表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/48

四十六話 埋葬

アイトさんを含め先に人間に戻った人たちにポータルでの作業を任せ、僕はエーテルボディの10名と一緒に地上で宇宙船の埋葬作業を始めた。



「高低差とポンプの揚程を考えると、3箇所から水を持ってこれますね。」


「サイフォンを作れば、もう一箇所から持ってこれるかも……」


「本当は入口に直接エンジンを置きたいんですけど、そうするとアイギス来ちゃうな……」


ダンジョンの建物前でわいわいガヤガヤみんなで作戦会議。プラント設計や流体力学に詳しいメンバーが3人も居てくれたので、話が早い早い。


ダンジョン、もとい墜落宇宙船は、真空から船内を守るための密封容器であり、逆に言えば内部から外部に漏れがない容器である。そして一番高い所に入口があいている。なのでそこから水を入れて、宇宙船内を満水にしてしまうのだ。


宇宙船の全長は軽く見てもキロメートル単位で、コアが宇宙船の先頭付近にある事はわかっているので、垂直に近い状態で宇宙船が立っている以上、水圧で破壊できる計算になる。たとえ水圧で壊れなくても、精密機械だから水に浸かっていればいつか壊れる。そもそも今も稼働している宇宙船内部の機械も、浸水すればそのうち壊れる。宇宙より深海の方が厳しい環境だしね。各フロアの隔壁はすべて開けてもらうようにメデューサさんに依頼もしてある。


万が一、制御コアの部屋だけ何かしらの安全機構で浸水を免れたとしても、それ以外の設備が浸水すれば、圧壊するか動力がなくなるかで、結局は壊れることになる。壊れなくても、宇宙船の中が水に埋まれば、深海に沈んだも同様だしね。残念ながら宇宙船は潜水艦ではないし、墜落して20年間もメンテナンスしていない機械が、正常に動き続けることは不可能だろう。そもそも常に注がれる毎秒数十トンという膨大な水を止めることが出来ない限り、宇宙船の敗北は確定なのだ。


地上作業班の僕らはポータルから材料を持ち出して、ポンプ式の揚水設備を完成させた。そしてアイギスが反応しないように注意をはらいながら、周囲の湧き水を宇宙船の入口に注ぎ始めた。


「いやー、結構勢いよく水が入っていきますねー。」


「この宇宙船、東京ドーム482個分の大きさだって。どれ位で満水になるかなー」


「それ、船全体の大きさでしょ?壁とか設備とかを抜いた空間の比率が50%と仮定してー」


「んー、今の流量だと3ヶ月くらいかかりますねー」


「時間かかるねー。もう少し水を増やそうかー」


「サイフォン使って、水を集めてきましょうー」


「じゃあ僕らは河からバイパス水路を作りましょうー」


手伝ってくれた人たちは、どことなくダンジョン探索より楽しそうだった。この惑星に花が咲いていれば手向けが出来たのにね、と誰かが言った時、ちょっとしんみりしちゃったけど。



「埋葬、終わったんですか?」


軌道エレベータの昇りに乗って景色を堪能し、ポータルに戻ったところでアイトさんが待っていた。


「いや、まだまだ時間がかかる。多分、水がダンジョンを完全に満たすまで2ヶ月はかかる計算かな。だから交代で監視しながら作業を続けるよ。改良できる事があればどんどん取り入れたいし」


無事に人間の体に戻った人たちは、やはり何年も体を動かしていなかったせいか、リハビリが必要だった。アイトさんを含め、多くの人達がポータルのメディカルルームやサギ女神のプライベートルームでトレーニングをしているようだ。


「もう元の世界に戻っている人もいますよ。サノさんは、まだその体のままなんですか?」


「うん、地表で活動するには、どうしてもエーテルボディじゃないと危ないからね。僕はここに来て一番短いから、人間の体に戻るのは最後になると思う」


アイトさんはここに連れてこられた人間の中で古株に近い。アイトさんよりもっと前に連れてこられた人で、無事に人間に戻れた人は10人に満たなかった。一番長くここに居る人が6年前との事だったが、同時期に連れてこられた人は、もう誰もいないと言っていた。


「元の世界に戻った時、時間はどうなってるんでしょう。私は3年前と変わってないのに……」


「次元転移って事だから、もしかしたら元の世界は時間が経ってないかもしれない」


「え?本当ですか?」


エレベータ搭乗室からポータル内に向かって歩きながら、アイトさんに説明する。本当はホワイトボードとかあればもっと説明しやすいんだけど、とりあえず口頭で。


「うん、次元が異なる場合に、時間が他の変数に影響されずに独立が保たれているなら、この世界の時間変数の増加は、別次元の時間変数に何も影響を与えないはず。もともとこの世界の人だと成り立たないけど、別次元から連れてこられた人なら、もしかしたら……。あくまで仮定だけど。もし仮定を証明するのであれば、アイトさんが連れてこられた時間と僕や他の地球人の連れてこられた時間を横軸にとって、この世界と地球との経過時間の差異を縦軸に……」


「あ、あのちょっと待ってください。いきなり難しい説明されちゃうと、その、困ってしまうので……」


そうかなぁ。結構面白そうなテーマだと思うんだけど。異次元世界に連れてこられた場合の時間経過って。


「もしかして浦島太郎の龍宮城は異次元世界にあったかも」


「え?ここで浦島太郎?」


「でも浦島太郎だと、竜宮城の経過時間と地上のそれとは多次元の線形関係にあると思われるから、時間という変数が独立していないので、別の」


「だから、そうじゃなくて!」


アイトさん的にはこの話題はあまり好きではなさそうだ。地上で作業をしている人達なら好きそうなので、後で話題をふってみようかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ