三十九話 迷路の意味は
意外と軽いロイヤルガードの首を持って迷路を彷徨う。ナメクジやバルログには時々出会うが、偶然なのか別のガードとは遭遇していない。やはり生物系で自律タイプの敵は味方識別がないようで、首を持ってても攻撃してくる。首を抱えながら戦わざるをえず、やれやれだ。
この迷宮は三階層の構造になっているが、フロア中心があるのは真ん中の層で、僕が今歩いているのは一番下の層になる。中心からある程度の距離までは上下層に繋がる階段は無く、中心と最外壁の中間あたりから三階層になる。
このフロアに入って妙だと思ったのが、フロアは12の通路、つまり12分割されていて、2年間でそのうち10個を探索しながら、出口が見つかってないという事だ。よほど運が悪いのかもしれないけど、少しおかしい。探している場所が悪いのかもしれないし、その場合は仕方ないが。
ただダンジョンとなっている建物はラグビーボールを立てたような構造物であり、頂点から入って下に潜ってきている。このフロアが大きな円形だとすると、ラグビーボールの建物の横に切った一つの層がこのフロアになるはず。フロアの入口は中心にあった。なら出口も中心かその近辺に作るのが普通ではないか?
もしホルガさん達が想定するように扉が最外壁にあったとしたら、建物の一番外に近い場所に、構造的な弱さを持つ扉を設計した事になる。この建物の外側は明らかに耐圧構造になっているが、人の通路を耐圧殻に接するように作るだろうか?いくら地球より技術が進んでいるからといって、それはありえない。
そもそも壁が動いて常に形が変わる地図も作れない迷路の先に、連絡用の通路を作るだろうか?ほとんどの人がその通路にたどり着けない事になる。不可解だ。
いろんな面から考えても、迷路の先の最外壁にはB10に繋がる通路はないように思える。ここまでダンジョン設計者にいろいろ言ってきたが、基本を無視した設計はしていなかった。となると、人が通る事を前提とした扉は、多分円の中心付近にあるのでは?入口が三階層の中央層にあるなら、出口は一番下の層の真ん中にあって、理由があって隠されているのではないか?そして味方の識別を持つものだけが、その隠された場所に入れるのではないか?僕が設計者ならそうするし、そう思えて仕方がなかった。
しかしガードの頭を持っていても、迷路の動く壁は手加減してくれる様子はなく、何度も突き当りに遭遇して、その都度引き返す羽目になった。不意打ち狙いの敵も一向に減らず、リペアキットとエーテルチャージの残量もあとわずかとなってしまった。ガードの頭を持ったままゲートで脱出した時に、この頭が転送されなかったら嫌だし、もし一緒に脱出できたとしても、マゼランポイントからこの頭を持ってやり直すのも厄介そうだ。やはり何とか中央部に歩いて戻らなければ……迷路は同心円に沿った通路になっているので、自分が中心側か最外壁側のどちらに進んでいるか把握できるのだけは助かる。
そこから更にワンチャージ分の時間を掛けてたっぷり迷った後、ようやく最下層の中心付近に到達した。上の層に登る階段があるが、中心に向かう内壁の隠し通路を探さなくては。無かったらどうしよう。
最外壁と違って中心近くだし、最下層だけなので、内壁の探索はそこまで大変じゃなかった。が、数十時間かけて調べても、どうにも見つからなかった。壁を叩いても音がしない。どれだけ頑丈なんだクソ。最悪、壁を穿ってやろうかとか考えたけど、それも無理そうだ。
もしかしたら先輩探索者も最外壁を探す前に、この内壁も探しているのかもしれない。うーん、良い線いっていると思ったんだけどなぁ。もしくはもっと中心フロアの入口近くに、実は出口が隠されているとか……
そろそろ補給が必要なので、仕方がないので階段を登って一度中心まで戻る事にする。ガードの頭を持ってまたここに戻ってこよう。そう思って、ガードの頭を持ち直したときだった。ちょうど僕の手のひらが、首の切断部分に触れた……




