葉司、恵理花、薫はスーパーから直線距離で200メートル程先に在る、河川に掛かる橋の下に居た。
「薫、ランドセル頼む。行くぞ龍蛇丸!」
葉司がキーホルダーを掲げそう叫ぶと、何処からともなく人が数人が隠れられる程の、大量の緑の葉を巻き込んだ風が吹き荒び、葉司を包み込んで隠す。
そして葉司と共に橋の上へと移動した。
大量の緑の葉は龍蛇丸の姿を形作り、龍蛇丸に変わると、葉司は龍蛇丸の中に居る事を理解する。
「本当に前とは違うんだな」
葉司がそう言うと、汗衫姿の恵理花が、葉司に向かって慌てた口調で言う。
「早く、嘉助君を助けに行かないと!」
「その必要は無い!」
300メートル程先に居たミシャグジと風蛇が、龍蛇丸に気付き近付いて来た。
「スセリ、結界を!」
パン パン パン パン
葉司の言葉で恵理花が結界を張るが、嘉助は結界の外に転移しない。
「やはり駄目ですか……」
スセリは葉司への確認の為にそう言い、それを聞いた葉司はミシャグジに怒鳴る。
「嘉助を返せ、卑怯もん!」
50メートル先で対峙しているミシャグジに葉司がそう言うと、ミシャグジは小馬鹿にした態度で言い返す。
「言った筈だ、此奴は餌だと」
そう言い終わったミシャグジは、嘉助を風蛇から投げ落とした。
「うわぁ!」
叫びを上げる嘉助だったが、スセリの力で結界の外、薫の近くに安全に転移させられ、嘉助の姿が突然消えたので戸惑っている葉司に、オモイカネから念話が来る。
(「聞こえるか葉司? 嘉助は無事だ、薫の近くに居る」)
オモイカネが念話で葉司にそう教えると、同じく念話でスセリが続けて言う。
(「葉司。嘉助は風丸から離れたので、私の力が効く様に成ったのでしょう。それよりあの怪物、今の龍蛇丸の攻撃は多分通じない」)
「マジかよ。物は試しだ、行くぞ龍蛇丸!」
そう言い返した葉司は試しに、龍蛇丸で風蛇に体当たりを試みる。
しかし龍蛇丸は風蛇を素通りしてしまう。
「やはり、あの蛇は風の妖怪」
スセリがそう葉司に聞こえる様に言うと、ミシャグジが続ける。
「如何した、それで終わりか? なら此方から行くぞ!」
葉司は龍蛇丸で、風蛇の尻尾での横薙ぎの攻撃を躱す……
「そんな攻撃当たって……うわ!」
バシャン
しかし、龍蛇丸の真上に移動していたミシャグジからの攻撃に対処が出来ず、円月輪で川に叩き落とされた。
「大丈夫、龍蛇丸!」
恵理花が心配そうに言うと、葉司が答える。
「あぁ、何とか……」
「考え無しに突っ込むからです。今から風蛇への対処方法をお教えます、核の持ち手を掴かんで『転神、黄泉黄剣』と叫びなさい。そうして剣を引き抜くのです!」
スセリがそう言うと、葉司は少し考えて言い返す。
「恥ずかしい……、他に何か無いのかよ!」
「そんな事言っている場合ですか、上から来ます!」
そう忠告するスセリの言葉を聞き、葉司が頭上を確認すると、ミシャグジが攻撃体勢で迫って来ていた。
バシャン
「あっぶねぇ!」
ミシャグジの攻撃を、葉司は龍蛇丸を後ろに退いて躱し。そう言った後、少し考えてから少し恥ずかしそうに叫ぶ。
「こうなりゃヤケだ。行くぞ龍蛇丸、転神、黄泉黄剣」
ポーズを取りながら、少しノリノリで。
すると龍蛇丸は龍蛇の姿から人型の姿に変わって……いや、変形して行く。
その様子を見て、ミシャグジはスセリに念話で聞く。
(「スセリ、コレは何だ?」)
(「私に聞かないで……」)
そう念話で返したスセリも、ミシャグジも驚いて……と言うよりは、呆気に取られていると言う心象で、龍蛇丸の変形を素に戻って見詰めている。
龍蛇丸の体は頭、胴、尻尾に3分割され、頭の部分は胴体と成り、元々の胴体部分は更に4分割、手足に変り胴体と合体、それと同時に胴体上部から顔が出て来て、最後に尻尾部分が2倍程に伸び剣に変ると、龍蛇丸がその剣を手にして変形は完了。

変形時間はおよそ3秒。
もし葉司が龍蛇丸の外で見ていたら、土曜の夕方5時からやっているロボットアニメの、変形シークエンスみたいと思ったであろう変形が起きていた頃、龍蛇丸の内側では、葉司の居る場所の風景が、森から洞窟の様な場所に景色が変っていた。
(「……そうだスセリ、小僧に説明を!」)
ふっと我に返ったミシャグジは、そうスセリに念話で言い、その言葉で我に返ったスセリは葉司に言う。
「葉司。貴方からは分から無いだろうけど、龍蛇丸は人型に成っているわ。言葉の制御は受け付けなくなっているけど、貴方の動きや考えた通りに動くはずだから、剣を川に付き立てて」
ガシャン
スセリの言葉を聞いて、葉司が核の剣を地面に突き立てると、龍蛇丸は同じモーションをとって川に剣を突き立てた。
「この後はどうすれば良い?」
葉司がスセリにそう聞くと、スセリは答える。
「コレで川の水を制御出来る様に成ったはずです。その姿は言葉の制御を受け付け無いので、剣を持ったまま念じなさい。水で相手を封じるのです、相手が驚いている間に早く!」
「分かった!」
(水よ、敵を閉じ込めろ!)
葉司が返事を返してそう念じると……
サー
バシャン
川の水が急激にミシャグジと風蛇の下に集まり、ミシャグジと風蛇は出現した巨大な水の柱の中に閉じ込められた。
水の中で龍蛇丸を見ながら、ミシャグジは考える。
(さて、本来ならここで退くべきだろうが……)
ミシャグジは一度目を閉じてから、再度目を見開く。
すると、模していた風丸の姿の瞳の色が赤く変わり、次の瞬間その場から姿が消えて居無くなった。
一方風蛇は、水に閉じ込められた為、身体が段々泡に変って行く。
そんな風蛇に、ミシャグジから念話が届く。
(「風蛇よ、その肉体私に遣せ……」)
すると風蛇の泡化が突然止み、体の皮がボロボロと崩れて行く。
(行くぞ小僧!)
バッシャーン
ミシャグジが消え、風蛇の様子がおかしい事に気付いた葉司が、スセリに話しかけ様とした瞬間、異変が起きる。
風蛇》の姿は脱皮したかの如く、赤眼の石と金属で出来た白蛇に変り、内側から水の柱を吹き飛ばしたのだ。
「危な!」
そう言って葉司は、龍蛇丸の体を使い恵理花を大量の水から守った後、葉司は赤眼の白蛇に向かって言う。
「何だ、姿が変った?」
「フン、風丸様の変りに貴様等の相手をしてやろう……」
そう言ってミシャグジは、龍蛇丸から背を向けて逃げ出した。
「待て、この野郎!」
ガコン
ガコン
ガコン
葉司がそう言って、龍蛇丸で追って来ているのを確認したミシャグジは、念話で小太郎とスセリに確認を取る。
(「小太郎様、スセリ、攫って来た小僧と眼鏡の小僧は何所です?」)
(「俺達と合流しているが、如何する気だ?」)
ミシャグジの行動を不思議に思った小太郎が、念話でそう聞き返すと、スセリも少し驚ろいた様子でミシャグジに念話で聞く。
(「何を考えているのです? 風丸の姿を捨て、風蛇を乗っ取り本来に近い姿に戻るなんて!」)
スセリの念話を聞いて、ミシャグジは小太郎とスセリに念話で言う。
(「小太郎様、私に御任せ下さると仰ったでしょう。スセリ、作戦に変更はないから安心しろ」)
その念話が終わって暫くして、結界越しの小太郎達の目の前に、ミシャグジは現れた。
ガキャン
鎮守の結界が、壊れ無い事を確認する事も含め、ミシャグジは結界を攻撃し、近くでそれを見て居る人々は悲鳴を上げる。
「「わっ!」」
「「きゃぁ!」」
小学生の下校時刻に、ミシャグジが動き回り騒ぎを起こし回った結果、かなりの子供達が結界の外で龍蛇丸とミシャグジの戦いを見守っており、小太郎の近くには子供大人関係無く、疎らにかなりの人が居た。
(さて、そろそろ……)
ミシャグジはそう思い振り返ると、目の前には自身を追い駆けて来た龍蛇丸が居り、ミシャグジは龍蛇丸に軽く突っ込んで行く。
ガキン
その攻撃を剣で受け止めた龍蛇丸だが、ミシャグジは尻尾と胴体を龍蛇丸に巻き付け締め付ける。
「うわぁぁぁ!」
龍蛇丸が締め付け攻撃を受けている為、葉司は連続的な揺れに襲われ、上手く動く事も考える事も出来無い。
(加減はしてやる。悪いが暫くそのままの状態で居てもらうぞ……)
ミシャグジは龍蛇丸を見ながら心の中でそう言うと、近くの結界の外にいる人間に向けて大声で言う。
「我が名は風丸様の手先、明沙丸。退いた風丸様の代わりに、この臣器を破壊してくれよう」
ミシャグジがそう言うと、後ろからやって来た恵理花に宿ったスセリが叫ぶ。
「龍蛇丸。剣を地面に刺して『転神、森羅魄蛇』と言いなさい!、そうすれば前の姿に戻ります!」
「転……、神……、森羅、白蛇」
ガシャン
そう言って葉司が地面に剣を突き刺すと、龍蛇丸は龍蛇型に変り、明沙丸の束縛が緩く成る。
その隙に龍蛇丸》は真上に逃げ、葉司は叫ぶ。
「転神、黄泉黄剣!」
再度人型に成った龍蛇丸は、上空から明沙丸に向かって剣で斬り掛かる……
「でぇぇぇぇい!」
が……
「甘い!」
明沙丸は、迫り来る龍蛇丸の剣を口で受け止めると、そのまま龍蛇丸を結界に叩き付けた。
ドカチャン
「うわぁぁぁ!」
龍蛇丸が結界に打ち付けられ、その衝撃で葉司が叫ぶと、それを小さくなって人影で見ていたオモイカネが思う。
(あの大蛇、見た目以上に硬い。いや、もしや……)
「龍蛇丸、聞け!」
突如オモイカネは普通の姿て人の前現れ、そう言たので周りの人間達は驚くが、オモイカネは気にせず続ける。
「その剣に名を付けよ。名は体を表す。名の無き剣に力など無い!」
オモイカネの言葉に、葉司は言い返す。
「名前ったって……」
するとオモイカネの意を察したスセリが、葉司に言う。
「オモイカネの言う通りです。再契約の所為で、その剣はただの剣でしかありません。どうか名前を付けて」
スセリがそう言ってる間に、ミシャグジは小太郎に念話で促す。
(「考えとは違いましたが、今なら近くの人間の注意はそちらに向いています」)
(「そう言う事か。今らな目立つな……」)
念話でそう返した小太郎は、大声で、少しオーバーリアクション気味に龍蛇丸に向けて喋る。
「がんばれ龍蛇丸。友達を攫った奴なんてやっつけろ!」
小太郎がそう言うと、明沙丸が続ける。
「出来るモノならやって見るが言い、この石と金属の身体が斬り裂けるモノならな!」
更にスセリも続けて言う。
「なら、対たる息吹きの力で対抗すれば良い」
そう言ったスセリに、葉司は怒った様な口調で言い返す。
「だから名前なんて、そう簡単に思い付かねぇって!」
すると、オモイカネが葉司に大声で言う。
「なら私が代わりに付けよう。動く麟は龍蛇そのもの、生命を司どるその剣の名は動鱗剣!」
オモイカネの言葉で、葉司は少し考えてから体勢を整え、叫びながら明沙丸に斬り掛かる。
「行くぞ、動鱗剣!」
ガキン
明沙丸は尻尾で動鱗剣を受け止めるが、受けた部分が赤くなって行き、そこから身体が崩れて行く。
(「やはりこの力は慣れん…… 小太郎様、退かせて頂きます」)
小太郎にミシャグジが念話でそう言うと、小太郎は労いの言葉を念話で返す。
(「ご苦労」)
念話で、ミシャグジが小太郎とそんな会話をしている時、龍蛇丸は一度龍蛇型に戻ると飛び上がり、明沙丸の頭上で再度人型に変わり、明沙丸を上空から斬り付ける。
「せりゃぁぁぁぁ!」
ガキン
ガゴ ガゴ ガゴ
ガツン
動鱗剣を頭から受けた明沙丸は、次第に頭から崩壊して行き、最終的には二分割され、光と強い風を発しながら消滅した。
「やったぜ!」
勝利した葉司がそう行うと、オモイカネから葉司を褒める念話が来る。
(「良くやった葉司」)
そんなオモイカネに、葉司は念話で返す。
(「オモイカネもありがとよ。で、何か用か?」)
(「キャッチコピーとやらを言わなくても良いのか?」)
オモイカネに念話でそう言われ、葉司は焦る。
実はまだ考えて無かったのだ。
(「……実はまだ考えて無かった。オモイカネ、どうにかなんない?」)
葉司が申し訳なさそうにオモイカネに念話でそう返すと、呆れた口調でオモイカネが念話で行い返す。
(「そんな事だろうと薫が言っていたが、当たった様だな。不変の碧流魂と名乗れば良い。それと剣を十字かバツ字に振れ」)
そうオモイカネに言われ、葉司は剣をバツ字に振って叫ぶ。
「不変の碧流魂、龍蛇丸!」