第36話 これが探索者同士の戦闘か①
「話し合いは終わりか?」
「あぁ。待ってくれてありがとう」
俺が前に出ると、対峙するように竜也が出てくる。
その隣にはミツルと呼ばれていた男が並んだ。
「そっちがージョブを二つ使うんだからーこっちもー二人がかりでいいよねー?」
「あぁ。元からそのつもりだ、よ!」
俺は『一閃』を発動し、一歩で竜也のすぐそばまで踏み込んで小太刀を振るう。
「ちぃ」
竜也は大きくバックステップして俺の攻撃を避ける。
よし!
宙に浮いている状態なら回避もできないはず。
俺は追撃を加えるため、一歩踏み出そうとする。
「おいおいー! 俺のことをー無視するなよー!」
「……やべ!」
俺は背中から切り掛かってきた戦士の攻撃を回避した。
本当は小太刀で受けてそのまま反撃に移りたかったが、彼らの武器はおそらくDランクダンジョン産のものだ。
今小太刀で受ければ、こちらの小太刀が壊れてしまう可能性が高い。
何より不味いのは、そのことが相手にバレてしまうことだ。
それがバレれば向こうば武器破壊を狙ってくるのは目に見えている。
「っらぁ! 『走撃』」
「!! 『水遁・流水』」
バックステップした先に竜也がスキルを使って襲いかかってくる。
足が宙に浮いており、絶対に回避できないタイミングだ。
俺は忍術を使って竜也の攻撃を回避する。
そして、そのままスキルの力を使って反撃をする。
「!! 『背跳』
完全に捉えたと思ったのだが、今度は竜也がスキルを使って回避した。
追撃をすればミツルとかいう奴の攻撃を受けそうだ。
俺はミツルの剣の間合いの外まで離れて構え直す。
「ち。厄介なスキルを持ってやがる。ファーストジョブも普通のジョブじゃねぇのか」
「……」
厄介だと思っているのはこっちも一緒だ。
竜也たちは思ったより厄介だった。
コンビネーションが俺たちより断然いいのだ。
おそらく、ダンジョン内で何度も戦闘をしているからだろう。
俺たちの場合、Eランクダンジョンでは俺一人で戦闘が完結し、Dランクダンジョンではまともな戦闘ができていない。
だから、ほとんどコンビネーションと言えるようなものは磨けていない。
本当に相手パーティを分断できてよかった。
最初にヒーラーを落とせた俺、ファインプレーだ。
唯一の救いは忍者のジョブとNINJAのジョブの相乗効果のおかげで竜也たちよりもステータス的にはこちらの方が上まわっていそうってことくらいか。
おかげでなんとか対処ができている。
「でもー。スキルはー無限には使えないよねー?」
相手はあまりスキルを使わずに対処している。
竜也はともかく、ミツルの方はまだスキルを使っていない。
スキルはMPやSPを消費するから、長期戦になればこっちの方が不利になる。
それに、朱莉と京子のことも気になる。
こっちがギリギリなんだから、向こうが余裕あるとは思えない。
さっきチラッと見た感じでは、そこまで苦戦している様子ではなかったが、できるだけ早く終わらせて向こうに参戦しないと。
「よそ見してんじゃねぇよ! ミツル。合わせろ。『疾走』」
「おっけぇー! 『上段斬り』』
「!!」
俺が京子たちの方にチラリと目をやると、それが気に食わなかったのか、竜也とミツルが一斉に襲いかかってくる。
ミツルは前からまっすぐに、竜也の方は後ろから回り込んできている。
「『眼術・見切り』」
俺は眼術を発動すると、右目に炎が宿り、視界が上下左右、三六〇度に広がる。
一番近いのは三百六十度カメラか。
あんなふうに画像が歪んでいるような違和感はないが、全方位完璧に見えるという点では一緒だ。
これ、本当にどうなってんだ?
我がことながら、マジで訳がわからん。
「『忍法・木葉舞』」
俺は竜也とミツルの攻撃を紙一重で避けていく。
「何!」
「避けた!」
「それだけじゃないぞ」
回避をしながら、反撃も加えていく。
防具にあたれば武器が壊れてしまうかもしれないので、防具のない場所を的確にだ。
首などの急所は狙えないし、そこまで深く傷はつけられないが、竜也とミツルは確実に傷を増やしていく。
「ちぃ」
「これはー困ったねー」
竜也とミツルは俺の反撃を嫌って距離を取る。
俺の与えたダメージは見た目は大した傷ではない。
だが、間違いなくHPは削れていた。
そして、HPがゼロになればこんな小さな傷では済まない。
HPのバリアは無くなるし、武器や防具もその効力を失ってしまう。
竜也たちもそのことには気づいているんだろう。
さっきから、俺のHPを削るような攻撃ばかりしてくるし。
(これが探索者同士の戦闘か)
普通の喧嘩とは全然雰囲気が違う。
気をぬけば大怪我を負いそうだ。
俺はまずは目の前の相手を倒すことに専念した。
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