第26話 王道が一番危険と相場が決まっている。①
「そろそろ出発するか?」
「よし! 行こう行こう!」
俺が立ち上がると、朱莉も待ってましたといった感じに立ち上がる。
実際、早くダンジョンを進みたいのだと思う。
だが、その顔にはさっきのような悲壮感はない。
代わりに期待に満ちていた。
ゆっくり休憩したおかげで焦りよりも楽しみが勝ったみたいだ。
(確かに、朱莉にとってDランクダンジョンは楽しいかもしれないな)
Eランクダンジョンではバフや回復をこなす京子と戦闘をこなす俺だけいれば十分だったので、朱莉はオマケ扱いだった。
確かに朱莉がいるとスマホを取り出さなくてもモンスターの位置がわかるため、道案内にはかなり役立っていた。
朱莉が案内してくれたおかげで戦闘回数は増えており、道に迷うことも無くなった。
おかげで一日の稼ぎは三人になったのに増えていたし。
だが、朱莉はいなくてもよかったというのも事実だ。
朱莉がパーティに参加するまで俺と京子の二人だけでEランクダンジョンを攻略していたのだから、当然のことだ。
だが、Dランクダンジョンでは朱莉は必要不可欠だ。
トラップを解除できないとまともに戦闘することもできないのだから。
自分が役に立っていると実感して朱莉はかなり嬉しいみたいだ。
やはり、誰かの役に立つというのは気持ちのいいものだ。
一番辛い拷問はひたすら穴を掘って埋めるを繰り返すものだというしな。
なんの成果も生み出さない作業を繰り返させられるのは拷問になるくらい辛いらしい。
(それに、稼ぎも相当あるしな)
まだ、一度目のダンジョン探索で、ボスも倒していないにもかかわらず、すでに昨日一日の稼ぎを超えていた。
夕方まで潜り続ければどれだけの額になるのかわからない。
竜也たちをなんとかすれば借金も無くなるだろうし、もしかしたら今住んでいるところよりいいところに引っ越すことができるかもしれない。
オートロック付きのセキュリティのしっかりしたマンションに引っ越せば借金取りたちがくるのを完全に防げはしないかもしれないが、かなり抑止できるだろう。
ダンジョンGo!の保護は時間が決まってるので、住民の後について入るのも簡単じゃないだろうし。
それに、高層階に住めば少なくとも窓から誰かが侵入してくるなんてことはなくなるはずだ。
いや、どこでこんな大金を稼いできたのか美香さんに問いただされるか?
日給数十万何て普通には稼げないからな。
それこそ、水商売の仕事でもないと。
「あ」
「ん? どうかしたか?」
十字路に差し掛かったところで、朱莉が声を上げる。
俺は少し考え事をしていたため、急いで戦闘態勢に入るが、周りにモンスターはいない。
トラップというわけでもなさそうだ。
朱莉はダンジョンGo!のアプリを見てるし。
「ここで左の道に行くと二階層に向かう階段があるみたい」
「……本当だな」
俺もアプリで確認してみると、今目の前にある十字路で左の道を進めばすぐに下の階層に向かう階段がある。
ちなみに、最近のダンジョン駆逐作戦のおかげで、朱莉も『十全十美』の称号は取得できており、アプリで地図を確認できるようになっていた。
『無慈悲』の方の称号は得ていないので、敵の位置はわからないはずだが、盗賊の探索能力のある朱莉には不要だろう。
「どうしよっか?」
「……そうだな」
突入前、今日は一階層だけを探索しようと話していた。
朱莉がトラップに対処できるかわからなかったからだ。
朱莉も今日の方針はちゃんと理解していたから、階段のところに案内してしまったのは偶然だろう。
いや、最近は出来るだけ早く下の階層に行こうという方針だったから、癖で案内してしまったのかもしれない。
だが、ここまでトラップを解除してきてみて、一階層は結構余裕だということがわかった。
朱莉のランクも突入時より上がっているので、このまま下の階層に行っても大丈夫なんじゃないかとは思う。
下の階層に行けば、モンスターも強くなり、獲得する経験値も増える。
その分、早くレベルアップできるということだ。
トラップもレベルが上がって対処できなくなるという可能性もあるが、すでにランクがⅣの朱莉なら対処可能なんじゃないだろうか?
個人的には下の階層に行った方がいいんじゃないかと思う。
「俺は行ってもいいと思うが、どう思う?」
「サグルさんが決めてください」
「サグルっちが私たちのリーダーなんだからさ!」
問いかけるように京子と朱莉の方を見ると、そんなふうに返されてしまった。
いつの間に俺がリーダーになったのだろう?
いや、パーティを組む時、パーティリーダーは俺に設定したっけ?
まあ、いいか。
二人にも反対されなかったと言うことは二人とも無理だとは思っていないのだろう。
雰囲気的にも余裕だから先に進もうぜっていってるように思うし。
「よし、じゃあ進もう!」
「はい」「そう来なくっちゃ!」
俺たちは十字路を左に曲がり階段に向かって進み出した。
「あ、ちょっと待って、トラップだ」
すぐにトラップが見つかって立ち止まることになったが。
なんかしまらないなー。




