ドガシャン
太耀の命令で、鳳皇丸の蹴りが龍蛇丸を襲うが、龍蛇丸は蹴りをそのまま受け止めた。
「やっぱり、鳳皇丸じゃパワーが足りないか」
北斗と、そう呟いた太耀とに向かって、葉司は通信機能越しに言う。
「お前等、俺と龍蛇丸なめんな!」
そう言った葉司が、狼王丸を艮比良の刀ごと投げ飛ばそうとしたので、北斗は艮比良の刀を消滅させ、太耀も鳳皇丸をその場から退避させる。
鳳皇丸が龍蛇丸の上空から退避し終わると同時に、今まで黙っていた虚蝶が、埜依丸を龍蛇丸の頭上に移動させ、埜依丸に命令する。
「埜依丸、鳳皇丸のさっきの攻撃をマネて。フォールダウンキック!」
ドガシャン
「うわっ!」
北斗と太耀に意識が集中していた葉司は、風の音も有って、通信機能から流れる虚蝶の様子と声をキチンと確認しておらず、先程の虚蝶の声で虚蝶の行動に気付き、急いで埜依丸の姿を確認しようとする葉司だか、その前に蹴りを受けて龍蛇丸はよろめき、攻撃の衝撃を受けた葉司は悲鳴を上げた。
葉司の様子を通信用の鏡で確認した虚蝶は、不安になって通信用の鏡越しに、葉司に申し訳なさそうに謝る。
「ゴメン、大丈夫?」
「練習なんだから気にすんな」
葉司が通信用の鏡越しにそう言ってくると、今度は太耀が通信用の鏡越しに、虚蝶に文句を言う。
「おい虚蝶、人の技をマネするんじゃない!」
少し不機嫌そうな太耀に、埜依丸を鳳皇丸の近くに移動させた後、虚蝶は通信用の鏡越しに太耀にも謝る。
「ゴメン太耀君。今日初めて臣器使ったから、良い方法思い付かなくって……」
「虚蝶ちゃん。もしかして、臣器使ったのこれが初めて?」
北斗が通信用の鏡越しに、少し驚いて虚蝶にそう聞くと、虚蝶は首を横に振り返事を返す。
「朝、みんなに会った後に練習はしたよ」
「おい、仕切り直しのムダ話しは終わりだ。行くぞお前達!」
通信機能越しに葉司はそう言って、龍蛇丸が鳳皇丸と埜依丸に近付いて来た。
しかし龍蛇丸と鳳皇丸、埜依丸の間に、狼王丸の作った巨大な金属の壁が突然現われる。
葉司は龍蛇丸の移動速度をゆっくりにして、流鱗纏の風を尻尾のへ集め、風の刃を作るとその刃で、目の前の金属の壁を真横に薙ぐ。
ブオン
ッカシャン
すると龍蛇丸により、上下に切り分けられた金属の壁の上部が、音を立てずり落ち始めた。
スーゥ
何処からか、ずり落ちる音とは別に金属音がする。
ガコン
ガコン
ガコン
それと同時に、葉司から見える龍蛇丸の視界が少し暗く成り、それに気付いた葉司が頭上を確認すると、狼王丸が龍蛇丸に飛び掛かって来ていた。
(!)
驚いた葉司は、無意識に龍蛇丸をその場から数メートル退かせ、空中で動きの取れない狼王丸に風の刃を叩き付けた。
ブオン
ガシャン
「うわっぁぁぁぁ!」
北斗の悲鳴と共に、狼王丸はそのまま、ずり落ちている金属の壁が地面に落ちるのとほぼ同時に、地面に叩き付けられる。
ドガシャン
「あっぶねぇ…… おい北斗、大丈夫か!」
葉司は北斗を心配し、通信機能越しに北斗にそう言うと、北斗が少しの沈黙の後、返事を返す。
「……何とか大丈夫」
その言葉の後、龍蛇丸達の様子を見ていたスセリが、北斗に念話で言う。
(「北斗は失格ね。惜しかったけど、貴方にしたら思い切った戦法取ったわね」)
(「……気のせいだよ」)
念話でそう返事をした北斗は、虚蝶にその事を知らせる事も含め、通信用の鏡越しに、気持ちを声にして出す。
「ボクは失格だって。もう少しだったのに、残念だなぁ……」
「北斗はもう少し離れてろ。これで残りは二器、言くぞ!」
通信機能越しにそう言って、狼王丸が龍蛇丸から遠ざかるのを確認した葉司は、流鱗纏の風を刃から防璧へと戻した。
「僕も、あんな事出来たらいいんだけど……」
虚蝶がそう呟くと、刻代が念話で答える。
(「出来るわよ、自分で見たモノに限るけど」)
(「本当?」)
(「ほら、龍蛇丸が来るわよ!」)
刻代との念話に意識が向いていた虚蝶は、龍蛇丸の接近に気付かず、弾き飛ばされそうになり叫ぶ。
「うわ!」
「虚蝶、何ボーッとしてるんだ!」
太耀に通信用の鏡越しに怒られ、虚蝶は少し俯いて謝る。
「ゴメン……」
(「あら、怒られちゃったわね」)
からかう様にそう念話で言った刻代に、虚蝶は少し怒って念話で返す。
(「何だよ!」)
(「私に当たらない。ほら、鏡の力を教えてあげるから、地上に降りなさい」)
刻代に念話でそう言われ、虚蝶は埜依丸を龍蛇丸から遠ざけ、地上に降ろす。
「おい虚蝶、何かする気か?」
太耀が核の鏡越しにそう聞くが、虚蝶からの返事は無い。
( 「虚蝶、まずは狼王丸に成ってみましょうか。狼王丸の方を向きなさい」)
刻代の念話の遠り、虚蝶が埜依丸の視界を狼王丸の方に向けると、刻代は念話を続ける。
(「これから私の言った事を続けて言いなさい。鏡映擬似、狼王丸」)
しかし太耀の言葉で、虚蝶の意識は逸れた。
「虚蝶、葉司がそっちに向かったぞ!」
太耀が通信用の鏡で教えた通り、虚蝶の視界の外から埜依丸に、龍蛇丸が迫っている。
虚蝶は龍蛇丸を見付ける為、埜依丸の視界を変え様とするが……
(「目を逸らしちゃ駄目。さぁ早く呪文を」)
刻代からの念話で、虚蝶は再度狼王丸を見詰め、呪文を唱える。
「鏡映擬似、狼王丸!」
虚蝶がそう言い終わると、埜依丸は白銀色に変わり、光り輝きながら姿を変えて行く。
突然の事に、葉司は龍蛇丸を埜依丸から遠避け、太耀は驚いて様子を見守っている。
発光を終えた埜依丸の姿は、オッドアイが逆な狼王丸に変わり、更に虚蝶の居る場所が、狼王丸の核の在る場所と同じ装いに変わった。
「ワオーン!」
埜依丸が遠吠えを終えると、刻代が虚蝶に念話で言う。
(「貴女から見えていないけど、埜依丸の姿は狼王丸に変わったわ。コレでたぶん金属の生成が出来るはずよ」)
(「たぶんって、刻代ちゃん……」)
(「私も始めて作ったから、よく分かんないのよね、為しに壁でも作ってみてよ」)
刻代が念話でそう言ったので、虚蝶は思う。
(そんな勝手な……)
困っている虚蝶に追い討ちを掛けるかの様に、埜依丸の姿が変わった事に驚いた太耀、北斗、葉司が同時に虚蝶に、通信用の鏡越しに来く。
「虚蝶、コレはどう言う事だ?」
「虚蝶、コレどう言う事?」
「虚蝶、コレどうなってんだよ?」
しかし虚蝶に答えられるはずが無い。
(そんな事言われても、僕に分かるはず無いじゃん……)
そう思った虚蝶は、刻代に念話で呼び掛けてみるが……
(「刻代ちゃん、聞いてる?」)
しかし刻代からの反応は無い。
不安から、胸が高鳴っている虚蝶は考える。
(どうしよう…… 違う、そうじゃなくて……)
俯いて考えながら沈黙している虚蝶に、太耀が通信用の鏡越しに強めに聞く。
「おい虚蝶、どうなってるのか聞いてるだろう!」
太耀の言葉に覚悟を聞めた虚蝶は、一度深呼吸をしてから、出来るだけ大声で言い返す。
少し小馬鹿にしたリアクションを取りながら。
「知りたいなら捕まえてごらんよ。今度は僕が葉司君の代わりをやってあげるから」
そう核の鏡越しに言い返された翔は、少し怒って言い返す。
「何バカな事いってるんだ虚蝶。真面目にやらないと、もう練習に付き合ってやらないぞ!」
怒る太耀に、虚蝶は更に小馬鹿にした様な態度で言い返す。
「あれれぇお兄ちゃん、年下の女の子に勝つ自信無いの?」
それを聞いて太耀はムッとした。
そして力強く、核の鏡に向かって言う。
「いいだろう、そのケンカ買ってやる! 北斗は判り辛いから動くなよ、あのバカに僕の力を見せてやる。鳳皇丸、埜依丸を上空に持ち上げて、動きを止めるぞ!」
太耀がそう言い終わると、鳳皇丸が凄いスピードで埜依丸に近付いて来た。
「うゎ、こっち来た! 埜依丸、とにかく逃げて。逃げる方法は君に任せるから」
そう言った虚蝶の命令に、埜依丸は吠えて答える。
「ワオーン!」
そして埜依丸は、近付いて来る鳳皇丸から逃げ出した。
ガコン
ガコン
ガコン
「アイツ等は何やってんだ?」
葉司がそう呟くと、それを通信用の鏡で見ていた北斗が、通信用の鏡越しに葉司に聞く。
「たしかに。でも太耀君が葉司君以外と、あぁ言う事するの珍しいよね?」
「そう言うんじゃなくてさぁ……」
通信機能越しにそんな会話をしている二人に、スセリが慌てた口調で念話を遣す。
(「三人共、いったい如何なっているの?」)
一方太耀はスセリの念話を無視し、鳳皇丸を埜依丸で追っている。
ガコン
ガコン
ガコン
「待て虚蝶!」
「待てと言われて、待つバカ何ていないよ?」
太耀にそう言い返した虚蝶に、刻代から念話が来る。
(「何やってるの貴女。スセリに怒られる前に本当に逃げるわよ、さよならの挨拶でもする?」)
(「それじゃあ、力使ってみるから40秒待って!」)
念話で刻代にそう返した虚蝶は、俯いて埜依丸に小さな声で指示を出す。
「持ち上げられたら5秒後に……」
ガコン
ガコン ガガゴン
その命令を聞き、埜依丸は逃げるのを止めると、わざと身を翻し隙を作った。
太耀はその行動に合わせ、鳳皇丸に命令をする。
「今だ、掴まえろ鳳皇丸!」
「クゥワッー」
ドガシャン
命令を受け鳳皇丸は鳴きながら急降下。
埜依丸の尻尾を掴むと、そのまま強引に空へ持ち上げた。
「どうだ、これで逃げられないだろ!」
そう言った太耀の言葉を無視して、 虚蝶は小声でカウントを取っている。
「3、2、1…… 今だ埜依丸!」
ガガゴン
虚蝶の言葉と共に、埜依丸に生成指定していた二本の金属柱が、タイムラグで地面から鳳皇丸の翼を打ち、その衝撃で鳳皇丸は埜依丸の尻尾を離してしまう。
「うっあ!」
ダメージの揺れに由る太耀の叫びが終わる頃……
ガシャゴン
地面に落ちた埜依丸からも、虚蝶の悲鳴が聞こえる。
「ぅわっあ!」
(……そろそろ40秒ぐらいかな?)
そう考えた虚蝶は、埜依丸に言う。
「埜依丸、起き上がって」
虚蝶の言葉で埜依丸が起き上がると、虚蝶は北斗達の方に埜依丸を向け、言葉を続ける。
「練習に付き合ってくれてありがとうみんな。それじゃまたあし……じゃあね」
言い終わった虚蝶の姿は、埜依丸の姿共々河川敷から消えた。
そしてスセリや恵理花の意思とは関係無く、鎮守の結界が崩れ去って行く。