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十九話 B4

「うわー、こりゃ壮観だねー」


 扉を開けて目に飛び込んできたものは、ひとことで言えばでっかい石の宮殿だった。今までよりも高い天井は煌々と明るい光を湛えている。壁面も床も凸凹がまったくないフラットな面。そんなフロアの中心に、大理石のような石で出来た宮殿がそびえ立っていた。宮殿は平面と直角のみで構成された無骨ながら壮大な建物で、一階がとても高い。思いっきりジャンプしても多分2階に届かなそうだ。


 そして床には花崗岩のような粒状模様が入った石の通路が真っ直ぐにのび、宮殿の中に繋がっている。あと今までのフロアは床が全部硬い金属のようだったけど、ここのフロアは宮殿と通路以外は、芝生が生えているようだった。


宮殿はサンクトペテルブルグのような豪奢な模様や装飾はなく、シンプルな見た目だけど、観光名所になってもおかしくない、そんな建物だった。建物だけは。


 ただ地球の宮殿と違って、目の前の宮殿は庭がとても狭いのがアンバランスだった。宮殿とフロア壁との隙間も狭い。都会の密集住宅地に無理やり建てられた結婚式場のような、巨大なビルに取り囲まれながら孤軍奮闘するど根性ビルのような……


 あとフロアが変わっても、壁や天井はこれまでと全く同じ、黒くて硬質のままなので、これもまた違和感の原因だと思う。せっかく宮殿を作るなら、空間に余裕を持たせて、建物と周囲の見た目も合わせればいいのに……このフロアの設計者、手を抜いたな。


「このフロアは5つの建物が順番に並んでいて、その先にB5に繋がる扉があります。そこにマゼランポイントも設置されています。建物を越えていく方法ですが、あの大きな通路に沿って中を進んでもいいですし、建物の外と壁の間を抜けても良いです。宮殿の屋根を乗り越えるのも当然ありです。ただどの進路でも敵は襲ってきますし、建物自体にも攻撃されます。どこを進むか選んで下さい」


「一番簡単なルートってどれかな?」


「その人の特性によりますね。私は自分一人だったら屋根を越えていくルートを通りますが、パーティを組んだ場合は通路を進んだ方が良いと思います。そうそう、言い忘れてましたが、このフロアでは、私の行動をサノさんが決めて下さい。別々に行動してマゼランポイントで待ち合わせるか、2人一緒に行動するか、どちらでも構いません。また一緒に行動する場合は、私も戦闘に加わった方がいいか、逆に私は極力逃げ回っていた方がよいのかも決めて下さい」


 うーん、鬼人ボディに慣れるためにも、今の時点でなるべくソロ戦闘をこなしたい。でも一緒に行動して、いろいろ教えてほしい面もある。どうしようかなぁ。ただこのフロア、ちょっと嫌な予感がする。別々の行動は避けたほうがいいかな。


「じゃあ、アイトさんと一緒に行動で、戦闘は僕がメイン、危なくなったらサポートをお願い。ルートは通路に沿って、宮殿内を進むことにします」


 僕はバックパックから小柄と小太刀を出して腰の後ろにかけ、ブラストナックルを右腿の留め金に、ブロウガンの針を束ねたものを左腿に留める。長巻は右手に持ったまま、これで大丈夫かな。しかし武器の換装にいちいちバックパックを開けて取り変えなければならないのが面倒だね。投擲武器をいっぱい体に着けたせいで、歩くたびにそれらが鳴ってちょっとうるさい。これじゃあ隠密行動は無理だな。ポータルの技術に四次●ポケットとかないのかな、次元転移とか使えるならあっても良さそうなんだけどな。



「建物内で一番使いやすい武器は銃なんだろうけど、銃火器厳禁なんだよね」


「はい、このダンジョンは銃や大砲を使おうとすると、いつからかその武器が爆発するようになったんです。マール様はアンチパウダーと仰ってましたが」


「銃を撃つ時に発生するガスと反応するのかな。厄介だね。」


「このダンジョン内の空気に、そのアンチパウダー成分がいつの間にか含まれてたそうです。そのため地球でいえば古代の戦い方に戻ったと言ってました」


 弓と投石で戦ってた時代かな。確かに出発前に用意されていた武器の中にも、銃やロケットランチャーとか一切なかった。ポータルには銃火器を持ち込んでた記録があったから、多分どこかでダンジョンマスターが対策したんだろうな。


 あれ?学習能力があるダンジョンマスターなら、自分たちも銃火器を使えばもっと効率よく防衛できると考えるはず。なのに、なぜ銃火器そのものを使用禁止にしたんだ?


 それにサギ女神ではなくダンジョンマスターが、銃火器を敵味方で使わせないようにした、というのも意味があるはず。あ、ちょっと見えてきたぞ……



「鬼人ボディに適した飛び道具は大弓だけど、嵩張るから持ってこなかったんだよなー。そういえばアイトさんも飛び道具使うの?」


「はい、短弓っていうんですかね、小さめの弓を使います。私の場合は動きながら敵を狙いますので」


 そう言いながら、アイトさんが左腕につけている弓を見せてくれる。なるほど、忍者だから手裏剣とか使うのかと思ったけど短弓か。


「その弓でもムカデの眼球なら貫けそうに見えるけど」


「確かにきちんと狙えば行けるかもしれません。でもムカデの場合、逃げた方が簡単で安全ですから」


 まぁ無理して戦う必要はないよね。第一目標は敵を倒すことではなくダンジョン探索だから、なるべく消耗を避けたいところだし。


「じゃあ突入する前に、いったんエーテルチャージをしましょう」


 そうだ、この体は50時間以内に1回、補給が必要になる。B2に入る前に1回目のチャージをしたけど、そうか、もうそこから50時間近くも経ったのか。


 補給は後頭部にあるコネクタに乾電池みたいな補給源を差し込むだけ。所要時間は10分位。だけどこの後頭部に差し込むという行為、最初も今も慣れなくてめちゃめちゃ嫌なんだよな。絵面も変だし。


 実際、隣で後頭部にでっかい乾電池もどきを挿しているアイトさんの姿も、違和感が拭えない。そう僕が言うと、彼女は別に気にならないようだった。


「口にコネクタ作れば良かったのに。そしたら缶ジュースを飲んでる感じで違和感なくなったのに」


「なんかおしゃぶりしているようで嫌です」


 感じ方は人それぞれだなぁと思いつつ、チャージを完了し、乾電池もどきをパックに戻す。睡眠が必要ないのは良いけど、このボディになってから今まで一度も寝てないと思うと、心理的にちょっと不安になる。眠くなくても、横になって目をつぶる時間があった方が精神的に良さそうなんだよな。

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