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六話 到着

 だだっ広いジャングルの中に唐突に広場が登場して、更にその中心にあの建物があった。鬱蒼として薄暗かったジャングルから一変して、この周囲だけが木も草も何一つ生えていない。あれだけ無秩序なジャングルが広がる地表の中で、軌道エレベーターとこの建物だけが、妙に存在が浮いていた。


 試しに建物周囲の土壌を足で蹴り上げてみると、土自体もジャングルとは違う成分のようだ。なんだろう、建物周辺だけ高熱で一旦焼いたような土のような……


 そのまま建物周辺の広場を歩き始めると、アイトさんが慌てたようにこちらに寄ってきた。


「サノさん、ダンジョンの中に入らないんですか?というか建物の説明をしたいんですけど……」


「あ、ちょっと待って。まずこの地形や周囲を確認したい」


 そんなわがままを言っちゃう新人の僕だが、彼女はいいですよと言って一緒に着いてきてくれた。よし、ここでならアイトさんと並んでおしゃべりできる。


「このジャングルって、ダンジョンと軌道エレベーター以外にも何かあるの?」


「いえ、多分なにもないです。ポータルから見える範囲において、河以外の地表はすべてジャングルだけです」


 そうなのだ、ポータルにあるエレベータ搭乗口から惑星の地表を見たときに最初に思ったのが、河はたくさんあるけど海がないという事だった。泳いで渡るのを諦める位に大きな河が縦横無尽に地表に流れている一方で、その水が集まる海が見当たらなかった。


 というかこの惑星、ものすごくのっぺりとしているというか、高い山がほとんどないのだ。不自然に地表全体をヤスリがけしたような、高低差がほとんどない平坦な大地にジャングルと大河があるだけの奇妙な星だった。


 ただこのダンジョンというか建物がある場所だけが何もない。なんというか、この建物が地中からタケノコみたいに生えてきたような、そんな地形だった。


「サノさん、ダンジョンよりこの周囲の地形の方が気になるんですか?」


 建物よりも周りの地形ばかり観察したり質問してたせいか、アイトさんがそう尋ねてきた。


「いや、アイトさんとこうしてお散歩デートしたかったんだよ」


「ウソばっかり。私より地形の方に夢中でしたよ」


 あっさりバレる。まぁバレたついでにもっと質問しよう。


「資料を見たけど、この星って雨降らないんだよね。大気成分も二酸化炭素がほとんどみたいだし」


「そうなんです。だから河の水って、100%湧き水なんです。しかも水は蒸発しないでゆっくり流れていて、ところどころで地下に沈んでいってるんです。地球では考えられないですよね」


「水耕栽培みたいな星なんだね」


「言われてみればそうですね。じゃあダンジョンは球根で、根っこが生えてるかもしれません」


「うわー、ダンジョンに根っこがあったらやだなあ」


 そんな和やかな会話を楽しんでいたが、建物を一周したところで一旦デートは終了した。少し心残りはあるけど、では仕事に向かいますか。


「ダンジョンの入り口はあそこです」


 アイトさんが指さした場所は、紡錘形の建物のてっぺん、つまり一番先端の尖った端だった。あれ?地表に扉があったりするんじゃないんだ……


「えーと、アイトさん、あの入り口までどうやって行くのかな?階段とかないの?」


「階段はないです。建物の壁をよじ登って行きます。エーテルボディなら簡単ですよ」


「いやまあ、そうなんだけど。もし大掛かりな武装とかあったら、持ち込むのが大変にならない?」


「ああ、そういう意味ですか。えっと、みなさん自分が背負ってあそこまで登れる分量の武器しか持ってこないです」


「戦車とか持ち込まないんだ」


「はい、入口もそんなに大きくないので、そういった大型の兵器はたとえ持ってきても中まで持ち込めないです。あともう一つ理由があって、仮にそういった武器や兵器をダンジョンの中に持ち込んでも、途中で使えなくなっちゃいます」


え?ダンジョンの中に大型兵器を持ち込めない?なぜだろう……まぁとりあえず、中に入ってみますか。

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