第31話【急募】優秀な生産職②
「そういえば、サグルさん。武器の在庫はまだ大丈夫ですか?」
「あと十本あるが、そろそろヤバそうだ。素材ももう残ってないし」
ダンジョンGo!のアプリを確認してみると、小太刀の在庫は残り十本になっていた。
両手に一本ずつ持っているので、合計であと十二本だ。
もしもの時のことを考えると、これ以上在庫を減らすのは危ないだろう。
「サグルっちも? 私も残り一本だよ」
「朱莉もか」
「私も、ドロップアイテムはさっきあかりちゃんに渡したので最後です」
Dランクダンジョンに入ってしばらくしてから朱莉も戦闘に参加している。
朱莉が初撃を加えて、注意を引いてるうちに俺がとどめを刺すって感じだ。
朱莉の中の男の子の部分が戦闘に参加したいと疼いたらしい。
気持ちはよくわかる。
他の人がやるゲームを横から覗いているより、自分もゲームに参加したほうが絶対楽しいからな。
YouTVでゲーム実況を見ているとそのゲームを買いたくなるみたいな感じだ。
色々と工夫してくれて、今では朱莉が確実に注意を引いてくれるようになった。
そのおかげで比較的SPの消費が少ない『暗殺』の方でモンスターを倒せるから、戦闘は結構楽になった。
『一閃』や通常攻撃よりも武器への負担が少ないらしく、武器が壊れる頻度も下がったし。
だが、そのせいで、朱莉の方の武器も定期的に壊れるようになってしまった。
俺の武器の使い方が悪いわけではなかったということがわかったのは嬉しいが、武器のスペックがダンジョンのスペックに追いついていないということだ。
何の解決にもなっていない。
ペースはだいぶ下がったが、十回の戦闘で俺か朱莉の武器が一本壊れる。
火遁みたいな魔法系の技で倒せば武器は壊れることはないのだが、そうすると今度はMPが持たない。
だいぶMP消費が抑えられるようになったと言っても、MP消費を0にはできないからな。
MPポーションは持っていないので、魔法系の技だけで戦っていくのは無理だ。
MPポーションはDランクのレアドロップらしいので、手に入れたとしてももしもの時のために死蔵することになると思うが。
結局、下級ポーションも京子に使って以来一度も使ってないし。
俺も京子も朱莉もエリクサーはゲームクリアまで取っておいてしまうタイプなのだ。
下級ポーションよりも京子の『回復』の方が回復量が多くなって下級ポーションはいらない子になってしまったっていうのもあるかもしれないが。
「じゃあ、明日はEランクダンジョンの方に潜らないとダメそうだな」
「はぁ。めんどくさい」
武器は骨系のドロップアイテムなら一つ、牙系のドロップアイテムなら五つ使わないと作ることができない。
手のひらサイズの牙五本でどうやって50センチくらいありそうな小太刀を作るのかわからないが、今それはどうでもいい。
そんなことを言って仕舞えば、醜兎の頭はスイカサイズなのに、どうして牙は手のひらサイズなのかとかもツッコまないといけなくなる。
牙は一番出やすいドロップアイテムだが、ドロップ率は5%くらいだ。
つまり、一本の武器を作るのに百匹のEランクモンスターを狩らないといけないということだ。
今まで、ドロップアイテムは売らずにとっておいた。
お金にも困ってなかったし、ダンジョンGo!から出さなければ、邪魔にもならない。
その在庫がなくなったということは、一ヶ月分のドロップアイテムを一度の探索で消費し切ってしまったということになる。
今は斥候の朱莉もいるし、ドロップアイテム目当てで片っ端から狩りまくれば一日でもかなりの数集められるとは思うが、せっかくDランクダンジョンに潜れるようになったのにまたEランクダンジョンに潜らないといけなくなるのはかなり辛い。
「やっぱり、生産職さんを探さないとダメですね」
「そうだね。それが正攻法なんだし、それしかないんじゃない?」
もう一つ、俺がセカンドジョブに生産系のジョブをセットするという手もある。
だが、できればNINJAのジョブのレベルも上げたい。
ファーストジョブの忍者の方を外すと一気に強さが落ちてモンスターを倒せなくなるかもしれないので、そっちは却下だ。
提案するだけ提案してみるか?
このタイミングを逃すとセカンドジョブのことを話すタイミングがまた遠くなりそうだし。
二人のことは信頼している。
京子一人だった時はちょっと京子の反応が怖くて切り出せなかったが、朱莉が何とかしてくれるだろう。
「……二人とも、実はさ」
俺は二人にユニーク称号のことを話した。




