第38話 これが探索者同士の戦闘か③
「くそ! ちょこまかと!」
「それはこっちのセリフだよ!」
俺と竜也との戦闘は膠着状態になっていた。
ミツルの攻撃圏外からヒットアンドアウェイを繰り返す俺と、ミツルという盾を使いながら、奇襲をしてこようとする竜也。
俺がミツルの方を攻撃しようとすると、竜也が妨害をしてきて、竜也の方を攻撃しようとすると、ミツルが妨害してくる。
与えたダメージはこっちが優っているが、いつひっくり返されてもおかしくないくらいにしか差はない。
竜也たちはさっきからポーションを使って何度も回復してるしな。
ボスキャラが回復をするのは反則だぞ。
竜也たちの防具もかなりいい物なので、防具越しに攻撃するとほとんどダメージが通らないというのもある。
こっちは防御が紙だからダメージは結構くらってしまいそうなのに。
「竜也ー。早くあいつの武器をー壊しちゃってよー」
「わかってるよ!」
それに、俺の武器が貧弱だということもすでにバレてしまっている。
おかげで、ミツルは防具を使って防御をするようになったので、攻撃を与えにくくなった。
防具に攻撃を当てると、そのせいでこっちの武器が壊れちゃいそうだからな。
竜也の攻撃も明らかに俺の武器を狙っているので、結構めんどくさい。
俺に防御をさせる攻撃とか、避けたのに武器を狙って軌道を変えてきたりとか、武器まで気をつけて避けないといけないからな。
まあ、武器はまだ何本かあるから、そこまでピンチではないけど。
武器がなくなると、武器なしのNINJAスタイルで戦わないといけなくなる。
そうなるとダメージを与えるために、MPを大量に使う忍術を多用することになり、MPがかなり減ってしまうだろう。
忍術を使えば竜也たちには簡単に勝てるかもしれないが、MPを消費しすぎるのは良くない。
……あれ? 本当に良くないか?
(あれ? 別にMPを消費しちゃってもいいんじゃないか?)
普段のダンジョン探索であれば、戦闘が連続するので、一度の戦闘でMPを使いすぎると、次の戦闘が苦しくなってしまう。
だが、今回はMPを大量に使っても、別に次の戦闘があるわけじゃない。
竜也のパーティメンバーの対処もしないといけないし、竜也たちに隠し球とかがあるかもしれないから、完全に使い切ったらまずいかもしれないが、半分くらいは使っても問題ないような気がする。
いや、竜也とミツルってやつが主力っぽいし、四分の三くらいまでは使って大丈夫か?
(それならやりたいことはたくさんあるんだよな)
NINJAのランクは結構上がったが、初期に覚えた忍術がコスパが一番いいため、途中から覚えた忍術は全く使っていなかった。
せっかくだし、この機会に使ってみてもいいだろう。
竜也たちはDランクダンジョンでは出会えないほどの相手なので、ここを逃せば当分使う機会がやってこない。
そうと決まれば即実行だ。
俺は両手をつき、上体を地面スレスレまで落とす。
クラウチングスタートの姿勢だ。
この姿勢が一番初速が出やすい。
クラウチングスタートはスターティングブロックがないと、滑りやすくて、むしろ不利になるって言う話もあるが、忍者の『壁走』のスキルで足が地面に接着してるから、滑る心配はない。
「おやおやー? スタイルチェンジかいー?」
「あぁ。そろそろ決着をつけようと思ってな」
「はっ! ここに来てハッタリかよ」
竜也もミツルも口では軽口を叩いているが、警戒は全く解いていない。
むしろ、警戒レベルは一つ上がったように見える。
まあ、警戒したからって対処できるかどうかはわからないけどな。
「行くぞ!」
「!!」
「! 速い!」
俺はスタートダッシュを決め、一瞬後にはミツルの懐に滑り込んでいた。
「うらぁ!」
「ぐふっ!」
俺は全力で両手に持った小太刀をミツルに叩き込み、そのままの勢いでミツルを竜也がいるあたりまで押し込む。
だが、そこで攻撃に耐えられず、両手に持った小太刀はガラスが割れるような音を残して砕け散り、空気に溶けるように消えていく。
「この!」
ミツルは横薙ぎを繰り出してきたので、俺はそれを避けるようにしてその場にしゃがむ。
「どうやら、ただの捨て身タックルだっったみたいだな」
「ピンチになったみたいだけどー。この後どうするつもりなのかなー?」
竜也とミツルは俺を挟むようにたち、それぞれ、短刀と剣を振り下ろしてくる。
まさに、袋の鼠だ。
この攻撃を受ければかなり痛いだろう。
だが、この状況は俺が望んで招いたものだ。
俺は右手を地面につく。
「『風遁・雷神掌雷』!」
「「!!」」
次の瞬間、雷が倉庫の屋根を突き破り、竜也とミツルの二人を貫いた。




