その声に虚蝶が埜依丸の視界を下の方に向けると、狼王丸が埜依丸の方を見ていた。
「通信用の鏡って何?」
北斗にそう聞き返す虚蝶だが、それに答えたのは太耀。
「狼王丸の力で、僕等は互いの姿を確認出来るように成ってるんだ。離れてても会話も……――」
しかし龍蛇丸の力で、重機を浮かして運んでいる葉司が、三人に向かって言う。
「おい、お前等。ムダ話ししてないで、重機運ぶの手伝えよ!」
「ごめん。でも言い出しっぺのボクが言うのも何だけど、試して、この仕事は狼王丸には無理みたい」
「何だよソレ?」
葉司が呆れた様に北斗にそう言い返すと、スセリが北斗に提案をする。
「コレばかりは仕方がありません。その変わり狼王丸には、後で別の仕事を頼みます」
その後、5機の重機が無事河川敷から出されると、恵理花が再度鎮守の結界を張り、葉司、太耀、虚蝶に言う。
「三人共ご苦労様」
「ねぇ虚蝶。さっきの話しだけど、貴女も通信用の鏡を狼王丸から創って貰ったら?」
スセリは恵理花の言葉の後そう続け、葉司、北斗、太耀、恵理花に念話を送る。
(「皆、少し話しを合わせてくれるかしら?」)
念話を送ったスセリは、念話を切って思う。
(通信用の鏡の話しが出たのは有り難い、もしかしたら核の在る場所の風景が分かるかも知れない。それにしても子供達の反応を見ると、初対面の子に対する対応には感じ無いんだけど……)
一方、スセリに通信用の鏡の事を提案された虚蝶は、様子を見ていた刻代に念話で相談をしていた。
(「どうしよう、刻代ちゃん?」)
(「……この話は受けましょう。通信用の鏡がどの様なモノかは知らないけど、私の力で如何にか成ると思うし」)
(「うん……分かった」)
「分かった。狼王丸、通信用の鏡お願いして良い?」
刻代との念話を終えた虚蝶は、北斗に向かってそう言い、その言葉の意味をスセリは考える。
(今度は乗って来た……と言う事は、相手がどんなモノか理解していないのか、それとも私の考え過ぎか……)
狼王丸の力で葉司は右側に浮いている白銀の剣に、北斗は新たに現われた30センチ解の青銅鏡に、太耀は目の前の核の青銅鏡に虚蝶の姿が映し出され。虚蝶の方は海面から3枚の30センチ解の白銅鏡が現われ、目の前に浮かび上がり太耀、北斗、葉司の姿をそれぞれ映し出す。
「ねぇ虚蝶ちゃん、ボク等の姿見えてる?」
北斗にそう良われ、虚蝶は頷き言う。
「見えてるよ。それと……呼び捨てで良い」
「そうだぜ、男で、ちゃん付けなんて恥ずかしいったらねぇ」
そう続けた葉司に、北斗が言い返す。
「あれ? ボクは女の子だと思ってたけど?」
「僕は女の子だよ」
虚蝶は葉司にそう言い返し、心の中で言う。
(今はね)
その言葉を聞いて、葉司は虚蝶に頭を下げて謝る。
「わりぃ、僕なんて言うからさぁ」
葉司のそんな言葉を聞きながら、太耀は思う。
(良かった、女の子って自信持てなかったんだよな。コレで無駄な恥じをかかなくて……――)
そんな太耀に、急にスセリから念話が来る。
(「太耀、聞こえてる?」)
スセリから急に念話が来た太耀は少し驚くが、落ち着いた振りをして念話を返す。
(「何か様、スセリ?」)
(「虚蝶の映った鏡、他に何か映ってない? 居る場所とか……」)
(「いや、て言うか虚蝶の姿以外真っ暗。気になるなら葉司や北斗にも聞いたら」)
(「そうですか、……ありがとう」)
念話でそう言ったスセリは考える。
(たぶん葉司や北斗に聞いても、答えは同じでしょうね。鵺や胡蝶なんて名称を子供が付けるはずないし、やはり背後に誰かが居るはずだけど……)
「スセリ、そろそろ練習始めようぜ」
考えていたスセリは葉司にそう言われ、虚蝶の正体を考えるのをいったん止めた。
(……判らない事を考えてても仕方が無いか、今の所害は無さそうだし)
そう考えたスセリは、葉司に向かって言う。
「そうね、それじゃあ葉司。貴方は風を操る方法と木々を生成する方法、どっちを知りたい?」
スセリにそう言われ、葉司は少し考えてから答えを返す。
「風を操る方法が行い」
「どうせ葉司の事だから、そっちの方が格好良いとかで決めてるんだろう?」
太耀にそうからかわれた、葉司は少し怒った口調で言う。
「悪いかよ!」
「ほらほら、ケンカをしない。それでは埜依丸の練習を兼ねた、龍蛇丸の風を操る練習を始めます。虚蝶は私と念話出来ないみたいだから、三人の誰かから聞いて頂戴。良いわね」
葉司、太耀、北斗と虚蝶に向けてスセリがそう説明すると、四人は返事を返す。
「おう」
「あぁ」
「「うん」」
四人が返事を返すと、スセリは話しを続ける。
「それじゃあ、これからは念話で指示を出します。龍蛇丸は結界の中心に、他の子達は結界の四隅で待機していて」
「あいよ」
葉司の返事と共に、4器の臣器はそれぞれの位置に動き出す。
ガコン ガコン ガコン
4器の臣器が特定の位置に付くと、スセリは球状の結界を恵理花の周りに張り、葉司に念話で話しかける。
(「それじゃ葉司、説明を始めるわよ」)
(「おう」)
(「この力は人型では使えないから覚えておいて」)
(「分かった」)
(「流鱗纏と龍蛇丸に命令してみなさい」)
スセリに念話でそう言われ、葉司は少し考えてから龍蛇丸に言う。
「……龍蛇丸、流鱗纏!」
ブオォォォォン
すると風の音と共に、龍蛇丸が内部共々小刻みに揺れ出した。
「何だコレ?」
驚いている葉司にスセリは、龍蛇丸から恵理花を遠ざけ、念話で説明をする。
(「今、龍蛇丸は風を纏っているのです」)
その説明を聞いている間も、葉司の感じる揺れは少しずつ強く成って行く。
(「葉司、命令で止めないと恵理花を吹き飛ばしかねないから気を付けてね」)
スセリに念話でそう言われ、葉司は慌てて龍蛇丸に命令する。
「風を飛めろ龍蛇丸!」
すると龍蛇丸を取り巻いていた風は消滅し、それを確認してスセリは葉司に念話で言う。
(「さっきの状態で、太耀のやっていた様な事をやれば良い武器に成るでしょう。ただし風を纏った状態だと、移動や行動が不安定に成ります。それと結界内には結界を張っているとは言え、恵理花が言る事も忘れないで」)
葉司にそう説明したスセリは、今度は北斗に念話で頼む。
(「北斗、悪いけど龍蛇丸の近くに、的になる金属柱を作ってくれないかしら」)
(「分かった」)
北斗が念話でそう返事を返すと、龍蛇丸の近くに、龍蛇丸の2倍程の大きさの金属柱が出現。
スセリは金属柱を確認すると、再度葉司に念話で言う。
(「葉司。方法は問いません、狼王丸が作った金属柱を、先程の力で破壊してみせなさい」)
(「分かった……」)
そう返事を返した葉司は、龍蛇丸に命令する。
「……龍蛇丸、流鱗纏!」
葉司の命令で、龍蛇丸は再び風を纏うが……
ブオォォォォン
「やっぱ揺れんな……」
そう言う葉司に、通信用の鏡を通して太耀が話しかけて来る。
「大丈夫か葉司、何か揺れてるけど?」
揺れに困っている葉司を鏡で見ていた太耀がそう言うと、葉司は龍蛇丸にもう一度風を止めるよう命令を出す。
「悪い、もう一度風を止めてくれ、龍蛇丸!」
纏っていた風が消滅し、揺れが収まったのを確認してから、葉司は通信機能を通して太耀に助けを求める。
「スセリに、お前みたいに力を使えって言われたんだけど、集めた風の所為で揺れまくって、それ所じゃねぇんだ。太耀、お前頭良いんだし何か良い案ねえ?」
「そう言うのは自分で考えろよ葉司。揺れぐらい我慢したらどうだ、攻撃受けたら揺れるんだし?」
そう言い返す太耀だが、葉司は反論する。
「それじゃ、狙い定まんねぇだろ。集めた風が弱いと威力出ねぇし、強過ぎると揺れが酷く成ってちゃんと攻撃出来る来がしねぇ。もし恵理花巻き込んじまったらどうするんだよ!」
すると、話しを聞いていた虚蝶が通信用の鏡を使って、太耀と葉司に言う。
「ねぇ、エアーマンみたいな事は出来ないの?」
虚蝶がそう言って来たので、太耀は呆れた様に虚蝶に聞き返す。
「こんな時に、何言ってるんだお前?」
「ファミコンに……」
「エアーマンは僕達も知ってる」
太耀にエアーマンの説明をしようとした虚蝶だが、太耀がそう言い返したので、虚蝶は太耀と葉司に説明を始める。
「アイツの武器の風って、絵で見ると真ん中に穴空いてるじゃん。あんなふうな風を起こせば揺れ無いんじゃないの?」
(!)
その説明を聞いた太耀は閃く。
「それだ葉司! 竜巻みたいに風を集めれば、中心に風は無い」
そして葉司にそう説明した。
「どう言う事だよ?」
不思議そうに葉司がそう言い返すと、太耀は言う。
「とにかく龍蛇丸に頼んで、竜巻みたいに風を集めてもらえ」
太耀に促され、半信半疑で葉司はもう一度龍蛇丸に命令をする。
「……龍蛇丸、竜巻みたいに風を集めてくれ。流鱗纏!」
ブオォォォォン
葉司の命令で、龍蛇丸は再三風を纏う。
すると今度は、前2回程揺れはしない。
「やったぜ、これぐらいなら問題なさそうだ! 龍蛇丸、集めた風はそのままキープしといてくれ」
嬉しそうな葉司に、太耀が話しかける。
「竜巻や台風の中心に、風は無いんだ。勉強に成ったか葉司?」
すると葉司はムッとして言い返す。
「教えてくれたのは虚蝶だろうが……」
そして、そこまで言って笑顔を作り、虚蝶にお礼を言う。
「サンキュウな、虚蝶」
言われた虚蝶は嬉しそうに頷き、返事を返す。
「うん」
(「葉司。さっきから風を纏ったり散らしたりしてるけど、如何したの?」)
虚蝶が返事をした直後、葉司はスセリからの念話を受け返事の念話を返す。
(「大丈夫。問題は……そうだスセリ、風を見える様に出来ないか?」)
そう聞き返されたスセリは、少し考えてから葉司に念話で聞く。
(「風をですか?」)
(「何か見えねぇと不便な気がしてさ。恵理花巻き込みそうな気もするし……」)
(「そう言う事ですか…… ごめんなさい、私に風が見えているのはお父様の力のお蔭。狼王丸や鳳皇丸の力なら、もしかしたら出来るかもしれないけど」)
スセリから念話でそう言われ、葉司は通信機能を使い北斗と太耀に聞く
「なぁ北斗に太耀。今スセリから念話で聞いたんだけど、お前等なら風を見える様に出来るんだとさ。見えないと恵理花巻き込みそうだし、どうにかしてくんない?」
すると、その話しを聞いていた虚蝶が葉司に提案をする。
「だったらソレ、僕がやってあげる」