「一時はどうなる事かと思ったけど、どうにか終わったわね劇」
「本当に、北斗君が見付けてくれて良かった」
一限目と二限目の間の五分休み。
恵理花と葵がそんな話しをしていると、文句が有りそうな顔で、葉司が二人に向かって言う。
「何だよ恵理花。それじゃまるで、俺じゃぁ二人連れてこれねぇ見てぇじゃねぇか!」
すると葉司は二人に言い返される。
「その通りでしょ」
「言えてるわね」
膨れっ面をしている葉司を他所に、教室のベランダでは、澪と恵が太耀に呼び出され集まっていた。
「「……」」
「……二人共、昨日はゴメン」
太耀が恵と澪に謝ると、澪も恵に謝る。
「僕もゴメン……」
「気にしないで二人共。劇はちゃんと出来たし」
恵は、澪と太耀にそう言い返した。
劇は問題なく終わり、簡単な劇とは言え、多数の先生や生徒達の前で恵は劇をやり遂げたのだ。
「ねぇ二人共、一つ聞いて良い?」
そう二人に聞いた恵に、太耀と澪は返事を返す。
「何?」
「うん?」
二人が返事をすると、恵はいったん間を置いて二人に聞く。
「二人って仲良かったの?」
自分の事が落ち着くと、恵には疑問が浮かんで来た。
先週のスーパーの時といい、見てはいないが昨日の口ゲンカの事といい、自分の知っている澪と太耀のイメージとは違っていた事が不思議だった。
自分の事や刻代との事は事情が違うとしても、澪は元々自分より喋らないので、太耀と口ゲンカをするのには違和感が有るし。太耀の方も、知る限りケンカの話しを聞くのは仲の良い葉司ぐらいで、他の子とあんな揉め事を起こすタイプではないと思っていた。
しかし二人は口ゲンカをして騒ぎに成った。
お互いに嫌っていたなら、澪は多分先週のスーパーでの様な反応はしないし、太耀も刻代の話しを断ったはず。
それなら、ケンカする程仲が良かったのかと考えた恵は、二人に勇気を出して聞いてみたのだ。
しかし案の定、澪は驚いた顔をした後首を大きく横に振る。
それを見て、太耀は不機嫌そうに言う。
「そんな事ある訳無いだろ、昨日の事は謝ったから僕は行くよ」
そう言って太耀はそのままその場を立ち去り、澪は残念そうな顔でそれを見送った。
一部始終を隠れて見ていたツクヨミは、クスクス笑いながら考える。
(スセリ達の目を盗んで見守ってみたが、私は面白い者を見付けた様だな。恵の方は本人が満足しているなら仕方ないか……)
★★★★
【お昼頃 美朱小学校近くの河川敷】
スセリの結界の中、鬼丸、天狗丸、ツクヨミが集まっていた。
「ツクヨミよ、わざわざ重機を使う理由は何だ?」
鬼丸がツクヨミにそう聞くと、ツクヨミはクスクス笑った後答える。
「正体がバレた時に重機に戻った方が、ただ消えるより偽物っぽいだろう。私達は偽物で負ける者を用意しているのだから」
「ツクヨミ様、何やら嬉しそうですが如何しました?」
天狗丸の質問に、ツクヨミは微笑みながら言う。
「まさかこんなに早く、お呼びが掛かるとは思わなかった事も有るが。人とは面白いモノだと思ってな…… さて、そろそろ仕上げと行くか」
そう言ったツクヨミの目の前には、鬼丸が重機から小槌の力で変えた光りの珠と、盗んで来た魔女の衣装。
ツクヨミは言う。
「業の槌によって変じたモノよ、童の偽りの敵の衣よ、我が力により夢を映し出す鏡と成れ!」
★★★★
【午後5時少し前 美朱小学校】
親が心配しない様にいったん家に帰った緋衣は、学校に戻ると人から隠れてフォルテス星人からの接触を待った。
緋衣が学校に隠れているのは、元々決行場所で有る事と、決行時間が放課後の為、他の場所だと薫達に出くわす可能性が有ると考えたから。
緋衣が掛け時計で時間を確認すると、時計の針は午後5時を指していた。
「時間ですね、そろそっ……!」
突然緋衣は、学校の屋上にワープする。
「時間だ少女よ」
緋衣の前にはそい言ったフォルテス星人が居り、3つの光りの珠を出現させ続けて言う。
「この珠に願えば、君を守護する君が望むモノが姿を現わすだろう」
フォルテス星人にそう依われた緋衣は思う。
(つまり、自分で考えろと言う事ですね。だったら……)
緋衣は3つの珠に、自らを守護するモノを願った。
すると3つの光りの珠は天高く舞い上がり、いったん姿を消すが緋衣の思い画いた通りの姿と成って、空からグラウンドに降って来る。
3つの光りの珠は、それぞれロボットの様な姿に変わっていた。
赤いプテラノドンを模したモノ……
青いステゴザウルスを模したモノ……
白いブラキオザウルスを模したモノ……
ヒユゥゥゥゥン
ガッシャコォォォォン
ステゴザウルスとブラキオザウルスは、砂煙りと共にそのままグラウンドに着地し、プテラノドンは途中からホバリングをしながら降りて来る。
「それとコレは君が言っていた衣装だ。薫や騙されている子供達以外には別人に見えるだろう」
フォルテス星人がそう言っている最中、緋衣の服装が変わって行く。
その服装は、白銀地に青色のフリル付きドレス風ローブ、魔女風味帽子付きである。
緋衣はこの服装を見て思う。
(うわぁ、ディズニーのお姫様でも着無い様な派手な服。可愛いですし、小学校に入る前なら喜んで着てたでしょうねコレ…… 今は恥ずかしい以外の感想はありませんが)
そんな緋衣にフォルテス星人は説明をする。
「最後に名前を付けてやって欲しい。モノは名前が有って初めてモノと成る、人も道具も神々でさえ」
そう言われ、緋衣は少し考えてから返事を返す。
「……分かりました」
「では、私は手助けしてやりたいがアラハバキとの戦いに赴かなければならん。頼んだぞ、地球の少女よ……」
そう言ってフォルテス星人が姿を消すと、緋衣は大事な事に気付き慌てる。
(どうやって下に降りましょうか? 姿は違って見える様ですが、流石に学校内をこの姿で動くのは……せめて飛べっうわ!)
飛べたら良いと思った緋衣の体は宙に浮いた。
(もしかして、思った通りに動けるのでしょうか? 右、左、後ろ)
そう考えると、宙に浮いた体は緋衣の考えた通りに動く。
(これなら…… 声の方はどう何でしょうかっ……て、そんな場合ではありませんでしたね。行きますよ!)
緋衣は自分の心にケジメを付け、恐竜の姿をしたロボット達に叫ぶ。
「ソニックプテラ、ガイアステゴ、ライトニングブラキオ。私に付いて来て下さい!」
★★★★
【午後5時少し過ぎ 五十嵐酒店】
ジリジリジリ リン
ジリジリジリ リン
「はい、こちら五十嵐酒店。……これはどうも黒沢様、……葉司なら居ますけど?」
紫織からの電話を受け取った葉司の母親は、大声で葉司を呼ぶ。
「葉司、紫織さんから電話だよ!」
ドタ ドタ ドタ
葉司が電話の所までやって来ると、葉司の母親は受話器を葉司に渡してその場から立ち去った。
「もしもし、紫織の婆ちゃん。俺に何か用?」
電話越しに葉司がそう言うと、紫織が葉司に電話を通して言う。
「葉司かい、良く聞くんだよ。美朱小学校にロボットが出て、今は前に戦った河川敷に居るらしいんだ。太耀と北斗にも連絡を入れた、お前も向かっと来れ」
「分かった!」
話しを聞いた葉司は、そう言って受話器を置く。
ガシャン
そして、慌てて酒店を駆け出て行った。
★★★★
【同時刻 澪の家】
澪が家の二階で特撮番組を見ていると……
「澪、ちょっと良いかしら?」
自分の目の前に刻代が突然現われ、澪は無言で驚く。
(!)
そして我に返り刻代に聞く。
「そうだ、僕達のキーホルダーが!」
「そのキーホルダーを持って、あの子達の戦いを見に行くわよ」
しかし刻代は、澪の聞きたい事に対し答えずそう答えた。
「……見に行くって?」
「いいから早くしなさい」
そう怒った振りをした刻代に驚きながら、澪はランドセルから罅の入ったキーホルダーを取り外す。
それを確認した刻代は、澪を抱きかかえ緋衣の居る河川敷までワープをした。
「喋っても良いわよ澪」
そう言われた澪だが、突然の事で言葉が出ない。
目の前には緋衣とソニックプテラ、ガイアステゴ、ライトニングブラキオが居り、刻代と澪は空中に浮かび、球体の結界の中に居た。
「……放さないで」
澪がそう言うと刻代は思う。
(放しても落ちはしないんだけど…… まぁいいか)
そして刻代は 澪に向かって語り掛ける。
「今の私達は、神の力を以てしても見付け出す事は不可能。さぁ私の神籬よ、特等席で神楽を見せてあげる……」