第9話
当たり前の日々に退屈していますか?突然、当たり前ではない日常に放り込まれたら、貴方は何をしているでしょうか?
「着きました、ここです。」
ダガルがそう伝えると、高台になっており景色が一望できる場所だった。
「綺麗な場所ですね……」
「シン、幼少の頃よりここは母上が好きな場所とお聞きしていた。
母は向こうに見えるエヌク王国でお生まれになられた。
我がトザス王国とエヌク王国はかつて友好的な関係を築いていた。
しかし、火の元になる〈タネ〉という希少資源の奪い合いで争いが始まり、今も尚緊張状態が続いている。
先程渡った川は昔は綺麗な小川だったらしい。
エヌク王国と対立状態になった際に我がトザス王国が防壁を築く為に川の源の木々を伐採し、山に緑が失われてから、川は常に氾濫し両国の行き来は困難となった。
国の者はこれでエヌク王国が簡単に攻め入れなくなったと喜んでいたと聞いたが、私は山の神が我々の行ないに悲観し、その涙が川を氾濫させているのではないかと思うのだ。
母は母国と争う我が国を憂い、敵国の人間だという視線を感じられ、心労から倒れてしまった。
我々は何の為に争っているのだろう?
〈タネ〉など全て燃やしてしまい、〈タネ〉の無い暮らしで争い無く暮らせる世の中の方がよっぽど幸せではないか?」
今日も1日無事過ごせて良かった。