第39話 これが探索者同士の戦闘か④
「ガハッ」
「……」
「おっと」
竜也とミツルの二人は俺の方に向かってゆっくりと倒れてきた。
俺は下敷きにならないようにその二人を回避すると、二人は重なり合うように倒れ伏す。
二人のHPは底を突き、丸焦げだ。
これではもう動けないだろう。
流石は俺のMPの三分の二を吹き飛ばすスキルだけはある。
強力な技のくせに、むちゃくちゃ効果範囲が狭くて、一体どこで使うんだこれとか思っていたが、結構使えるもんだな。
まあ、これを使うためにわざわざミツルを竜也の近くまで運んだんだけど。
「……死んでないよな」
俺は少し怖くなって二人の脈を取ると、二人ともちゃんと心臓は動いていた。
まあ、死んでなければ大丈夫だろ。
「あっちも終わったのか」
俺は朱莉と京子の方を見ると、そちらの戦闘も終わっているようだった。
拳士は丸焦げになっており、魔法使いの方は涙目でこっちを見て力無くへたり込んでいる。
あれは完全に戦意喪失しているな。
二人とも相手を丸焦げにするようなスキルは持ってなかったはずだけど、一体何があったんだ?
◇◇◇
「我は……!」
「!! 『投擲』!」
「くそ! またか! 悟! 早くそのうるさい蝿を黙らせろ!」
「うっせぇな! 今やってるところだ! 黙って魔法を使っとけ!」
詠唱をしようとしていたキョウスケに向かって朱莉は投げナイフを投げつけ、詠唱の妨害をする。
詠唱を中断するだけなら、投げナイフを当てるだけでできる。
普段からサグルの後ろから投げナイフをモンスターに当てて気を引いていた朱莉にとって、造作もないことだった。
「今度こそ。『踏込』 」
「『背跳』」
「『鉄…』くそ。ちょこまかと動きやがって」
朱莉はゼロ距離に踏み込んできたサトルから距離を取る。
朱莉が慎重に動くため、サトルは朱莉に有効打を与えられていない。
キョウスケに至っては、最初の火球以降、攻撃を一発も発していない。
「(あかりちゃん。どう?)」
「(だめ。全然隙がない)」
だが、有効打が与えられていないのは朱莉たちも一緒だった。
キョウスケに投擲は当たっているし、サトルにも何発かいい攻撃は当てられているが、高性能な相手の防具の上からなので、致命傷を与えられていない。
「チッ。そろそろダメージが溜まってきたな」
「おい。ポーションの在庫は大丈夫なのか?」
「は。誰に言ってんだよ。お前と違って今まで無駄遣いしてないからな」
「なっ!! 俺だってまだまだポーションの在庫はあるよ!」
しかも、サトルとキョウスケは定期的にポーションを飲み傷を回復してしまう。
普段からDランクダンジョンに潜っているのであれば、かなりの量のポーションを持っていると考えられる。
このままでは埒があかない。
そのうち、サグルが助けに来てくれると思うが、さっき倒すと言った手前、何も出来ずにサグルを待つのは恥ずかしい。
「おい! キョウスケ!」
「なんだ! まだ文句あるのか!」
「文句じゃねぇよ! 俺が合わせるから、次は同時に後ろの女を攻撃するぞ!」
「「(来た!)」」
同時攻撃は予想できていたことだ。
二人で同時に攻撃をしてくれば、朱莉一人では対処できない。
かといって、美香がいる以上、簡単に逃げることもできない。
キョウスケの大魔法相手では京子の聖域もいつまで持つかわからないので、かなりピンチだ。
「我は魔の使徒なり」
「『踏込』!」
「させない! 『走撃』!」
朱莉はまずはサトルを止めるためにサトルの方へと走る。
そんな朱莉の様子を見てサトルはニヤリと笑う。
「業火の槍よ」
「そうくると思ってたよ! 『鉄拳』!」
「!!」
「あかりちゃん!」
朱莉のナイフとサトルの拳がぶつかり、朱莉の短刀はあっさりと砕け散る。
元々サトルの狙いは京子ではなく朱莉だった。
二人同時に京子を攻撃すれば、朱莉はまず先にサトルを潰してからキョウスケの対処をすると思っていた。
そのために、サトルは朱莉とキョウスケの間に立つよう立ち位置を調整していたのだから。
「我が敵を穿ち、討滅せよ!」
「!!」
「逃がすかよ!」
朱莉はサトルに背を向け、キョウスケの方へと走る。
攻撃力の高いキョウスケの魔法さえ対処してしまえば、京子の聖域が破られることはない。
少々朱莉がダメージを受けてもあとで立て直すことは可能だと思ったのだろう。
だが、そんなことはサトルも想定の範囲内だ。
サトルは朱莉にトドメを刺すため、朱莉の後を追う。
それに、今からではキョウスケの魔法を止めることはもう不可能だ。
「『炎槍』!」
「これを待ってた」
「何!?」
キョウスケから魔法が放たれた瞬間、朱莉はくるりと振り返る。
そして、驚くサトルの襟元をキュッと掴む。
「『巴投げ』!」
「「なっ!!」」
そして、柔道の巴投げの要領でサトルを投げ飛ばす。
サトルの飛んでいった先にはキョウスケの放った炎槍が迫っていた。
朱莉はサグルの補助として投擲をメインに戦っていた。
すると、なぜか投げ技がスキルとして発現していった。
投擲と投げ技は全然別ジャンルな気がするが、使えるなら使う。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
「悟ぅぅぅぅぅぅぅ!」
こうして、丸焦げのサトルが出来上がった。
同時に雷が落ちたような大きな音が倉庫内に響いた。
音の方を見てみると、竜也とミツルが倒れていた。
それを見て、キョウスケはヘナヘナとその場に崩れ落ちる。
どうやら、戦闘は終了したらしい。




