
ガッシャーン
鳳皇丸は太耀のこの命令と同時に、更に高度に飛翔し、火流羅ガイストの胴体に上の方から蹴りを入れた。
「蹴り飛ばせない!」
「甘いわ!」
しかし火流羅ガイストは、身体を大きく振って鳳皇丸を吹き飛ばす。
「わっ! スセリ、危ないから離れてろ」
太耀がそう恵理花に言うと、恵理花は心配そうに言い返す。
「でも……」
そんな恵理花に、スセリが念話で言葉を続ける。
(「大丈夫よ、それに貴女に何かあったら元も子もない」)
そう言われても納得していない恵理花の身体を、スセリは強引に鳳凰丸と火流羅ガイストから遠退かせる。
一方鳳皇丸と火流羅ガイストは、互いを警戒しながら空を飛行していた。
(天狗丸の力が強くなってる? だったら……)
そう考えた太耀は、鳳皇丸に命令をする。
「鳳皇丸、火流羅ガイストの翼を狙え。言くぞ、ソーラーカッター!」
「何をする気か知らんが、受けてくれよう!」
天狗丸がそう言っている間に、両翼に日光エネルギーを込めた鳳皇丸の翼は、金色に輝き、鳳皇丸は火流羅ガイストの片方の翼目掛けて突っ込んで行く。
ガッシャーン
そしてその金色の翼で、火流羅ガイストの片方の翼を切断した。
「何と、翼が!」
天狗丸は真面目に驚き考える。
(日の力で儂の力を祓うとは! ……いや流石に考え過ぎか、とは言え……)
鳳皇丸は空中でUターン。
太耀は片方の翼が切り取られた、火流羅ガイストの姿を確認して言う。
「良いぞ 鳳皇丸、もう一度!」
そう言って太耀はもう一度、火流羅ガイストに攻撃を仕掛けようとするが……
「なめるな、小僧!」
ガシャリ
ドゴーン
天狗丸にそう言われて、今度の攻撃は火流羅ガイストに躱された上で、更に足を嘴で捕まれ、カウンターで学校の屋上に再度鳳皇丸は叩き付けられた。
その衝撃で、小学校の一部が崩壊した。
(太耀君!)
驚いた恵理花は慌てて鳳皇丸の所へ向かい、スセリも驚いて天狗丸に念話で怒鳴る。
(「やり過ぎよサルタ!」)
★★★★
子供達が集まっているグラウンド。
鳳皇丸の落下の衝撃で学校が壊れたのを見て、葉司と北斗は結界に駆け寄って太耀に向かって言う。
「おい、大丈夫か!」
「鳳皇丸!」
叫ぶ二人を見付けた渡辺先生は言う。
「二人共、危ないから離れろ!」
しかし葉司も北斗も渡辺先生の言葉通り、結界から離れる気は更々無い。
6、7、8、9、10秒経っても鳳皇丸は動く気気配を見せず、不思議に思った葉司はある事を考え北斗に言う。
「もしかしてアイツ、気を失ってんじゃ?」
「そんな、どうしよう!」
北斗がそう言葉を返しオドオドしていると、渡辺先生が葉司と北斗に怒鳴る。
「二人共、離れろと……」
そう言って二人の元にやって来た渡辺先生が、二人を結界から強引に遠ざけようとすると、葉司がそれを振り解き慌てながら言う。
「今はそれ所じゃねえ。た……鳳皇丸が気を失なっているかも知んねぇんだ!」
「鳳皇丸って、あの赤い鳥ロボットの事だよな?」
渡辺先生はそう言って、葉司や北斗と共に鳳皇丸に目を向ける。
鳳皇丸は火流羅ガイストから攻撃を仕掛けられており、その攻撃から鳳皇丸を恵理花が結界を張って護っていた。
(あのままだと恵理花も不味い、早い所太耀を起こさねぇと……)
(あのままだと恵理花ちゃんも危ない、早く太耀君を起こさないと……)
葉司と北斗はそう思い、ほぼ同時に渡辺先生に言う。
「「先生、手伝って!」」
そう二人同時に言われた渡辺先生は、驚いて反射的に質問する。
「何をだ?」
「鳳皇丸を起こすのをだよ!」
葉司がそう言うと、北斗も続けて言う。
「気を失ってるんなら、呼びかければ起きるはず!」
渡辺先生は少し考えたが、葉司と北斗が余りに真剣な顔をしているので、覚悟を決める。
(……恥かしくない、恥かしくない)
そう心の中で自分に言い聞かせた渡辺先生は、鳳皇丸に向かって言う。
「起きろ鳳皇丸!」
その声はかなり大きく、他の生徒や先生達の注目を集めた。
「起きろ鳳皇丸!」
「目を覚まして!」
続けて葉司と北斗も大声で叫ぶと、それと見ていた子供達がざわめき出す。
「渡辺先生、コレは一体?」
一人の先生が、渡辺先生に近寄って来てそう聞くと、渡辺先生は少し恥ずかしそうに答える。
「生徒に頼まれまして。あの鳥型ロボット気を失なってるみたいなので、目を覚ますようにと……」
ざわざわ
ざわざわ
渡辺先生の説明で、子供達は更にざわめいて……
★★★★
(……頭がくらくらする)
太耀は気が付きそう思うと、鳳皇丸は恵理花に結界で護られていて、更に離れた所から声が聞こえている。
それは、大人と子供の入り混じった声。
「起きて!」
「戦え!」
「ガンバって!」
不思議に思った太耀は、スセリに聞く。
「スセリ、一体何が起きたんだ?」
「良かった……気が付いて、怪我は無い?」
その声は、本当に心配そう。
「怪我しないって言ったのは、スセリだけど?」
そう返した太耀に、スセリは少し嬉しそうに言い返す。
「ゴメンなさい、そうだったわね…… 鳳皇丸、コレは貴方への応援よ」
太耀はそう言われ、嬉しさが込み上げて来る。
「学校壊す奴なんてやっつけろ!」
「鳥さんガンバレ!」
「悪い奴に負けんな!」
学校の皆の声援に耳を傾けながら、スセリは思う。
(サルタが加減を失敗した時は本当に心配したけど、良い方に転んだみたいね)
「皆、貴方が負けるとは思ってはいないわよ?」
スセリにそう言われ、太耀は自信満々に言う。
「当たり前さ、まぁ見ててくれ」
(とは言え、どうする…… 翼を片方切り落とされても飛んでるって事は、本体をバラバラにでもしないと動きは止められない。でもさっきみたいにカウンターを喰らったら………… そうだ目眩まし!)
太耀の頭の中に、少年漫画のある技が浮び上がり、太耀は鳳皇丸に命令する。
「鳳皇丸。スセリの結界が消えたら、火流羅ガイストの首にソーラーカッター。ただし攻撃前に協力な光の目眩まし。それから……」
そこまで言って太耀は、今度は恵理花に向かって恥かしそうに言う。
「さっきは危ないから離れてろ何て、偉そうな事言ってゴメン。ありがとうスセリ、今度こそ危ないから退いてくれ」
太耀の今の言葉が、自分へ向けたモノだと理解した恵理花は、太耀に見える様に頷きその場を離れる。
一方で鳳皇丸への目眩ましの命令は、天狗丸にも聞こえていた為、天狗丸は考えている。
(成る程、目眩ましを受けても防いでも相手を見失う。そろそろ引き際だな……)
鳳皇丸は体勢を立て直し、恵理花が結界を解くと同時に、火流羅ガイストに突っ込んで行く。
次の瞬間、一瞬火流羅ガイストは光りに包まれた。
「くっ、彼奴は何所に!」
光りが消えると、慌てふためいた様に天狗丸がそう言い、次の瞬間火流羅ガイストの首は、鳳皇丸のソーラーカッターにより本体と切り離される。
ガッシャーン
その首を、両足で掴んだ鳳皇丸は屋上の出入り口近くに居る、恵理花の元へと運んだ。
屋上に火流羅ガイストの首を置くと、太耀は恵理花に言う。
「スセリ、校長先生を!」
太耀の言葉の後、スセリは恵理花に念話で言う。
(「恵理花、私の言う呪文を唱えて」)
「オーリゴー、アニムス、アエテルヌス、プラエタリタ、レディーレ!」
恵理花がスセリの言う呪文を続けて唱えると、火流羅ガイストの首は校長先生へと戻って行く。
「良かった、後は……」
そう太耀が言って、振り向いた鳳皇丸の視界、役40メートル程先には火流羅ガイストが居る。
「これで終わりだ天狗丸!」
太耀がそう言うと、天狗丸が言葉を返す。
「人質が居無くなったから勝てると……――」
しかし天狗丸の言葉を無視し、太耀は鳳皇丸に命令する。
「目標は火流羅ガイスト。鳳皇丸、サンライトレイ!」
太耀の言葉と共に、火流羅ガイストは集約された太陽光の光りの柱に包まれた。
校舎のサンライトレイの当たっている部文は、ミシミシ音を立てながら壊れて行く。
「ぬっわぁぁぁ!」
天狗丸は光りに見を焼かれながら、そう叫び思う。
(収穫は上々か。加減を誤った事は詫びよう少年)
サンライトレイが消えると、火流羅ガイストの姿は無い。
「勝ったのか?」
翔の問いに答える様に、鎮守の結界が消えていき、壊れた校舎が元に戻って行く。
スセリは太耀に言う。
「鳳皇丸、勝者の名乗りを上げなさい。応援してくれた皆の為にも」
そう言われた太耀は、スセリの言葉を不思議に思うが、天狗丸の言葉を思い出し納得した。
「鳳皇丸、皆の前に行くぞ!」
鳳皇丸は太耀の言葉を聞くと、グラウンド上空に移動し、高度を落として生徒や先生達に近付く。
生徒や先生達は、壊れた学校が元に戻ったので驚いている。
太耀は、なるべく声色を変えて言う。
「ありがとう皆、天狗丸は僕がやっつけた。もう心配しなくてもいい」
それを聞いた生徒や先生達は一斉に喜ぶ。
わー
わー
太耀は更に続ける。
「多分、アイツ等はまた現われるだろう。……でも安心してくれ、僕等が君達を必ず護って見せる」
「鳥さん、名前は?」
一人の女の子が鳳皇丸にそう聞くと、太耀は少し考えて言う。
「僕の名前は光天の守護者、鳳皇丸!」
そう言い終わると、鳳皇丸は光りの珠に成り、そのまま消えていった。