第37話 これが探索者同士の戦闘か②
「竜也さん! くそ、『踏…』!!」
「『影斬』」
サグル対竜也とミツルの戦闘が始まった頃、京子と朱莉対サトルとキョウヘイの戦闘も始まった。
「!! くっ」
サトルの陰から姿を現した朱莉はサトルに攻撃を当てる。
サトルは両手をクロスして朱莉の攻撃を防ごうとする。
「『高強化』『高加速』」
「な! ぐぅ」
京子の強化魔法を受けた朱莉の攻撃は防御しても結構なダメージを与えられたようだ。
サトルは苦しそうに声を漏らす。
「そんなに前に出て良いのか? 後ろがガラ空きだぞ? 炎よ。かの者を撃て『火球』」
キョウヘイは後ろで待機している京子とまだ目を覚さない美香の方に向かって火球を飛ばす。
「『聖域』」
「何!?」
だが、火球は京子の聖域に阻まれてしまう。
京子のMPは少し減ったが、Dランクダンジョンでランクを上げた京子にとって、この程度の消費であれば問題にはならない。
「く。ならば。我は魔の使徒なり。ご……」
「やらせる訳ないでしょ! 『影斬』」
「ぎゃ」
朱莉の攻撃によって、キョウヘイの魔法は解除される。
魔法使いは強力な魔法を使う時ほど長い詠唱が必要となる。
その分妨害も容易になるということだ。
キョウヘイの魔法を妨害した朱莉は一度京子たちのところまで戻ってくる。
そして、安らかに眠る美香の顔を見てほっと胸を撫で下ろす。
美香はまだ当分起きなさそうだ。
前回の戦闘で心を壊してしまった美香に、今回の戦闘は見せたくない。
早く終わらせて、美香を安全な場所に連れていかないといけないと朱莉は決意を新たにする。
「キョウちゃん。結構MP使ってるみたいだけど大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。あかりちゃん。さっさとこの二人を倒してサグルさんの支援に行かないといけないからね」
京子は朱莉にも支援魔法を送っており、この戦闘で使い切るくらいの勢いでMPを大盤振る舞いしていた。
だが、京子も朱莉もそれが問題だとは思っていなかった。
ダンジョン内と違い、この戦闘が終われば次が出てくることはないのだから。
だが、二人もそこまで余裕があるわけではない。
朱莉にとっては二人とも格上の存在だ。
京子の支援が途切れればすぐに劣勢に立たされてしまう。
京子もそのことがわかっているので、サグルの方には支援魔法を送る余裕がなく、朱莉の支援に徹していた。
「くそ! 悟! 何やってる!」
「お前こそ、さっさとそのうるさい蝿を叩き落とせ!」
キョウヘイはサトルにタンク役をやってもらいたいと思っており、サトルは後方からキョウヘイに支援を送ってほしいと思っていた。
結果、それぞれがバラバラに動き、キョウヘイとサトルのコンビネーションは全く取れていなかった。
普段は剣士であるミツルがタンクとしてキョウヘイの防御に回っており、僧侶のサチコがサトルの支援を行なっていた。
サトルは前に出て攻撃をする役、キョウヘイは後方から攻撃する役だったので、二人の相性はあまり良くなかった。
というより、竜也のパーティでは戦士のミツルと僧侶のサチコが他のメンバーのフォローを行なっており、竜也とミツルとキョウヘイの三人はあまりコンビネーションが取れていなかった。
今はサチコはやられてしまい、ミツルは竜也の方にかかりっきりだ。
そのため、残った二人はバラバラに動いていた。
ミツルもそのことには気づいているが、サグルが思った以上にやる相手だったので、サトルたちの方まで気が回っていなかった。
むしろ、自分たちがサグルの相手をしている間、京子たちの相手をしていてくれればサトルたちが死んでも別に構わないとすら思っていた。
ミツルにとって仲間は竜也で、サトルたちは替えの利く道具のようなものなのだから。
「(早めにけりをつけないといけなさそうね)」
「(そうですね。二人が連携をとってくる前に最低でも一人はなんとかしておかないといけませんね)」
京子と朱莉にとっては、二人の動きがバラバラなのは生命線の一つだった。
サトルとキョウヘイは竜也と一緒に長い間Dランクダンジョンに潜っており、レベル的には二人よりも上なのだ。
連携が取れていない今だからこそなんとか対処できているが、連携が取れてくると対処できなくなる可能性が高い。
いくら今はバラバラでも、この二人は長い間仲間をしてきているのだ。
戦闘が長引けば連携は自然と取れてくるだろう。
「(先に落とすべきはやっぱり拳士の方だよね)」
「(そうだね。あっちの方が攻撃が当てやすそうだ)」
前に出てきている拳士のサトルと違い、魔法使いのキョウヘイは後方から動かない。
どちらの方が狙いやすいかは目に見えている。
「(よし、じゃあ、行ってくる)」
「(行ってらっしゃい。『祝福』)」
朱莉は京子のバフを受けて、一目散にサトルの方へとかけだした。




