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八話 B1

 そんな事を考えながら、分厚い隔壁に取り付けられた通路を抜け、B1フロアに入った。そこは大小様々なコンテナが乱雑に散らばった薄暗い倉庫のような場所だった。床は黒く平らで凹凸も斜面もほとんどない。天井は10メートルくらいの高さだけど、広さは相当に大きく、フロアの一番遠い壁がはるか先にかろうじて見えている。あそこまで数百メートルはありそうだ。


 あと結構遠くに何か動く気配も感じる。僕やアイトさんの姿はもう把握されたようだけど、こっちには寄ってこない。アイトさんを見ると、軽く頷いた。


「このフロアから敵が出てきます。サノさんもお気づきだと思いますが、もうすでに私達は敵に発見されています。数は今のところ6体ですね。ただこのフロアの敵、通称ネズミなんですが、向こうから近づいてくる事はなく、こちらがある程度近づいた時に襲いかかってきます。この距離であれば、とりあえず安全です。どうしますか?ネズミに近づいて見ますか?」


「そうだね……、接敵する前に、ちょっとフロアを調べてみたいんだけどいいかな?」


「はい、いいですよ。何かお手伝いする事はありますか?」


「えーと、調べるのは僕一人で十分。ただ調べている間は戦えないから、索敵をお願いできるかな?」


「はい、それこそ私の本職です。安心して調べ物をして下さい」


 ああ、優しいアイトさん。ホント癒やされるなぁ…よし、さっきから気になっていた事を調べるとしますかね・・・・・・


 コンテナはほとんどが破壊され中身が持ち出されてるな。そしてコンテナは表面も内部も、破壊された面もすべてサビのような腐食で覆われている。結構長い年月が経っていそうだ。


 あと一部のコンテナ表面に新しめの傷が何箇所かある。これは敵…ネズミだっけ?そいつと誰かが闘った時に出来た傷かな。傷の表面に腐食が見えない。ふむふむ。


「アイトさん、このコンテナの状態って、アイトさんが初めて見たときからずっとこんな状態なの?」


「そうですね。私が初めてこのフロアに入った時、すでにコンテナはこんな状態で置かれていて、中身も一切無かったと思います。」


 次に近くにあった小さめのコンテナに触れる。コンテナはこの体と同じくらいの高さで中身はないし、多分この鬼人ボディなら簡単に動かせそうだ。試しに力を入れてコンテナを押す。金属同士が擦れ合ったような耳障りの悪い音を立てながら、予想通りコンテナは簡単に動いた。


「えっと、力試しですか?」


「うん、そんな所。やっぱりこのエーテルボディ、結構パワーあるね。インドゾウにも押し勝てそうだ。」


「なんでインドゾウなんですか……」


「インド料理店のカレーとナンが好きだから」


 我ながら適当な事を言ってるなと思いながら、コンテナを動かした後の床面をかがんで観察する。引き摺った時にあれだけ大きな音がしたのに、床には傷が付いていない。あとコンテナが置いてあった所とそうでなかった所を比べてみる。床にはホコリやゴミは全然溜まっていないけど、床面を見るとコンテナが接触していた面とそうでない面の色が明らかに違っている。ふむ。


 アイトさんは僕が何をしているかわかっていないようだけど、こちらの行動をじっと見守ってくれている。あとアイトさんの頭部をよく見ると、狐の耳がピンと立って髪の毛も少し広がっていた。きっとあれで周囲を索敵しているんだろう。助かる。インドゾウを含め、僕の言動はアイトさんには奇行に見えてしまうかもしれないけど、もう少し調べさせてもらおう。


 僕はその後も、4つほどコンテナを動かしては、同じようにコンテナで隠れていた面とそうでない面を調べた。結果、どれもまったく同じような色の違いを確認できた。


「おまたせ、アイトさん。ごめんね、変な事してて。それと見守ってくれてありがとう。」


「いえ、サノさん真剣でしたから、きっと何か意味があると思ってました。何かわかりましたか?」


「うん。だいたいわかったかな。ただちょっと説明しにくいんだよね… しかしこのフロア暗いね。他のフロアも同じように暗いのかな?この建物…というかダンジョン、窓がないから下にいくほど真っ暗になりそう」


「それがですね、これ以降の階層だと照明が付いていて明るい階層の方が多いんです。中には真っ暗な階層もあるので油断はできませんが…」


 そっか、明るい階層の方が多いのか、なら調べ物も終わったし、こんな薄暗い場所はさっさと抜けてしまおう。


「じゃあアイトさん、次のフロアに進んでもいいかな?あとネズミだっけ。僕が相手してみても大丈夫かな? 一応ポータルにあったデータで、敵の情報は確認してあるけど」


「はい、ネズミは数が多くてもそれほど脅威ではありませんので、エーテルボディの戦闘試験に向いていると思います。危なくなったら私も参加しますので、まずはサノさんお一人で力を試してみて下さい」


「了解、アイト教官。初陣で緊張してますが、頑張ってきます」


「教官はやめて下さい。というか余裕たっぷりに見えますよ」


「いえ、もう緊張で緊張で震えてます。だめかも知れない」


 そう言いながら、背負ってきたバックパックを床に置き、中から大太刀と柄2本を取り出す。入口フロアでころんだ時、バックパックも床にぶつけた気がしたので少し不安だったけど、中身は問題なさそうだ。柄と柄をまず繋ぎ、それを大太刀の鍔元に差し込み、楔を入れると長さ2.5メートルの長巻大太刀が出来上がる。最後に補強テープを柄全体にぐるぐる巻いてメインウェポン完成。格好いい!


 次にサブウェポンの小柄と鎖鎌もボディの腰周りにあるラックに取り付けていく。ちなみに鎖鎌は分銅の代わりにワイヤーがついている。これも格好いい!


 支度は40秒では終わらなかったが、3分はかからなかったのでネズミも待たされる事はなかろう。さて、では初陣と行きますか。

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